触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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「子どもの貧困」シリーズーその3

<BOOKS> (23) 「子どもの貧困」シリーズーその3
「週刊ダイヤモンド 特集 あなたの知らない貧困」を読んで                
2009.3.27
ダイヤモンド社 2009.3.21発行

内容紹介(表紙・目次)

年収200万円以下の人口1032万人生活苦で自殺1990年1272人→2007年7318人ホームレス1万6018人相対的貧困率先進国ワースト4位昨年10月~今年3月に失業する非正規労働者15万7806人最低賃金水準先進国ワースト4位子ども7人に1人が貧困完全失業者5人に4人は失業給付をもらえないひとり親家庭の貧困率先進国ワースト2位生活保護を受けられない困窮者最低600万人(表紙より)
目に見えない貧困が日本を蝕んでいる。生活保護受給者が急増し、派遣切り・雇い止めに遭った非正規労働者が路頭に迷い、子どもの7人に1人が貧困状態にある。今そこにある貧困を直視し、対策を講じなければ、数年後、数十年後には社会が壊れる。(目次の全体の紹介より)

<目次>

Part 1 生活保護破産日本に取り憑いた「貧困」
Column 保護率を急低下させた北九州市の成功と失敗
Manual 本当に困った人のための生活保護受給マニュアル
「貧困」を読み解く!
Part 2 非正規の壁「1800万人の貧困」の実像
Interview 東京大学社会学研究所教授●玄田有史
Part 3 子どもの貧困7人に1人が苦しむ「日本病」
Column 国民健康保険料の不払いで自らの首を締めた八街市民
Column 政府と国民の無知が生んだ「官製貧困」の知られざる罪
Part 4 貧困ビジネス
社会的弱者の敵か、味方か
Column 貧困ビジネスが生む「ネットカフェ住民」
Diagram 貧困が貧困を生む負の連鎖
Part 5 反貧困の処方箋中間層の無関心が社会を壊す
Interview NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長●湯浅 誠
Interview 三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長●中谷 巌
Interview 経済評論家・上武大学大学院教授●池田信夫
Interview 起訴休職外務事務官・作家●佐藤 優
Interview 津田塾大学国際関係学科准教授●萱野稔人

内容から

Part 1 生活保護破産 より

 表紙にも大きく強調している「生活保護を受けられない困窮者最低600万人」というのは、生活保護がもらえるはずなのにもれえない「漏給者」のこと。生活保護は「申請主義」のため、多くの研究者の試算による「補足率」は10~20%しかないという。678万人から1557万人までのばらつきがあり、600万人というのはあくまで控えめな数字にすぎない。現代に受給者が161万人だから生活保護費は年間2億8000万円(08年度予算)が13兆円以上に跳ね上がる。しかも、現在進行中の世界同時不況と若年層に貧困加速と相まって30年後には約20兆円に膨らむという試算もあるという。

Part 2 非正規の壁 より

1999年以降の労働者派遣法の改正によって、非正規労働者は急増。かつてのブルーカラーだけだった日雇い・派遣労働が、ホワイトカラーまで非正規化し、1800万人に。全労働者の3人に1人に。若年層が急激に増え、15~24歳の非正規労働者の比率は50%近い。低賃金に加え、収入や生活が安定せず、常に将来に対する不安が…最も深刻な悩みは衣食住の「住」。今、未曾有の不況を受け、企業の雇用調整がすさまじい勢いで進んでいる。この半年で15万7806人の非正規労働者が職を失うという。職を失えば路頭に迷う非正規労働者が急増するのは確実。

 玄田有史へのインタビュー「高卒若者に深刻な労働事情―貧困の本質は「孤独」にある」より ―かつて企業と結びついて就職の斡旋をし、その後の駆け込み寺的存在だった学校が機能しなくなっている。今の時代を生き残る「知恵」を与える人がいなくなったことが、若者の貧困に拍車をかけている。まずはできる限り簡単に会社を辞めないことだと若者に教える「知恵」を与えていくことが求められている。厚生労働省の「総合労働相談コーナー」の活用を。

Part 3 子どもの貧困 より

 OECD加盟国の相対的貧困(日本では、親2人・子ども1人世帯で年収手取り239万円、親1人・子ども1人世帯で195万円以下)にもとづく「子ども貧困リーグ」によると、日本の子どもの貧困率は14.3%(2000年)。この収入以上でも、所得には閾値(それを下回ると子どもに必需品を与えられない)があり、日本の場合、400万~500万円以下で、この水準でも「貧困リスク」はある。子どもの貧困を看過してはならないのは、①子どもの貧困は、子どもの責任でないから。②子どもの貧困が、教育格差を通じて再生産されるため。貧困が固定化され、連鎖していく。子どもの貧困は、物質的なものだけでなく、社会的孤立感、精神的に追い詰められ、希望をなくしてしまう。子どもの貧困は、今そこにある危機であると同時に、社会から活力をなくし、将来にわたって大きな禍根を残しかねない問題。

 ひとり親世帯の貧困率は、先進国の中でワースト二位。深刻化した大きな要素は母子家庭の増加10年間で1.5倍に。(17人に1人)親2人・子ども1人世帯の貧困率は11%、母子世帯では66%にもなる。

 ところが、OECD主要各国における所得再分配の前後による子どもの貧困率比較で、唯一、日本だけが政策によって悪化している。(貧困層を救うべき政府が、逆に問題を深刻化させている。)

 「官製貧困」を生み出した責任の一端は国民にもある。―今、貧困対策をマニフェストとして盛り込んでいるのは、共産党と社民党ぐらい。自民党、民主党の低所得者政策は腰が引けている。各政党が政権公約として貧困対策を掲げ、目標値を明確化し政策を競い合う、そして、国民がその中身で評価するような社会に変わらない限り、貧困はなくならない。

Part 5 反貧困の処方箋 より

 労働市場の改善。―最低賃金の見直し(生活保護受給者よりマシに)、労働派遣法の改正(労働条件の見直し、派遣業者の参入資格厳格化・責任強化)、雇用規制(緩和による労働力の流動化)、雇用のミスマッチの解消。

 社会保障の充実(セーフティネットの構築)。―生活保護(年金、生活保護の役割分担の明確化をし、ワーキングプアの自立を助ける)雇用保険(加入の制限緩和、罰則強化等による未加入問題の解消)税制(消費税引き上げ+課税最低所得の引き上げ、「ベーシック・インカム」の概念導入)住宅補助(公的住宅のストックを増やし、申請制限を緩和する)

 貧困対策は、国係の総力戦。行政として打てる手段は総動員を。同時にNPOを中心とする民間との役割分担を。すべり台から落ちるのを食い止めるのが行政の役割、貧困層の社会復帰等、サポートを担うのは民間が。

 問題は、貧困に陥っている人たちにあるのではなく、貧困を直視しない社会にある。

私の感想

 この特集は全部で約40ページ。それほど長くもなく、図、グラフを多用して非常に見やすいものになっています。私は、「反貧困の処方箋」等の部分的なところではこの編集部とは意見が異なりますが、現状認識や問題点については共通の認識であり、対策の多くにおいても同感するところが多くあります。何よりも最後の From Editors(編集後記)で述べていることには全面的に賛同します。―「貧困は、…なぜあるのか。根底にあるには社会の無関心…世論の高まりが政策をつくり、社会を変えていきます。」「なんの罪のない子どもを無保険の状態においてしまう国家とは、いったいどういう国…加えて、低所得の非正規雇用者をどんどん生産し、彼らをないがしろにするような政策を続けていくとしたら、日本の将来に大きな禍根を残す…この国が世界に誇ってきた国民皆保険や皆年金制度は事実上崩壊してしまった。…日本はそういう国でいいのか。崩壊した制度を立て直すには、従来と同じ議論をしていてもできません。」―

 3月25日、共同通信の「日本、無保険失業者の比率77%先進国で最悪、ILO報告書」というニュースが入ってきました。内容は、-日本で失業保険の給付を受けていない失業者の割合は77%に上り、先進国の中で最悪の水準にあることが、国際労働機関(ILO)が24日発表した報告書で分かった。派遣労働の規制緩和などを急速に進める一方、非正規雇用者のセーフティーネット整備がおろそかなため、日本の労働者が国際的にも極めて厳しい状況に置かれている事情が浮き彫りになった。 報告書は新興市場国を含む主要8カ国を取り上げた。このうち最も「無保険失業者」の比率が高いのはブラジルで93%、次いで中国が84%で日本は両国に続く高さ。4位の米国は57%にとどまり、ドイツやフランスは10%台。主な先進国で日本の突出ぶりは明らかだ。 ILOは先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)諸国のうち「半数の国で50%以上に上る」とも指摘。ILO幹部は日本の突出ぶりについて「失業保険の受給まで待たされる期間が長く、受給できる期間が短いことが影響している可能性がある」との見方を示した。-

 本日09年度の予算案が成立したことによって、今後、この状態は少しは改善されるでしょうが抜本的な対策には程遠い内容のものです。今、この国の政策を大きく転換しなければならない時を迎えています。

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子どもの貧困シリーズーその2

<BOOKS> (22)
子どもの貧困シリーズーその2

「子どもの貧困 子ども時代のしあわせ平等のためにを読んで    
2009.3.22
出版社: 明石書店 (2008/04)

著者について

浅井 春夫
1951年生まれ。東京の児童養護施設で児童指導員として12年間勤務。現在、立教大学コミュニティ福祉学部教員。“人間と性”教育研究協議会代表幹事、全国保育団体連絡会副会長。専門分野は、児童福祉論、社会福祉政策論、セクソロジー
松本 伊智朗
1959年生まれ。札幌学院大学人文学部教授。専門・研究分野は児童福祉論。子どもの貧困と社会的排除に関する研究、要養護児童の社会的自立に関する研究、子ども虐待問題の日英比較研究
湯澤 直美
1961年生まれ。児童養護施設・母子生活支援施設で10年間勤務。現在、立教大学コミュニティ福祉学部准教授。家族とジェンダーが交錯する領域について社会福祉実践・制度・政策からアプローチしている

本の内容(目次とあとがきより)

序 章  子どもの貧困研究の視角 (貧困の再発見と子ども)

第1章貧困に向き合う・子どもに寄り添う―福祉の現場から(保育の場からみる子どもの貧困―子どもと家族をまるごと支える
児童相談所からみる子どもの虐待と貧困―虐待のハイリスク要因としての貧困 ほか)

第2章 子どもの貧困と家族 (家族の教育費負担と子どもの貧困―機会の不平等をもたらす教育費システム 現代家族と子どもの貧困―「孤立のなかにある家族」から「つながり合う家族」へ)

第3章 外国の貧困研究に学ぶ (先進国における子どもの貧困研究―国際比較研究と貧困の世代的再生産をとらえる試み インドの児童労働問題と子どもの貧困―「危険な労働からの保護」「義務教育の普及」という論理を超えて)

第4章 子どもの貧困克服のための政策試論(人生はじめの社会保障としての子どもの貧困克服―「積極的格差」の原則により                               「しあわせ平等」を支える)

湯澤直美・あとがきよりー本書は、「子どもの貧困」全般を扱ったというよりは、そのなかでも一層困難な位置にある子どもの問題を取り上げている。それは、児童福祉の原点を再確認する必要にこの時代が迫られているからである。親のモラルの問題にすることによって貧困問題を曖昧化させるつつある昨今の風潮のなかで、本書の編集は「子どもの貧困」の問題は「いのち」の問題であることを再確認する作業でもあったと受けとめている。

いくつかの内容の紹介

序章 子どもの貧困研究の視角 (松本 伊智朗)

②、貧困を量的に把握する(2003年)ー①全世帯の貧困率は17.4% ②未婚の子を含む世帯の貧困率は15.0% ③未婚の子を含むひとり親世帯(主に母子世帯のこと)の貧困率は38.3%(夫婦世帯は11.1%) ④いずれの推計値も、80年代から90年代にかけて低下、90年代後半から上昇傾向にある。ここを「子どもの貧困を考える出発点にしよう。」と提起。その上で、
③、低所得と不利の関係を把握する。④、家族における不利の連鎖を把握する。⑤、個人・家族責任論を相対化する。―ことを行って実践的な問題として、「まず子どもから」を議論するうえでの合意とし出発すること。⑧子どもを主体として把握する そのことで、子どもの育ちと可能性をおとなの責任において何が必要かの検討に踏み込んでいくことを提起している。

第2章 子どもの貧困と家族

機会の不平等をもたらす教育費システム (鳥山 まどか)

 日本は家族に教育費を負担させる社会であり、社会として公的支出が少ない国。奨学金を利用している学生は25%、専門学校生は20%以下。それも日本の場合、公的補助も「教育費を負担するのは、家族・本人」を前提に成立。卒業後には返済が義務付けされている。大学等だけでなく、入学金や授業料の負担が高校から始まる。現代社会での最低必要学歴「高卒」を得るにも家族に負担が。

奨学金の他に、社会福祉制度による教育費支援として修学資金がある。それなりの役割を果たしてはいるものの、奨学金と同様に給付ではなくローンの形による公的な支援。卒業後の「返済」という負担を負う。この時代、貧困家庭ではこれらの利用に伴うリスクが増大してきている。結局、貧困にある子どもたちの教育とその後の人生の機会や選択の幅を著しく狭めている。

現代家族と子どもの貧困 (湯浅 直美)

 子どもの貧困の生成プロセスには強固な社会の仕組みが介在しており、社会的対応を要する。家族の諸機能は相互に連鎖・関連しそのなかに貧困は現象化する。しかも、貧困の世代的再生産(継承)という現実があり、家族の持つ資産格差が埋め込まれている社会においては「不利の連鎖」が組み込まれ、家族の階層序列を固定化していっている。

 子どもの貧困への社会的対応―日本におけるこのことは、これまで、家族をめぐる差別と排除の連続。これまで、母子世帯への児童扶養手当は、自立への努力義務―家族の差異化と序列化を促進する制度で、子どもへの福祉よりも家族制度に対する関心が優先され、政策対応の過程においては、家族という集団に個が埋没し、子どもの福祉は、「すべての子どもの福祉」としては発展してこなかった。父子世帯を含め日本のひとり親福祉は児童福祉とはいいきれない性質をもっている。社会を創るおとなが、固有の存在としての、一人ひとりの子どものどうつながろうとしているのかが問われている。このことによって、子どもの貧困の根絶を志向する社会を創るプロセスとなる。

第4章 子どもの貧困克服のための政策試論 (浅井 春夫)

 OECD関係閣僚会議報告(2005年)は「能動的な社会政策」と言う概念を提起し、その目的を ①子どもの貧困を克服し、子どもの人生はじめの最良のスタートを保障すること、②親が家族責任と仕事を両立することを社会的に支援し、③勤労者の社会的排除を防ぎ、労働の機会を保障することをあげている。日本の子どもの貧困に関する政策論議はまったく逆の方向に舵を切っている。夫婦と子ども一人の世帯で年収240万円=貧困ライン以下の現実を変える政策とは、どのような内容がもとめられているのか。以下は浅井氏のたたき台。

四つの基本的視点

 1 「子ども個人」を単位とした政策展開を。2 「積極格差」(現在の時点で平等の機会を保障するだけでなくそこに上乗せした支援を)の原則でえぐられた発達を補てん。3 施策年齢を25歳までに。4 包括的(児童福祉、保育、保険、生活保護、就学援助、飛行問題への対応、保護者への経済的支援など)かつ長期的展望に立った政策の必要。

所得再配分の政策

 教育扶助・就学援助の機能強化を。 勤労世帯への所得保障(①公的所得移転と税制優遇措置、②子育て世帯の賃金依存率91%の改善と社会手当等増額)を。 人生はじめの社会保障としての保育(保育料の無料化ないしは応能負担の原則に基づいた徴収を。すべての勤労世帯の「保育に欠ける」子どもの入所保障。保育所運営費の改善―一般会計予算の保育所関係予算0.4%を当面1%に。) 子ども版ベーシック・インカム(無条件で支給される普遍主義的な「社会手当」というべき施策)構想の検討を。

労働政策の具体化

 民主的な規制のもとでのワークフェア(福祉と労働を結び付ける)の展開を。 世界的にも最低水準の最低賃金制度の改革(最低でも1000円以上を基本に) 家族的責任を果たすための労働時間の短縮。

エンパワメントとしての教育改革

 学校での学びとケアの保障(学びの相談役が必要。学校給食の実施と無料化。)。 低学力の子どもたちの教育達成保障は自治体の任務。 高校進学を前提に、大学進学の保障。セカンドチャンスとしての再入学保障。

課題ごとの個別政策

 児童養護施設をめぐる政策と課題(教育権の保障を)―①卒園者に向けての奨学金制度を国の責任で(給付を基本に)②大学での勉学の継続のための支援費の拡充。③専門学校・高校受験及び専門学校・大学受験のための学習塾利用を保障する費用の検討。④退学等の進路変更に対して、セカンドチャンス、再チャレンジのしくみの整備。
 
生活保護家庭をめぐる政策と課題―①子どもの貧困に対する必要な扶助額と内容に関して、生活扶助、住宅扶助、教育扶助の中身の検討を。②教育扶助額の増額を。③生活保護世帯の「自立」に関して、「保護の要件」の見直しを。(「社会的スキル」を学ばせることも「子どもの貧困」克服政策にとって必要。)

 ひとり親家庭をめぐる政策と課題―児童手当制度の所得制限の撤廃及びその水準の引き上げ、受給資格の世帯中心主義から扶養の実態主義への転換、さらに児童扶養手当と児童手当の統合(現行水準を削減せずに)を。

子どもの貧困克服を本気ですすめるために

 今、子ども貧困克服を具体化するかどうかの分岐点は、まず、政策担当側にも運動をすすめる側にも本気ですすめる意思があるかどうかである。そのうえで政策立案に問われていることは、具体案としての原案を用意するかどうかである。

 子どもの貧困克服政策の検討組織を。 EUレベルの財政投入(対GDP比0.75%から2%へ)を子ども・家族分野へ。 ナショナル・ミニマムとローカル・オプティマム(地方の実情に応じたナショナル・ミニマムを超えた福祉水準の保障)保障。

人生はじめのしあわせ平等を保障する

 子どもが希望を失いつつあるなかで、子どものなかに希望をどうはぐくむかが実践的な課題となっている。…おとなの「最善の努力」を。

今の段階での私の感想

 本書が発行されたのは昨年の4月。私は、前の記事(「季刊「人間と教育」…」でも書きましたが、昨年6月22日に開催された「栗原地域をみんなで考えるつどい」(格差シンポジウム)の頃にこの「子どもの貧困」問題については、考え始めていました。週刊東洋経済の「子どもの格差―このままでは日本の未来が危ない!」(2008.5.17)もこのころチェックしていますが、実は本書も6月19日に図書館にリクエストしていました。ですから、この後しばらくしてから入手したのですがその時は殆んど読まずに返却しました。(図書館にわざわざ購入してもらったのに申し訳ない!)それが最近になって再度借りて今度は真面目に読みました。この記事でも、児童養護施設や婦人保護施設など、さまざまな福祉の現場からの報告の部分の紹介はカットしているように思いは分かるのですが、細部はどうも私は苦手です。しかし、私が本書を再度手に取ったのは、ここへ来て世界的な経済危機が進行し、日本でのそれによる矛盾が、しわ寄せが、これまでなおざりにしてきたため社会的弱者に今、集中的に現れてきていると感じているからだと思います。もう待った無しの事態だと思われます。

本書のあとがきに筆者らは「子どもの貧困研究会」をスタートさせたとありましたが、さらに筆者らの呼びかけで、昨年12月7日東京で、「なくそう! 子どもの貧困市民フォーラム」が開かれています。『子どもの貧困白書』をつくることが提起されているようです。今後とも注視していきたいと思います。

この記事では、本書を自分なりに要約して紹介することだけで精一杯。内容はまで充分に深めていません。

ただ、最後のほうの「子どもの貧困克服を本気ですすめるために」で「政策担当側にも運動をすすめる側にも本気ですすめる意思があるかどうか」を問うている所。私は非常に重要だと思いました。「誰のために、何のために」というミッション(使命)が無ければ何も良い方向に前進しません。「貧困は見ようとしないと見えない」し、見ようとするなかで共通の認識を持ち、課題を明らかにする。そして、政策転換をはかる。政策担当側―行政・官僚だけでなく、運動を進める側―福祉関係者、研究者だけでもなく、一般の市民がもっと知らなくてはならない、関わらなくてはてならなりません。今必要なのは、貧困の実態を、とりわけ「子どもの貧困」の実態を社会が直視することだと思います。

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「子どもの貧困」シリーズーその1

<BOOKS> (21) 「子どもの貧困」シリーズーその1

季刊「人間と教育」61 
「小特集 貧困と教育」を読んで          
2009.3.19

季刊「人間と教育」61 編集/民主教育研究所 発行/旬報社 2009.3.10

はじめにーこの「子どもの貧困」シリーズとは、

 この雑誌は、「栗原の教育を考える会」の鈴木健三氏に誘われ、3月1日の第17回全国教育研究交流集会in仙台の第5分科会(学校選択・学校統廃合・中小一貫校の現状と問題点)に参加した際に予告を目にしたものでした。当日は第60号までしか会場にはありませんでした。読もうと思ったのは「特集 学校の格差的再編と統廃合」です。後日ようやく入手して読んだところ、この特集は、集会での様子を先日のブログで紹介した山本氏や京都、東京の報告とはダブルところがありました。これはこれとして後日、触れることがあるかもしれません。それより、もう一つの「小特集 貧困と教育」が気になりました。それにもう一つ坂元忠芳氏の「脳科学と教育実践の課題」もこの一つ前のブログ「「学力」と「社会」を伸ばす脳教育-を読んで」との関連で興味深いものでした。

この「小特集―貧困と教育」の内容は、
・ フォーラム 「お金の心配をしないで学校に行きたい」兵庫県教育研究集会〈市民とともに考えるつどい〉
・ 貧困の中で生きる子どもたちと―プレゼン「ホームレス高校生」の作成にとりくんで―
・ 学習権保障を求めて生徒たちは などとなっていました。 等となっています。

 私は、昨年6月22日に開催された「栗原地域をみんなで考えるつどい」(格差シンポジウム)に「子どもの貧困・格差の問題ー読書環境から考える」というレポートを提出しています。当時学校図書館の図書費流用問題に取り組んでいました。これは、子どもたちを取り巻く教育環境を教育機会の不平等をなくすこと、身近にある知のセーフティーネットとしての学校図書館の役割重視という観点からの取り組みでした。その際にも、子どもの貧困・格差問題全般についても考えていました。この頃(2008.5.17)にも週刊東洋経済から「子どもの格差―このままでは日本の未来が危ない!」という特集が出ていました。また、シンポジウム実行委員会の中でも高校の先生方より貧困家庭の生徒達の就学状況が困難になってきていることが既に出ていました。先日(3月11日)のクローズアップ現代(NHK)では「貧しくて学べない」というタイトルで、景気の悪化で顕在化した、"貧しくて学べない"子ども達の増大し、社会の格差が広がる中で、すでに深刻な状況に。親の世代の貧困が、子どもの学ぶ機会を奪い、貧困の再生産につながる社会の歪みが伝えられました。ゲストの宮本みち子氏(放送大学教授・教育社会学者)の「国の施策の転換、子ども自身への支援策に切り替えるべき時期に来ている。」という指摘が印象的でした。そこで、私は、しばらくの間、「貧困と教育」を中心としながらも「子どもの貧困」について考えていきたいと思います。

「小特集―貧困と教育」より

 フォーラム 「お金の心配をしないで学校に行きたい」「学習権保障を求めて生徒たちは」

 前者は昨年11月15日に開催された兵庫県での集会。主催者(兵庫県教育研究所)は、次のように言っています。

 「貧困と格差の最大の原因は低賃金労働者の増加。年収200万円以下が1000万人。月収では16万7千円で、さらに税と社会保険料が徴収される。他方で正規労働者でも12万円程度の求人が出されることも珍しくない。総務省調査(2006年)の低所得の労働者層の世帯主平均年収は249万円。(妻子を持つ働き盛りの労働者のボーナス含めた額)首都圏では下宿大学生の月生活費が15万円ですから大学に子どもを進学させるのは不可能。…日本では子育て世代に対する社会保障が全く機能していない。…「子どもの貧困」が貧困問題の中心課題として取り上げられてこなかった。…人生を自ら切りひらいていく子どもたちにとって、貧困がもたらす不利や諸問題を子どもの側から理解することが今求められています。」と。参加者の私学生や教師、市民からの意見を交えた討論が行われ、最後にコーディネーターの望月 彰氏は「問題解決のためには「国際的な視野に交えて、私達の目の前で拡大しつつある貧困問題を直視し、奪われつつある人間性を取り戻し、「尊厳ある個人」としての子ども、親、教師、住民・国民の人間的なつながりをと再構築する教育実践と教育運動が求められます。」としていました。

 後者では、埼玉県の県立小川高等学校の鈴木敏則氏が埼玉県の教科書給与・夜食補助制度をなくそうとしている問題を取り上げています。定時制在学中のセーフティーネットにこの制度と修学指導事業と修学奨励費がなっていることを取り上げています。定時制が終わった夜の9時過ぎに働く生徒が増えてきていること。生徒の生活実態から、安心して学ぶことが出来るよう学習権の保障を求めて全日制と定時制の高校生が共同して「お金がないと学校に行けないの」首都圏高校生集会を企画していることを報告しています。

 貧困の中で生きる子どもたちと

 これは大阪の千代田高校の嵯峨山 聖氏が「プレゼン「ホームレス高校生」の作成にとりくんで」として報告しています。生徒達に押し寄せる「貧困」の実態、生徒が語る「貧困」の実相が紹介されています。その中で私が注目したのは、生徒会活動を中心に「奪われてきた学力」を回復させる取り組みです。勉強の教えあいができる放課後の学習会。「勉強が分かるようになったから」「生きていていい」と思えるようになったという。文化祭のテーマを「反貧困」として取り組む。その中で生徒の中に「貧困は自己責任ではない」という認識が生まれた。そして、自分や親を責める気持ちがなくなったこと。「貧困」が広がるこの社会はおかしい。しかし、団結すれば変えられるかもしれない」という希望も作り出せたといいます。この辺りのことは、赤旗の日曜版(3月15日)に「高校生が学んだ「反貧困」-クラスで“団交”したよ」という記事に、この春卒業した女生徒2人の思いが書かれていました。

最後にーこれからのこと

 私自身の周りでは、格差や貧困の問題、とりわけこれから問題として取り上げようとしている「子どもの貧困」についてが、それほどシャープに、鮮明に分かるような状況にはなっていません。妻の勤務する小学校(隣の市、大崎市岩出山地区)では、妻の話から少しずつそれが広がってきていることは理解していました。しかし、この季刊「人間と教育」61号やTV(クローズアップ現代)で、少し詳しく分かってきたかなと思えるぐらいです。もっとリアルに貧困の問題が見えない、見えてこないと困難を共有しづらいと思います。集会、シンポジウムなどもどんどん行って見えるようにしていかないと、今の日本では、社会が、一般の市民がこれを見過ごしてしまうと思います。

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「学力」と「社会」を伸ばす脳教育

<BOOKS> ⑳ 
「学力」と「社会」を伸ばす脳教育 -を読んで                    
 2009.3.12

発行/講談社 2009年2月20日発行「学力」と「社会」を伸ばす脳教育

著者について

澤口俊之(さわぐち としゆき、)は日本の脳科学者。元・北海道大学教授。専門は認知神経科学、霊長類学。理学博士(京都大学、1987年)。1959年2月東京生まれ。『幼児教育と脳』以後は、一般向けの著者として人気があり、「トンデモ本」とされることも多い
・2006年、北海道大学を退職した。
・現在、人間性脳科学研究所を設立し、関連会社より持論であるHQ理論に基づいた教材ソフトを監修している。
・脳の前頭連合野の障害(発達不足)について発言することで有名になったが、…  (ウィキペディアより)

内容の紹介

はじめにー8歳までが最も重要

 育児や教育の細かいノウハウは他書に譲るとして、子どもの脳教育に関しての基幹としては、「これ1冊で十分」と言う本に。

 脳育成学の成果を踏まえれば、学力や社会力を含めた多様な能力を向上させることができる。…ADHDやLD、自閉症といったいわゆる「障害児」も、脳育成学の観点では改善可能。

HQ(人間性知能Humanity Quotient)の「土台」を幼少期できちんと育んでおけば、「学力」や「社会力」が伸び、思春期以降に多少の問題があっても、人間らしくて立派な大人になる。社会的に成功する可能性も高まる。HQは「成功知能」。

第1章 脳とニューロンの本質

 ニューロンの本質は、電気的にコントロールされた分泌を行うことにある。分泌された伝達物質の中には神経システムの「調節」をする「調節物質」がある。その中の「モノアミン系」(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)は、育児や教育の基本としての「褒めること」と「叱ること」に密接に関係。

 何か望ましい行動を定着させたり、目的を達成させたりする際にはドーパミン系の繰り返し効果を使うことがベスト。(「HQ育成サイクル」) 叱られること(罰)はネガティブな情動体験で、ノルアドレナリン系が活動。―「禁止規範の学習」に。(これは、最小限に)

第2章 臨界期とは何か

 臨界期とは、何かを学習する際に決定的に重要な期間のこと。その臨界期には、豊かな環境が必要。とりわけ、本来の環境―「進化的に予想している環境」(EEE Evolutionarity Expected Environments)に近づけることがポイント。

 ヒトの子どもは「人間社会で音声言語に囲まれて育つこと」を進化的に予想しており、そのため、音声言語のための神経回路を幼少期で発達させるような遺伝的(あるいは進化的)なプランを持っている。音声言語の臨界期は8歳。(音声言語に応じたEEEは、「幼児期に音声言語に囲まれる」という環境。)文字言語の脳機能にはEEEはない。文字言語の能力は教育が必要になってくる。(「神経回路の可塑性が高い時期」としての「学習容易期」なら何時でも習得できる。)8歳を超えると第2言語の習得能力は低下し、17歳以降では年齢にかかわらず、低いレベルの第2言語の習得能力しか持ち得ない。臨界期で第1言語を獲得しておけば、第2言語はその後の学習容易期なら比較的容易に身につけられる。(17歳頃まで)

 絶対音感の臨界期は言語と同じように8歳頃まで。

第3章 多重知能とその育成

 知能の本質

・ 知能は脳機能の能力
・ 知能は人類進化の産物で、適応的な意味を持つ。
・ 知能を伸ばすためのEEEがある。
・ 知能には臨界期がある。
・ 知能は複数ある。(多重知能)

 多重知能の種類

 言語的知能、空間的知能、論理数学的知能、音楽的知能、絵画的知能、身体運動的知能

 脳の異なった領域は異なった機能を持っており、多数の神経システムが並列している。

 多重知能は、お互いにある程度独立している。ある知能を伸ばしても他の知能は(例外はあるが)たいした影響を受けない。ある知能がさほど高くなくても、他の知能がよく発達する。

 幼少期は多重知能の基礎を形成する時期なので、「多くの知能をまんべんなく伸ばす」という方法が基本。-そのためのEEEが大切。しかし、EEEだけでは伸ばせない教育内容がある。江戸時代よりの「読み書き算盤」に加えての音楽が保育園、幼稚園で行うべき。現行の学校制度6・3・3制を6・6・3制(3~8,9~14,15~17歳)に。

第4章 人間性知能「HQ」

 前頭連合野は、限られたソースの中で多重知能や記憶を上手く操作するOSのような役割を担っている。

 前頭連合野の脳間・脳内操作系が人間性を作る。その能力のことを「人間性知能(Humanity Quotient)-HQ」。(参照ー脳を鍛えるHQ理論

 HQの要素

・ 家族と氏族社会の形成(遅くとも400万年前から)
・ 組織的な採食行動―特に狩猟-の本格化(200万年前から)

 生物の究極的(進化的)な目的は自分の遺伝子を次世代に残すことー利己主義が基本戦略。ただ、利他行動によって自分も相手も利益が得られる場合、「互恵的利他主義」という進化戦略を採用することがある。

 ヒトの場合、氏族社会を形成したせいで、この互恵的利他主義をさらに発展させて「共恵戦略」を採用。-「殺すこと」「騙すこと」などは、氏族内での禁止的な社会規範に。(氏族間では別)

 もう一つは、優れた未来志向性。ヒトの未来志向性は、突出しており、ヒトの最大の特徴の一つ。

 また、ヒトは、組織的な採取行動を進化させてきた。その典型が狩猟。採取行動には共恵戦略が重要になるし、かつ、優れた未来志向性と計画性が必須。


 共恵戦略と未来志向性が最も重要な進化的な駆動力となってHQが発達。HQの中心・最上位の機能は未来志向性にある。これと結びつく形で、HQは「未来志向性行動力」と「社会関係力」を含む。

 未来志向性行動力―企画力、問題解決能力、独創力、やる気・努力など。
 社会関係力―自己制御力・理性、心の理論(相手の立場に立ったり、相手の考えや情動を推測したりと即したりする能力)、高度な言語能力(交渉力や説得力)など。

 HQを代表する知能指数―一般知能 gF(個別的なIQの上位に立つIQ、前頭連合野で担われる前頭連合野の能力の指数)

 HQの発達程度による人物像。

-HQの主要な進化的目的は「人間的な社会内生存、婚姻、子育て、」であるし、共恵戦略と未来志向性が重要な進化的な駆動力となって発達したので、「冷酷な切れ者」「画一的な優等生」ではない。「自分の能力を最大限に活用して、自分やその家族のみならず皆の幸福のために前向きに生きる個性的な人物」といった人物像。

第5章 HQ育成法―乳児期 

 乳児期(生誕後~2歳頃):神経回路が急速に増える時期。
 幼児期(3歳頃~8歳頃):神経回路の複雑さが維持されている時期。

 乳児期では脳幹を発達させることが最優先。

 母親脳は出産直後につくられる。新生児にとってお母さんに抱かれることが最初のEEE。それよりも、新生児を抱くことは、お母さんにとって重要なEEE。女性の出産の育児は「自分の遺伝子の存続」を大きく左右する。そのため、出産に適切な年齢(おおむね20歳代)が進化的に設定されている。「出産後臨界期」に20分ほど抱くことで、お母さんの脳は「育児脳」(「母親脳」)にシフトする。その結果、お母さんは赤ちゃんへの愛情が増し、育児にも自信が深まり、育児スキルが高くなる。母乳も出やすくなる。こうした状態は短くとも2年間―子どもの脳が乳児脳の期間―続く。

 母乳と母子密着型育児(カンガルー育児-いつでも飲ませられる)の推奨。-「母乳だけで、最低6ヶ月以上育てる。」というEEEが大切。

第6章 HQ育成法―幼児期

 幼児期で最も発達させるべき脳領域は前頭連合野。前頭連合野は5歳をピークにして、8歳頃まで急速に発展する。(その理由は、人間的な社会内生存、婚姻、子育てのための基礎的な能力を習得するため) その後も発達し、20歳を過ぎても発達は続く。8歳までのADHDは、思春期でのCD(行為障害)の、そしてCDは成人でのASPD(反社会性人格障害)のそれぞれリスク要因になる。

 「痛み」の重要性

 体の痛みを感じることは、生存にとって不可欠。その痛みを「心の痛み」まで進化させてきたのがヒトの特徴の一つ。相手を攻撃したり、相手から社会的に疎外されたりする際に心の痛みを感じるのは、「互いに助け合う」という共恵戦略をヒトが採用してきたから。痛み神経回路は「心の理論」とも深く関係。同情や共感とも関係。人間は心の痛みや疎外感、心の理論を発達させる環境を進化的に予想している。-身体的に適度な痛みを伴った「ケンカ」のような社会関係は、HQ発達のEEEになっている。「仲間との社会関係力」「情動のコントロール力」には臨界期がある。幼児期ではそれなりのケンカをしておけば、その後は自ずと「相手の心や体まで傷つけるような暴力」には歯止めがきくようになる。

 社会規範と音声言語の共通性と相違 

社会関係には自ずと文法に似たルールや規則、すなわち社会規範がある。その社会規範には言語と同じように深層規範と表層規範がある。深層規範は進化的なもので、全人類に共有化されているし、それを臨界期で獲得する仕組みを脳は持っている。

深層規範―「同胞を殺してはいけない」「親や子どもを殺してはいけない」「同胞の心や体を意味も無く傷つけてはいけない」 共恵戦略と結びついて「騙してはいけない」「利益をもらったら、返さなければいけない」「自分だけで利益を独占してはいけない」さらには「自分のみならず同胞を幸福にする」も。

 こうした深層規範をベースにして、それぞれの時代や、地域、民族などに応じた表層規範が出てくる。道徳や礼儀、あるいは法律。

 しかし、音声言語と社会関係では、決定的に異なる点がある。音声言語では、音声言語自体に文法が組み込まれているが、社会関係では必ずしもそうではない。社会規範の場合も同様。年長の子どもや大人たちが示す社会規範に触れることで当該社会に適切な社会規範を獲得するが、年長の子どもや大人たちが社会規範を明示するとは限らない。まして同年輩の友人たちとの社会関係では不十分。やはり、年長の子どもや大人たちが社会規範を明示したり、きちんと教えたりすることは、HQのEEEとして、進化的にみれば言語の習得以上に重要。

 HQ育成サイクルの形成を

 幼年期にHQ育成サイクル(目的の設定→努力→目的の達成→より高いレベルの目的の設定→努力…)を充分に経験して(「成功体験」をして)おけば、脳は自ずとこのサイクルを形成するよう発達する。

HQ育成サイクルのベースには、本来、好奇心や探究心がある。好奇心や探究心は「未来志向的な報酬の予測」と結び付いたものであり、自発的なHQ育成サイクルの形成の上で非常に重要。

第7章 HQを育てる日常生活

 HQを伸ばす生活習慣

 幼児のgFにどのような生活習慣・項目がどの程度関与するのか
 gFにプラスに寄与する項目
・ 母親との接触時間が長いこと。
・ TV(とくにバラエティ番組)をよく見ること。
・ 公園などで集団遊びの頻度が高いこと。
・ 祖母と接触する頻度が高いこと。(祖母効果)
・ 魚をよく食べること。
・ 箸使いがうまいこと。
 gFにマイナスに寄与する項目
・ よく泣くこと。
・ TVゲームをよくすること。

<補足> 

祖母効果―閉経後に長生きするのはヒトだけ。たいていの哺乳類のメスは閉経頃、妊娠できなくなる頃に、死んでしまう。ヒトの祖母は自分の子どもーとくに娘―の育児を手伝い、かつ、孫の世話をする、(そのことで子孫を繁栄させるー包括適応度を増加させる)という役割を進化的に持っている。そして、ヒトの祖母は自分の娘が閉経を迎える頃に死ぬ確率が高くなる。幼児がいる家庭はなるべく祖母と一緒に暮らして、家事や,育児を手伝ってもらうべき。そうすることでボケも防げる。-二重に良いこと。(祖母は進化的役割からみれば、本来ボケないはず。祖父に関しては、未検証。科学的議論はできない。)

 魚類は人類の「進化的な食材」。―魚類が突出してgFにプラスに寄与。オメガ3脂肪酸、ビタミンB12その他にもバランスよく脳に良い栄養素ガ含まれている。それも箸を使って食べること。

第8章 ワーキングメモリの訓練

 HQの中心ワーキングメモリとは 

HQは前頭連合野の脳間・脳内操作系の能力で、その脳間・脳内操作系の中心にあるのがワーキングメモリ。
・ 行動や決断に必要な情報を一時的に保持しつつ活用して「答え」を導く働き。
・ 思考や問題解決、創造性、自己制御、企画・計画性などにおける最重要な基礎。
・ 進化的には、社会関係力の最重要な基礎。
・ 未来志向性やgFと密接に関係。

 ワーキングメモリの訓練の効果

 ワーキングメモリを毎日かなり使うことで、ワーキングメモリ用の神経システムが可塑的に変化し、その結果、ワーキングメモリの神経システムと結びついているgFが向上する。元々gFが低い幼児ほど訓練の効果が大きくgFがより向上する。ワーキングメモリ訓練がgFとワーキングメモリを向上させることは明らかだが、明確な効果を持つのは8歳頃まで。その期間なら、1日10分ほどのワーキングメモリ訓練を2ヶ月間行うだけで十分で、その結果はその後も維持されるはず。

私の感想など

 私は、かつて澤口氏の著作「あぶない脳」(2004年筑摩書房)と「したたかな脳」(2005年日本文芸社)を参考にして、図書館をもっと大きく育てる会(栗原市)の会報第7号を作成しています。タイトルは「栗原市における図書館システムの現状と課題 -図書館=脳の視点から考えるー」というものです。氏の脳やとりわけその前頭連合野についての考え方に大いに触発されました。この本は仙台の本屋でたまたま見つけたもの。まだ発行されて間もないものです。教育にはこのところいろいろかかわってきていますし、主な対象は幼児のようで孫達のことになります。

 読み終わってから記事にアップするためにネットで調べてみると、いろいろと分かってきました。氏がだいたい2005年以後のことですが、様々なトラブルを起こしていること。原因は今一つはっきりしませんが北大を辞めている(辞めさせられて?)こと。著作の評価も賛否両論でした。

 この本の視点も、私には大変興味深く思われ、参考になりました。しかし、最後に「ワーキングメモリ訓練法」として「脳力道場」というソフトが紹介されていますが、調べてみると、この対象が10歳代以上となっていました。臨界期が8歳頃なのにこれで紹介になっているのかと疑問に思いました。(別のメーカーの4~6歳対象の高価なソフトコグメド ワーキングメモリトレーニングが見つかりましたが?)

それに、本書の「はじめに」のところで「いわゆる「障害児」も、脳育成学の観点では改善可能。」としていますが、実際のところはどうなのだろうという疑問が出てきます。「可能」であり、「改善した」ではないのですから、検証が必要です。(気になったブログーひょこむ「教育」と「障がい、学校、家庭」

杉山登志郎氏の「発達障害の子どもたち」(2007年講談社)を読みましたが、その中の「発達障害の早期療育」に書かれていることとは少しズレがあるように思えます。10歳を臨界点と見ていて、何よりも「大人との関わりが大事」としています。その中で規則正しい生活をと優先順位に順に次の6つあげています。

―①、健康な生活。②養育者との信頼と愛着の形成。③遊びを通しての自己表現活動。④基本的な身辺自立。⑤コミュニケーション能力の確立。⑥集団行動における基本的なルール。―

 ⑥もあげられていますが、優先順位としては最後です。澤口氏によれば、⑥はかなり重視しなければなりません。ですから、障害児の教育に関しても確かに澤口氏の考えは参考にはなりますが、現場でのきちんとしたスリ合わせが必要になってくると思います。

その他についても同様だと思います。澤口氏の考えは面白いのですが、その適応範囲を超えると様々な問題が生じると思います。澤口氏に限らず脳学者といわれる方の弁には、この適応範囲を超えて言い過ぎる傾向があるように思われます。

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全国教育研究交流集会に参加

第17回 全国教育研究交流集会 in 仙台
に一日だけ参加。
  2009.3.5  

第5分科会
(学校選択・学校統廃合・中小一貫校の現状と問題点)


先週の半ばに「栗原の教育を考える会」の鈴木健三氏よりこの集会に誘われました。2月28日(土)・3月1日(日)の二日間でしたが、私は二日目の分科会のみに参加しました。主催は、民主教育研究所とみやぎ教育文化研究センター。テーマは「どの子にも学ぶ楽しみ、生きる希望を~子ども・青年と暮らしの危機の中で~」。会場は、北仙台のフォレスト仙台。この種の集会は、私よりも妻の方を対象にしているのですが(妻はレポートを依頼されていたのですが、別の教研合宿で発表)当日は欠席。一人バスで仙台に行きました。
二日目は午前9時半~午後4時となっていましたが、私は、一人遅れて10時近くに到着。それでもまだ始まったばかりのようでした。15人ほど(午後2人入れ替わりで、のべ17人か?)のこじんまりとした分科会。全部で11分科会ですから全体でも三百人ぐらいでしょうか、毎年、東京で開催していたのが、珍しく仙台でということになったそうです。全国各地から教師、教育関係者、研究者、地元からは、保護者も参加して集会でした。私の立場は?それのどれにもあたらず、午後の最後のほうで発言はしましたが、説明が面倒で自己紹介は省きました。

◇第5分科会 
学校選択・学校統廃合・中小一貫校の現状と問題点


◇世話人 
糀谷陽子
(東京・中学) 山本由美(東京田中短期大学) 賀屋義郎(宮城・元小学校)

◇概要(ねらい等)

全国で学校統廃合が増加し地域の小・中・高等学校が消えていく。市町村合併に伴う財政的な理由が挙げられ、首都圏では学校選択制によって小規模校がつくられる。統合後小中一貫校にして“エリート校”をつくる、と言う保護者の反対を分断する施策も行われている。しかし、無謀な統廃合は子どもから地域を奪い、その発達・成長にダメージを与える。統廃合の政策的意図と子どもの発達にとっての地域の価値を考える。

<学校統廃合によって何が起きるのか>
(山本由美)―レジュメより


1 増大する学校統廃合 

戦後第4のピークー新自由主義的な学校統廃合
  a 市町村合併に伴う学校統廃合―全国で
  b 学校選択制とリンクした学校統廃合―東京で
 推進する行政
・ コスト削減(07年度財務省調査は、人件費を中心として統合前より小中合計で170億円の効率化と評価。)
・ 「適正規模」論 「12~18学級」に教育的な根拠はない。教育的効果論、「切磋琢磨」論の浸透(保護者の選択行動を促し、分断し、統廃合反対運動を起こりづらくする。)

2 新自由主義的な学校統廃合の手法

 学力テスト、学校選択制、学校評価・教員評価、バウチャー制度によって貫徹
・ 「最低基準」を割り込んだら即統廃合へ 
・ 「適正規模」以下は過小規模校
・ 不動産売却をも目的としたと思われる統廃合計画
・ 小・中一貫校へ移行するという名目の学校統廃合

3 学校統廃合は子どもたちにどんな影響を与えるのか

 「子どもの健康と安全の障害、子どもの遊び場の消失、学力・学習意欲の停滞、非行化、家庭教育の否認、教師の多忙化と管理体制の強化、親の経済負担の増大、学校と家庭・地域との疎遠(若林敬子)」
 ―荒川区、台東区など歴史的に統廃合が多かった地域、全てを1から始めないと統合校が荒れる、それでも10年間は大変。

4 学校統廃合は地域にどんな影響を与えるのか

 「小学校を核とする生活圏ネットワーク構想」→小学校区が1つの単位に、避難拠点、地域の拠点としての学校。
 「地域社会とその人の心とを結びつけるシンボル的機能」
 「校名・校章・校歌・百年史その他固有名詞を記録するものすべてを抹消する」→子どもがダメージを受けないために全てを一新する(吸収合併にならないように)統廃合方式との矛盾。

5 見直しのきざし

 文京区で大規模統廃合阻止、江東区の学校選択制の見直し、佐賀県唐津市で教職員組合が率先して統廃合阻止、町づくりプランニングを共有。

◇レポートより

「東京の現状『学校選択の自由化』に関するPTA調査から」
都教組足立支部 
内沼隆史


1、東京教研(第58回)「学校選択の自由化を考える」分科会を設定した理由は、

・ 特別支援学校統廃合計画、聴覚障害児と身障学級児とが一緒に、
・ 家庭の憂さ晴らしを学校でやる子ども。低所得者層の多い地域で顕著。
・ 貧困格差をこれ以上広げたくない、就学援助率は平均30%を超える。
・ 選択性が始まり、ある小学校は特別支援学級が3学級になった。格差は広がっている。
・ 中学校大規模校に集まり、35人以上学級に集まる子が70%を超える。単学級校でも40人近い状況。教室は落ち着かない状態。
・ 中学校では滞納が多い。私立進学の割合も、学費を払えないから減っている。    ―など。
 東部地区(足立区、荒川区、葛飾区、墨田区、江戸川区、江東区)PTA会長向けアンケートの実施(157通回収)

2、分科会の論議…参加は6名のPTA会長、合計40名。 

PTA会長・元会長・地域の方の意見
・ 風評によって左右される学校選択
・ 統廃合によってあいさつ回りが大変になった。
・ 登校に多くの時間がかかっている。
・ 保護者の願いは、40人規模ではなく30人学級で単学級にして欲しくない。
・ 進む地域破壊―学校は親、教師、地域が結びつく所。親は自由化したいなんて言わなかった。町会のお祭り、行事に殆んど子どもが来ない。子供会がつぶれていく。  など。
・ PTA活動が大変になり、やりたくないという意見が多くなった。
・ 統廃合計画と連動しているのではないか?
・ 学校施設が大規模校にてきしていない。
・ 区教委による肩たたき、行政による強引なやり方。
・ 今の子どもをどう見るかが大切だ。
・ 説明会は税金の無駄遣いだ。
教職員の意見
・ 見る目がたくさんあれば子どもは落ち着く。
・ 選択制がなければ互いに成長できたはず。
・ 地域とどのようにつながるか。-地域の特色作り、特色とは先生、地域が子どものために何をするかということ。地域を大事にして地元の学校に行く世論を作りたい。-など。
・ 小規模小学校吸収合併の話。7人予定者に教委の圧力で0人に。小規模小学校は、一人ひとりが大切にされていた。親からの苦情もない。
・ どの学校も同じことをやったら特色などなくなるのに。-子どもを待たせて別の仕事、大量の書類もあり忙しい、特色まで出せと言われ疲れる。-など。
・ 教育は社会を読み取る力を子どもに育てること。そのために先生、地域と作っていく。どの子も生き生きとした学校にしたい。

3、分科会のまとめ

① 格差の広がりを実感。
・ 55%が格差が広がったと回答。
・ 人数の多い学校は良い学校の風評。
◎ 子供が商品価値でふるい分けられ犠牲になっていると思う。
② 小規模校の優位性
・ マンモス校は40人教室、特別教室を潰す。
◎小規模校は子どもが生き生きとしている状態。少人数学級の良さを明らかにした。
③ 地域のつながり
・ アンケートの約半数の意見は「地域のつながりが弱くなった。」町会、子供会が機能しなくなっている、会長が苦労している。
◎ 組合とPTAの垣根が低くなり、一緒に運動できる可能性がある。
④ 選択制と統廃合の関連
・ アンケートでは「どちらとも言えない」が多い。
・ 討論では「統廃合の話が出るだけで入学者が減っている」と言う。
⑤ 自由化をやめるべきともあるが賛成もあった。
・ 賛成の人の意見でも通学の便利さ、公平さが意見としてあった。親はよい学校にいかせたいから、選べる権利を行使するが、子どもを苦しめている。
・ 権利行使は、みんなの学力保障、地域を守る動きになればと思う。
・ 地元の学校を育てよう、地元を良くしよう、という意見が出ていた。「この町に生まれて良かった。」という発言もあった。地域の声、親と教職員の関係を変えていくだろう。共同していけば地域に根ざした学校になるはず。

京都市の「教育改革」と学校統廃合問題 大平 勲(京都教育センター)

Ⅰ「京都の教育」-その「激動の半世紀」を検証する。 

京都市教委の「企画労務担当」が教育行政の根幹
・ 「企画労務担当」とは:1956年に設置(全国初)、その職務は「匿名にいる調査・企画・立案、市議会関係事務、報道機関との連絡調整、職員団体及び労働組合関係対策など」。
・ その実績:「校長協力者秘密調査」(82)「岡山・山佐本陣事件」(89)「校長道とは死ぬこと」(89)「校長内申の教員表彰制度」(02~)「タウンミーテイング抽選排除」(05)
・ 労務対策の「功労者」が「出世の登竜問」→市長候補・市長に
・ 深く連携する「地域教育専門主事室」の任務―「学校協議会」「学校評価」「学校評議員」「生徒指導研修」「体験学習推進」「放課後子どもプラン」など。
◎ 「住民合意」を水面下で組織するトップダウン方式の推進役。

Ⅱ「教育先進都市」を吹聴する京都市の「教育改革」 「学校の自主性・自立性」の名のもとで

・ 各学校に「学力向上チーム」(07/2):年間授業日数205日以上(標準198日)、標準授業時数の10%増
・ 「二学期制」の導入(03~、06年度規則化)
 大型建設の一方で学校予算の削減
・ 西京高校:中高一貫(約85億円)、北総合支援学校(約50億円)、下京統合中学校(約54億円)など
・ 学校運営の一律2割削減(04年):水光熱費、教材・教具、クーラーの使用制限など
 疲弊する教職員
―画期的な二つの裁判勝利(新採教員免職無効判決08/2京都地裁、超勤一部認定判決08/4同)にも拘らず

Ⅲ京都における学校統廃合の動向

1、京都府内(京都市以外)の動向
 ①北部(過疎による児童・生徒減)
  「複式学級はイヤ」「活気と競争のある場に我が子を」との父母の声を逆手にとって:「アメ」はない
  福知山市の場合:現在9小学校で複式学級/27小学校中、全児童50名未満が10校、根強い住民の「学校残せ!」の声(3年前に吸収合併した周辺3町):「教育ネットワ-ク」結成。
 ②南部(急増から急減へ)
  宇治市の場合:学校改築(耐震)に伴い「安上がり」を名目に9中学区すべてで小中一貫教育を市長提言(NEXUSプラン)学校統廃合は直ぐには手を付けず、年次計画で進める。(H24年度から全ての小中学校で小中一貫教育を実施。宇治小の改築にあわせて中学校を新設併合し、小中一貫校に。南宇治地域と西小倉地域で学校統廃合を行う)
2、京都市内の動向
 ①「番組小学校」:東京遷都に危機感を持った町衆が明治2年(学制発布の3年前)に作った小学校、「学校は地域のもの」という考えが根強くある。70年代初め中学校統合をめぐり住民が猛反発。
 ②その反省から「市民の要望抜きには統廃合は進めない」→市教委は「市民の要望」を水面下で組織する。地域組織(自治連合会、PTA、消防団、女性会、老人会、体育振興会など)を行政主導でコントロール。(ボスの把握が徹底)
 ③90年代から組織した「住民合意」のもとに学校統廃合を本格的に着手:市街地の51小中学校を15校に。議会でも反対しにくい「住民合意」←行政主導の「まやかしの住民合意」に抗し運動:まちづくり運動と結合した「学校統廃合を考える会」
3、直面する東山(北部)の統廃合問題:7小中学校統合による小中一貫校新設(H23年4月開校予定)
① 地元8学区自治連合会長による要望書提出←水面下での行政圧力、要望書作成に市教委も参加。
② このまま進めてよいのか?-多くの問題点
・ 教育条件の低下:800人を超えるマンモス校、少人数学級が30人を超える過大学級に、教職員30人減
・ 施設、設備が減少(運動場、体育館、プールなどが7→1に)
・ 遠距離通学:1.5㎞を超えると市バス通学に(250名)、国道1号や東大路の横断、観光渋滞
・ 新校舎設計図に見る狭い敷地の問題点―地下2階の体育館、地下1階に給食調理室、当面はプール、図工室、技術室もない。
・ 小中一貫教育(施設一体型)の功罪。
③「東山の学校統廃合を考える会」の活動
 校区ウオッチング、シンポジウム、学習会(品川・日野学園から)、全戸ビラ配布、ハンドマイク宣伝、公開質問状など

仙台市における学校統廃合問題 小規模校の存続を求める地域連絡会 田中 元

仙台市の市立小・中学校の統廃合計画の内容と問題点

① 小規模校のデメリットのみを強調
 検討委員会最終報告―「切磋琢磨することにより、社会性を身につけていく。」「豊かな人間関係の構築や社会性の習得などをねらいとしている。」
 検討委員会自身が行った小規模校と保護者からのヒヤリングでは、市教委の目論見に反して小規模校の「問題」は否定され、多くが以下のようなメリットを上げ、市教委がいう問題点は「しいて上げると」という程度のものとどまっていた。
・ 一人一人の子ども目が行き届く
・ 施設、設備の活用が充分にできる
・ 授業での発表の機会が多い
・ 学芸会などの行事ではすべての子どもたちが主役になる機会が作れる
・ 学年を超えた良い縦の人間関係ができる
 これらのメリットを検討委員会は完全に排除して最終報告を作り上げた。
② 「一定規模」を優先させた数合わせの統廃合
③ 子ども不在・地域無視のすすめ方

統廃合問題への父母・住民の取り組み

① 存続を求めて立ち上がる住民
 はじめに立ち上がったのは農業振興地域の小さな学校・地域(東六郷小)。市教委に説明を求める集会に130人も参加。署名・要望書の提出。続いて次々に6つの小学校、中学校が存続を求める要望書もしくは陳情書を提出。どの地域も小規模校が充実した教育活動を展開していること、地域の拠点として大切な機能を果たしていることを強調し、教育委員会が言う小規模校の「問題点」と統廃合に「ノー」の回答を出した。
② 統廃合対象地域が運動を交流
 07年7月14日、「仙台の子どもと教育をともに考える市民の会」が呼びかけて統廃合が妥当とされた地域の交流会を開催(5地域32名が参加)。市教委の拙速で住民無視の行政手法と、地域における学校の存在の大きさを共通認識する。
 9月1日に第2回の交流会を開催。新たに3地域が加わる。「地域から学校が無くなったら地域はますますさびれる。すでに学校が無くるという風評が広がり、不安を持った住民が転居したり、転入をやめたケースが出てきている。時間が経過すればするほど風評で地域の過疎化が加速していく。早く存続決定を求めていきたい。」という報告。
③ 協働行動で存続運動を展開
 12月26日に3回目の交流会を開催。「小規模校の存続を求める地域連絡会」を結成して力を合わせた運動を進めていくことで合意。
 08年1月19日、結成集会(9地域35人)。「存続を求めるアピール」運動に取り組む。アピール賛同者は地域の町内会関係者・PTA関係者・学校関係者の役付きの方々に限定。半月の間に12団体・128名の賛同署名が集まり2月15日市教委等に提出。2月20日、市議会で市教育長が「中学校は当面見送る」「統廃合が妥当とされる学校すべてを実施計画に盛り込むのは難しい。児童の減少が著しく緊急度の高い小学校の優先順位を判断し、残りの学校については時間をかけて検討したい」「様々な考えがあり慎重に検討していきたい」と答弁。-アピール運動によって市教委の計画を後退させることができた。

広がる統廃合反対の運動 

5月10日にシンポジウムー小さい学校をつぶさないでー「学校は地域の宝もの・小さい学校は教育の宝もの」を開催。これを契機として、これまで存続運動が起きていなかった地域でも懇談会の開催や署名運動が始まる。小学校ではすべての対象地域に存続を求める会が結成された。
市教委の拙速で強引な決定
 7月25日の定例教育委員会は、傍聴者を排除して「仙台市立小・中学校の一定規模確保に向けた基本方針」及び「実施方針」を協議。「小規模校の存続を求める地域連絡会」は、8月20日、「学校統廃合の『方針』公開を求め、拙速に『方針決定』を行わないよう申し入れます」を提出。その間、協議内容を明らかにしないまま、8月29日の定例教育委員会において、30人を超える傍聴者が注目する中、緊急度の高い学校として貝森小・野村小・松陵小の3校の統廃合推進が決定された。
 地域との合意が前提とさせたことは、これまでの運動の成果ではあるが、市教委が地域の反対運動を分断させることも考えられる。市教委と地域がどのように合意形成をはかっていくかが大きな課題となる。市教委のリードを許さず住民が団結を保って地域の学校をまもれるよう、地域連絡会の役割を果たしていきたい。

学校統廃合問題―栗原地域からー 栗原の教育を考える会 鈴木 健三

栗原市の学校統廃合への動向(省)

これまでの取り組み

① 会では08年5月1日発行の「さわやかニュース」を前期統廃合対象の幼稚園、小・中学校の教職員とPTAに届ける。
② 考える会員の市会議員の活躍、文教常任委員と本会議の一般質疑等で取り上げていただいた。
③ 考える会員は積極的に市民説明会とパブリックコメントに参加して「誰のための統廃合か。急がないこと。保護者、地域の人たちとじっくり話し合うこと」を主張してきた。
④ 高清水地区では「高清水中学校を前期統廃合計画からはずして」という署名運動をして、市教育委員会に要求を受理させた。
⑤ 文字小学校学区では地域のPTAのOB、現PTA役員の方々で「小学校・幼稚園の廃校・廃園問題を考える会」を作り、話し合いを進めている。

学校統廃合の現状

 市教委は08年4月から前期の小・中学校統廃合対象校へ説明会を開始。4月にはPTA総会で短時間に形式的に説明を中心に実施。6月より広報「くりはら」に「学校きょういくの窓」を連載。
・ 小学校29校は7月末までにほぼ説明を終了。中学校は10校中2校で説明を終了。時間がなく、説明が主。
・ 小中一貫校の金成地区では小学校だけの説明で終了した。
・ 中高一貫の栗駒中と岩ヶ崎高校は市立と県立の関係で県教委との日程が取れないとのこと。進んでいない。
・ 市内の小中学校のPTAでは市教委の提案を受け、どのように意見をまとめていったらよいか、役員会で話し合っている段階が多い。
・ 富野小学校PTAでは地区民にアンケート調査をした。発表は未定。
・ 有賀小学校PTAでは学区在住の18歳以上全員へのアンケートを実施。集約をして配布中。

今後の方向

 具体的な取り組み
・ 市民が統廃合について、話し合えるよう意識高揚を図る。-先進的な取り組みをしている市や町の教育委員会、PTA,地域から学ぶ機会を持つ。シンポジウム等、市全体への取り組みをする。
・ 定期的に「さわやかニュース」を発行し、会員、PTA,市民に配布する。
・ 4月に市長・市議会議員選挙があるので、栗原の教育特に、学校統廃合について、各候補者に公開質問状等で考えを聞く。
・ 統廃合に該当する前期の対象校を中心にPTA役員と交流会を持つ。
・ 毎月、市教育委員会を傍聴し、動向を見る。
・ 市教育長、市長交渉をする。―など。

◇ 分科会での論議から-私の感想

私自身葉、確かに「栗原の教育を考える会」のメンバーなのですが、この分科会に出ていた教師・教育関係者・研究者の方、地元からの保護者の方とも違って、どうした訳かいつの間にか運動に巻き込まれてしまったただの一市民です。それにこの一年ぐらいの係わりしかありません。従って、教育問題や学校統廃合問題でも、まだまだ不勉強なのです。分科会での話を聞いていても、その場でよく分からないことも多くありました。そこで、後日、家のネットでもう少し詳しく調べて理解を深めている次第です。世話人山本氏の概要、東京、京都、仙台の報告を要約するだけでも結構、時間がかかってしまいました(栗原はだいたい熟知している)。これから分科会での論議を書こうと自分のメモを見ると、字も汚いし、もう時間も経っていてよく判別できません。そこで、「私の感想」ということでご了解願いたいと思います。

東京の報告では、以前から統廃合が進んできた上に、さらに今、選択制が覆いかぶさってきているという感じでした。そこに更に、小・中一貫や中・高一貫が目玉として推進されてきている。ところがこの選択制や小・中一貫、スリ合わせが上手くいっていない。その矛盾やしわ寄せが何よりも子どもたちに集中して現れてきている現実があります。その目玉の路線に上手く乗れた子はいいが(少数)乗れなかった子が多くて問題が…、途中からドロップアウトした子は、タライ回しにされる傾向に。さらに、不公平感を持ったり、やる気をなくしたり、自傷行為に走ったり、…全般的には“子どもたちの荒れ”という形でも出てきて、かなり深刻な状況だと思われました。

京都の報告では、行政から組織された「住民合意」の凄まじさを感じました。「ここまでやるのか!」という感じです。これに抗する民主的な力も勿論、強いのですがそこまで切り結んで運動を展開するのは並大抵なことではないと思われました。東京の品川・日野学園を学習材料として取り上げたということでしたので少し調べました。確かに一般の評価は高い超目玉です。しかし、無理がある。6年を4年間にというカリキュラム、凄い校訓、でもそれについていけないものは排除されているようなもの。それを手本にしたような建設中の東山の小・中一貫校は、全国的に見ても悪例であり、まさにバケモノでしかありません。京都北部は栗原と似たような感じなのか?「複式を回避したい」という気持ち(それもおかしいのですが…)に、小・中一貫校で何か良くなるような幻想を振りまいている。(私も、宮城の豊里地区の小・中一貫校を一定評価しましたが、まわりとの関係で再検証の必要があります。)親達が、早期教育なるものに引き寄せられていってしまっている。その後で、子どもたちが振り落とされたり、犠牲になっていくというパターンが全国に広がっている感じがしました。

仙台の報告では、当初の市教委の学校統廃合の計画は、栗原市と同様に、大規模なものでした。それが、結果的には中学は無し、小学校も3校だけというものまで市民の力で押し返してしまい、一応の大きな成果を上げています。その3校も「地域との合意が前提」ですから強行は出来ません。その中の1校の貝森小の保護者の方が来ていて「アンケートで4分の3は反対ですから」といっていました。確かに、3校以外の学校についても、今後5年間の状況を見て検討するということですので問題は残っていますし、3校についても「学区の線引きなどで兵糧攻めをされているようだ。」(前述の貝森小の保護者)ということで楽観はできません。しかし、分科会でも山本氏が「仙台の成果は、最近では、全国で唯二ぐらいの貴重なもの」と高い評価をしていました。仙台のそれまでの市民の運動については、私はよく存じませんが、かつて学校選択制が市教委から提起された時も跳ね返したということでした。東京の例のように選択制を敷かれてしまうと、後でも統廃合が重なってくると、極めて運動が困難になります。それにかつて市民の力で選択制を跳ね返し、今回もその経験が生きている、さらにネットワークができたことも今後の運動を展開していく上で重要なものになっていきます。

仙台でも栗原でも、行政は「市の財政問題ではない」と強調し続けています。「全く無い、関係は無い」とまでは言っていません。質問で私は、「この財政問題にどう切り込んでいったらよいのか?」と出しました。義務教育費国庫負担金の負担割合の問題や国による地方交付税の削減による地方自治体へのしわ寄せが学校統廃合の裏にあるのに、この問題では攻め切れていません。(この問題では、学校図書館の図書費流用問題も関係してくる。)学校統廃合でどれだけの学校施設の維持・整備にかかる費用が浮くのか、学校統廃合でどれだけの教職員の人件費が浮くのかをきちんと数量的に明らかにする必要があると思いました。

また、東京の報告の後で、賀屋氏が言っていましたが、「学校選択の自由化」とか小・中一貫校、中・校一貫校の問題は、日本の「大学進学の問題をどうするのか」ということを抜きにしては解決しないことも明らかです。

最後に、山本氏が都留文科大学の田中先生の言っていることを含めて次のように言っていました。「「学校統合」の対象となった少数の子どもたちの受けるダメージはかなりのもの」「自分のルーツが無くなれば、デラシネ=根無し草になってしまう。」「子どもたちにとって学校統廃合がどんな経験なのかよく考えることが大事。子どもは、地域生活の濃密な体験を通じて、内部に「原風景」を形成している。これがあるからこそ、広く社会や、世界に向かって羽ばたける。子どもにとっての「原風景」を大事して欲しい。」と。

また、山本氏の東久留米市の話も印象的でした。-「東久留米市での統廃合で運動・関係が分断されて、統合された滝山小で子どもたちが荒れるのですが4年生だけが荒れなかった。」「親達が反対運動をしていて、それを子どもたちが見ている。」「子どもと一緒に乗り越えようとする、子どもに寄り添う大人の存在は大きい」と。さらに、栗原の高清水地区のチラシ「だまっていれば、中学校が無くなります」が高く評価されました。そう、黙っていたのではダメなのです。たとえ、反対運動をして敗北したとしても、何もせず、黙っているはより良いのです。それは、決して無駄にはならず、必ず何かの変化を起こすはずです。私は、そのようにこの分科会を終えて思えてきました。

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