触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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NHKクローズアップ現代「放射能から子どもを守りたい  ~母親たちのネットワーク~」を見て

<TV>            2011.9.27

NHKクローズアップ現代
「放射能から子どもを守りたい  ~母親たちのネットワーク~」を見て

<番組の内容>(9月26日放送)

東京電力福島第一原発の事故から半年あまり。食品、土壌などから次々に放射性物質が検出される中、「子供を放射能から守りたい」と、30~40代のごく普通の母親達がネットワークでつながり活動している。今や200余の団体、賛同者は1600人以上に発展。行政が測らない食品を独自に測定。秋の運動会シーズンを前に、近隣市町村の母親達が連携して行政に働きかけ、校庭の除染を実現させる。更に、国が被ばくの上限として、内部・外部合わせて「生涯100ミリシーベルト」という基準を設けようとする中、母親達は、「子供だけは特別の配慮を」と公聴会に駆けつけ、国内だけでなく海外の専門家にも直接意見を聞き、政府の意見募集に積極的に投稿、今月末には厚労相にも直接訴える。立ち上がった母親達に密着。どうしたら子供を放射能から守れるか考える。出演者:浦島 充佳さん(東京慈恵会医科大学准教授)  (NHKホームページより)

<内容の補足と…私の感想>

 番組では、まず、ネットワークを生かして市に働きかけ、校庭の除染や土の埋め立てを行った茨城県守谷市の例が紹介されていました。市民団体「放射能汚染から子どもを守ろう@守谷」のお母さんたちが9月17日の運動会を前にして、校庭の除染を守谷市に要望。市側は、処分場所の確保が困難を理由に拒否。そこで、お母さんたちは「上から土を被せて欲しい」提案。それを市側はそれを採用、実施。すると、0.4マイククロシーベルト/毎時が、0.14マイククロシーベルト/毎時に減少。今後、守谷市は学校等11施設について4800万円かけて同様に実施する。としていました。TVでは、紹介されていませんでしたが、この後9月21日に市長と対談し、学校給食で使う食材全品の放射線量測定などについて要望したことを新聞記事で確認しました。

次に、北海道から沖縄まで170団体余でつくる、「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」が、9月21日に小宮山洋子厚生労働相と面談し、食品に含まれる放射性物質について子どもと妊婦のための内部被曝基準を設けてほしいと要望している様子が紹介されました。小宮山氏が「みなさんのお気持ちはよく分かります」と述べたということでした。

番組のゲスト、浦島 充佳さん(慈恵医科大学 准教授)は、「キーワードは『インターネット・アクション・協力』」と述べていました。一人ひとりの陳情・要望ではなかなか相手にされなくても、何千人のネットワークという背景があれば、行政も動かざるを得なくなりなることだということです。
最初の守谷市の例。ここ栗原市でもつい最近、小学校陸上大会が市内で最も放射線量の高止まりしている地域(高濃度汚染地域)の一つで9月14日に行われました。その様子、それへの取り組みを9月14日に記事にしました。ここは、守谷市で問題となったのと同じ0.4マイククロシーベルト/毎時を常に超えているのです。会場の1マイククロシーベルト/毎時のホットスポット数か所は、市に大会直前に処理してもらいましたが、大会自体は実施されました。

その後、私は、この間の市の学校等の測定(6月9日~9月15日)すべてを施設ごとに整理してみました。市の測定は、当初、全施設75カ所(各1地点)だったのが19カ所に絞られました。それを私たちの自主測定で全施設72カ所に復活させるだけでなく、施設ごとに必要と思われる地点もと拡大させました。その結果、1回の測定での調査カ所は、施設で2~11地点とばらつきがありますが、総計では、約400地点へとなっています。(全体では2500以上か?)それらを改めて施設ごとに整理し直し、その施設ごとの分析を行うと同時に、市内72カ所全体の比較をしてみたのです。すると、校庭(園庭)の中心での数値が、①常に0.4~0.5レベルの最優先に除染すべき施設が5カ所。②0.3~0.4レベルの次に必ず除染すべき施設が16カ所。③中心は、0.3以下(0.25ほど)だが、多数のホットスポットや隣接施設が②の施設でここも除染すべきと思われるのが2カ所。合計で23カ所の校庭(園庭)要除染施設がありました。この0.3~0.4超レベルの校庭(園庭)の除染はすでに市に要望しているものです。

市内72カ所全体の比較では、私たちが7月末に発表した「栗原市放射能ポットスポットマップ」に整合する結果が出ています。そこでは、高濃度(0.3~0.5)中濃度(0.2~0.29)低濃度(0.1~0.19)に分けました。この23カ所すべてが高濃度の地域なのです。私たちの7月の2回の自主測定で局所的なポットスポットを発見しましたが、それを受けて拡大していったその後の市の測定では、多数の1マイククロシーベルト/毎時のホットスポットが見つかり、その処理は進んできています。それが見つかったのは、高濃度地域では、かなり多数。中濃度地域でもいくつも。低濃度地域すら僅かですが出ました。これはこれとして、各施設で量的にもそれほど大量ではなく、きちんと処理すれば済みます。実際に市の努力でほとんど済んでいます。

しかし、この1マイククロシーベルト/毎時のホットスポット対策以外が、栗原市では、まで全く進んでいないのです。空間の安全基準を1マイククロシーベルト/毎時以下にする動きは、今、全国各地に広がって来ています。首都圏(0.19~0.3)が多いのですが、福島でも、いわき市(0.3)に。そして、秋田県が、0.19に。しかも子どもが過ごす学校などついては、0.12とより厳しい基準にするということで、そのための校庭などの除染が今後、各地で進んでいきます。そこまでいかないホットスポット対策でも、横浜市では、0.59で処理を始めています。栗原市では、低濃度地域でも結構、詳しく調べている施設もあります。そうしたところでも見落としがないようにすることは大切なことですし、逆に、元々は、この栗原市での汚染はこの程度だったのかと(それでも今回、上乗せされていますが…)思われる0.1マイククロシーベルト/毎時にも満たない学校等も南部の地域に多いのです。栗原市は、6年前に10カ町村が合併したのですが、その半分、南東部の旧5町が、低濃度なのです。北西部の残り旧5町村が中濃度・高濃度なのです。0.1以下と0.3~0.4超。その開きは、3~4倍なのです。同じ栗原市なのに子どもたちが、毎日運動し、遊ぶ学校等の環境にこれほどまでの違いがあっていいのでしょうか。こうした危険な状況は一刻も早く、私たち大人の力で何とかしなければなりません。少なくとも、すべての学校等で0.19以下に。

ただ、この守谷市のやり方で良いのかは、よく検討する必要があります。上に土を被せるのは、長期的に見てどうなのか、それより9月14日に市が講演会に講師に呼んだ石井慶造氏の汚染土を凝縮させる除染の方が放射性物質の総量対策としては有効に思われます。(ただ、200シーベルト論者の彼を市のアドバイザーにすることは避けるべきです。)

学校給食については、これは、その地域の放射線の線量レベルとは全く別で、栗原市の全ての子どもたちが対象です。子どもにとっての内部被曝の危険性は、空間において、外部から吸気で入ってくるよりも、食物からの方が大きいようです。こちらも、今、早急に対応するよう、栗原市に働きかけています。

しかし、この放送を見て、もう一つ、私たちの運動の弱点が分かりました。「母親たちのネットワーク」とあるようにその主力が母親、それも小さな子どもを持つ母親です。今の「ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会」は、役員全員、男性。(団塊世代中心)会員にようやく女性も。この間ようやく、栗原母親連絡会との連携が進んでいますが、こちらも団塊世代中心です。原発・放射能問題での講演会は7月31日に70人、8月26日(栗駒地区)に30人。それにようやく若いお父さんたちが参加し始めています。この会は、学校統廃合問題を契機に2年前に結成しました。当初より現役世代の参加を働きかけてきましたが、これもまだ不十分です。今回は、それよりさらに若い世代に、ウイングを広げていかなければなりません。自分たちのちょうど子どもたちの年齢にあたる層です。それは、参加をというより、連携のようなものだと思います。

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「内部被曝の真実」を読んで

<BOOKS> (44)            2011.9.21

「内部被曝の真実」を読んでーこれが決定打となると確信!

出版社: 幻冬舎 (2011/9/8)   

<内容紹介>

 「私は国に満身の怒りを表明します」  「7万人が自宅を離れてさまよっているときに、国会は一体、何をやっているのですか!」福島原発事故では、広島原爆20個分以上の放射性物質が放出された。国が「測定と除染」に今すぐ全力を挙げなければ、子どもと妊婦を守れない。 YouTubeで100万回以上も再生されて大きな反響を呼んだ、正義の科学者による魂の国会スピーチを完全採録。 さらに■国会でのスピーチに寄せられた疑問・批判への回答■ヨウ素被曝と子どもの甲状腺がんの因果関係の立証には長い年月がかかることを、今から2年前にすでに警告していた論考■国会出席を決断するにいたった南相馬でのある1日について書き下ろした「私はなぜ国会へ行ったか」を加えての緊急出版!

<著者について>

児玉 龍彦

1953年、東京都生まれ。77年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部助手、マサチューセッツ工科大学研究員などを経て、東京大学先端科学技術研究センター教授(システム生物医学)。2011年4月より東京大学アイソトープ総合センター長を併任。
著書に『新興衰退国ニッポン』(金子勝氏との共著、講談社)、『逆システム学』(金子勝氏との共著、岩波新書)、『システム生物医学入門』(仁科博道氏との共著、羊土社)等がある。

<目次>

第1部 7・27衆議院厚生労働委員会・全発言(私は国に満身の怒りを表明します。 子どもと妊婦を被曝から守れ―質疑応答)
第2部 疑問と批判に答える。
第3部 チェルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ―エビデンス探索20年の歴史と教訓
第4部 “チェルノブイリ膀胱炎”―長期のセシウム137低線量被曝の危険性
おわりに 私はなぜ国会に行ったか
付録 国会配布資料

<内容からの要約メモ>

第1部 7・27衆議院厚生労働委員会・全発言

1 私は国に満身の怒りを表明します

広島原爆20個分以上の放射性物質が撒き散らされた

 3月15日午前9時、東海村で5マイクロシーベルト/毎時の線量を検出、文科省に第10条通報。その後東京で0.5。3月21日にも雨が降り0.2。これが今日までに至る高線量の原因に。この時、枝野官房長官が、「さしあたり健康にあまり影響がない」と。私は実際にこれは大変なことになると。

 福島原発事故の総量は、熱量で、広島原爆の29.6個分、ウラン換算では20個分のものが漏出。しかも、1年経っても、原発からの放射線汚染物は10分の1程度にしか減らない。(原爆は1000分の1に)つまりチェルノブイリ事故と同様、総量で原爆数十個分に相当する量が漏出し、原爆汚染よりずっと大量の残存物を放出した。(考える前提)

通達1枚で農家に情報が伝わるわけがない

 セシウムがどこでどう落ちるか、その時の天候、また例えばその物質が水を吸い上げたかどうかといったことで決まる。農水省が通達を出した3月19日には、現地は、食糧も水もガソリンも尽きようとしていた。そのような中で通達1枚を出しても誰も見ることはできないし、知ることができません。稲わらがそのような危険な状態にあることには、全く農家には認識されていなかった。

もっと高性能の測定器があるのになぜ政府はお金を使わないのか

 何をすべきかーまず汚染地で徹底的な測定、それから食品検査。これはゲルマニウムカウンターでななしに、もっと高性能の、半導体を用いたイメージングベース(放射線を画像として写せる)が、はるかにたくさん開発されている。なぜ政府はそれを全面的に応用して機械を作るためにお金を使わないのか

内部被曝からがんはどのように起こるのか

 内部被曝の一番大きな問題はがん。放射線がDNAの切断を行うため起きます。DNAは2本の鎖から成る二重らせんで、二重のときは非常に安定的で切れにくい。しかし細胞分裂するときは、二重らせんはほどけて1本ずつになって、それぞれが2倍に増えて、鎖が4本に。この鎖が1本になる過程のところが、切れやすく、妊婦の胎児、幼い子どもなど、成長期の増殖の盛んな細胞に対しては、放射線障害は非常に危険性を持つ。さらに大人においても、放射性物質を与えると、増殖分裂の盛んな細胞である、髪の毛に影響、貧血に、腸管上皮に影響します。

被曝からがん発症まで20~30年―トロトラスト肝障害の場合

 実際には一つの遺伝子の異変ではがんは起こらない。最初の放射線のヒット後、もう1個の別の要因が重なって、がんへの変異が起きる。

 内部被曝というのは、何ミリシーベルトか、というのはまったく意味がない。ヨウ素131は甲状腺に集まる。トロトラストは肝臓に集まる。セシウムは尿管上皮、膀胱に集まる。これらの体内の集積点をみなければ、いくらホールボディカウンターで全身をスキャンしても意味がない。

 トロトラストの場合は、第一の段階でP53の遺伝子がやられ、それに続く第二、第三の変異が起こるまでに20年から30年かかり、そこで肝臓がんや白血病が起こる。

疫学的に証明されるのを待っていたら遅すぎる

 1991年ウクライナの学者がチェルノブイリの子どもに甲状腺がんが多発していることを最初に報告。その時、日本とアメリカの研究者は「ネイチャー」に、1986年以前のデータがなく統計的に有意だといえないから原発事故との因果関係は分からないと投稿。統計的に有意だと分かったのは20年後で、86年から起こったピークが消えたために、過去のデータがなくとも因果関係があるということのエビデンス(証拠)になった。このように疫学証明は非常に難しく、全部の症例が終わるまで、だいたい証明できない。

母乳からのセシウム検出に愕然とした理由

 子どもを守るという観点からは、疫学的な考えとまったく違った方法が求められる。日本バイオアッセイ研究センター福島昭治所長による前がん状態のメカニズムの解明が進んでいる。セシウムは尿中に出るので膀胱の細胞に蓄積する。ウクライナなどで10万人当たりの膀胱がんが62%増加。福島博士らは500人の組織を検討し。6ベクレル/㍑が15年で、P53変異と増殖性膀胱炎を前がん状態と証明した。長期の低線量被曝でP38とNF-kBというシグナルが活性化し障害を生む。

 この濃度と同程度の濃度―福島の7名の母親の母乳からセシウム(2~13ベクレル/㍑)が、検出されていることが報告され、愕然とした。

子どもがわざわざ高線量の地域に通わされている

 南相馬市の緊急時避難準備区域の20~30㌔圏ではバスを仕立てて、1700人の子どもが区域外の飯館村に近い方の学校に通っている。(毎日100万円かけて)実際には学校の多くが海側にあり、7割の学校では比較的線量が低く、わざわざ高線量の地域に通わされている。障害となってるのは、強制避難でないと補償しないということ。補償問題と線引きの問題と、子どもの問題とは直ちに分けてください。

緊急避難的除染と恒久的除染をはっきり分けるべき

 緊急避難的除染―滑り台の下、コケが生えているような雨樋の下など。恒久的除染―建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていると時間、コストとも膨大に。これをはっきり分けて取り組みを。

民間のノウハウを結集し、国策としての除染を(四つの緊急提案)

①国策として、食品、土壌、水を測定していく。最新鋭のイメージングなどを用いた機器を投入し、流れ作業に。

②緊急に子供の被曝を減少させるために、新しい法律の制定。

③国策としての汚染土壌を除去する技術に、民間の力を結集し、ただちに現地に除染研究センターを。

④除染にかかる何十兆円の国費。世界最高水準で除染を行う準備を即刻開始して下さい。

2 子どもと妊婦を被曝から守れ―質疑応答

「放射線は健康にいい」は本当か

 放射線などを当てると短期的には様々な効果をもたらし、それを健康にいい悪いという議論は様々ある。しかし、こういう状態を長期に続けると慢性炎症となり、これはがんの前提の条件になったり、様々な病気の原因となる。

国が線量について議論しても意味がない

 線量の問題、内部被曝の問題、様々な考えがある中で、-どこの線量が安全かという議論と、国の政治的な関わり方を分けていただきたい。

 考えていただきたいのは、どうしたら国民の健康を守れるのかということです。国民の健康を守るためにどういうことができるかというとき、まずセシウム137という物質は、自然界には1945年以前には存在しないものです。原爆と原発から生まれて、それが1960年代の初め水爆実験によってピークになったもの。その時猿橋勝子さんが、海水のセシウム濃度が100倍になっていることを微量線量計で確認し、そのデータを持ってアメリカへ行き公開実験をして、これが大気圏内の核実験禁止の大きな学問的根拠となりました。

 その後セシウムはずっと減って来ていたのが、今またそれをはるかに倍する量に上がろうとしている。線量の議論の問題を言うよりも、セシウム137が膨大に撒かれて散らばっている。しかもそれが広島原爆の20倍の量撒かれているという事態に対して、国土を守る立場から(国会では)ぜひ積極的な対応をしていただきたい。

行政が全力で測定し除染するのが、住民の一番の安心

 住民が戻る気になるのは、行政などが一生懸命測定し、除染している地域。測定も除染もなければ「安全だ」「不安だ」と言われても、信頼できるところがありません。「この数値が安全」「この数値がどう」ということではなしに、行政が仕組みを作って一生懸命測定をして、その測定に最新鋭の機械を投じて、じょせんに最新鋭の技術をもって、全力でやっている自治体が、一番戻るのに安心です。

全国の産地で緊急に食物の測定を

 入口の方で基準を決めるのは、非常に厳しい。出てきた農産物をきちんとみるという仕組みを徹底的に作ること。流れ作業で農産物の放射線がチェックする仕組みを全国の産地に緊急に整備していかないと、今回の稲わらのような、想定外の場所での濃縮事件というのは、自然界では山ほど起こります。

1回来て帰るだけの支援では問題をひどくするだけ

 信頼感というのは言葉で説明を聞いて生まれるものではない。本当に持続的にやっていこうとしたら、一緒に測って一緒に考えて除染していく。「何シーベルトだったら安全ですか?」という議論が現実味がないと思うのは、個別の場所で抱える問題が違う。「線量が高かいところがあったら必ず刈り取っていきますよ」と、「測って一緒にやっていきますよ」と「不安があったら相談に乗りますよ」と、「農産物があったら最新鋭の科学機器を集めて、最高の検査メーカーが来てやりますよ」という体制がない限り、安心できないというのが当たり前ではないか。

放射線取扱者として30年厳守してきた基準が反故にされている

 放射線取扱者として30年厳守してきた基準―「妊娠中の女子については、内部被曝を1ミリシーベルト以下にする」などが福島原発の事故で広島原爆の20個分の放射線が撒き散らされた途端に、すべて反故にされている。
 安全に関しては、いったん基準を決めたら、機器になったからそれを変えていくという格好ではダメ。基準を変えるのではなく、今は、今年は、できないかもしれないけれど、来年までにその基準に持っていく、再来年までにはこうする、ということでなければ住民は安心できるわけがありません。

多量の農産物を簡単に検査する仕組みは今すぐ可能

 イメージングの技術を基礎にして、半導体を集めたようなもののセンターを作って、流れ作業的にたくさん測定できるようにして、画像上で、放射線量が高いものをハネていく。これは既存の技術でできるもので、そういうことを全力を挙げてやっていただきたい。

今私たちが行っている除染活動はすべて違法行為

 高い線量のものが少量あるということに対応した法律体系はあるが、低い線量のものが膨大にあり、それをどう除染していくかということに関する法律はほとんどない。東大アイソトープセンターのしているのは全部違法行為です。法律を一刻も早く変えて、測定と除染とにぜひ立ち上がっていただきたい。

避難の問題と補償の問題を分けて考えるべき

 実際にいかに子どもの被曝を減らしたり、地域を復興していくかという問題が一つ。もう一つは、今は、強制避難だから補償が出る。でも避難区域が解除されたら補償が出なくなってしまう。そこで住民の間で意見の違いが生まれている。避難の問題と補償の問題を分けていただきたい。

第2部 疑問と批判に答える

データが足りないときこそ予測が大事

 政府は、必要なデータが全部そろっていなかったから、予測結果を発表しなかったといっているが、データが足りない中で、危険など、「一番可能性が高いのはこういうことだ」という結果を出すのが大事。データが全部そろっていたら、それは実測です。

線量を議論しても意味がないのはなぜか

 放射線の取り扱いでは、線量は核種ごとに管理します。ヨウ素は甲状腺に、セシウムでは、膀胱が問題になっている。甲状腺とか肝臓とか膀胱とか、それぞれを調べないと意味がありません。
 
 放射線障害でがんが起こるメカニズムは、― 放射線を一度にたくさん当てると、大量の放射線がDNAをズタズタにするから細胞が死にます。低線量の放射線は、DNAに変異を与えます。DNAが2本の時は比較的安定しており、細胞分裂のときには、これが1本づつに分かれ、それぞれが2本に分裂し、合計4本になります。この1本になった時に、放射線の感受性が高くなります。

 大人に放射線を当てた時も、髪の毛が抜ける、骨髄の機能が低下し貧血になる、腸管の上皮細胞が傷ついて下痢になるとか、細胞分裂の盛んなところに、最初に影響が出る。

 低い線量が当たってからがんになるまでに非常に時間がかかる。それは、遺伝子には、DNAが傷つかないように、P53遺伝子のような、直すための遺伝子がたくさんあります。だから、普通の遺伝子が1個やられても、その機能で修復されます。ところが、最初にP53遺伝子などがやられると、直す機能が壊れてしまいます。

 普通の人の場合、遺伝子が1回壊されただけでは簡単にがんにならない。第1段階の異変が入って、第2段階の異変が入る。60年、70年80年と、多段階の異変を経るにつれて、がんが増えてきます。それが、最初にDNAを守る遺伝子に変異が起きていると、10~30年経って第2段階目の変異が起こると、すぐにがんになってしまう。

甲状腺の場合は、汚染された牛乳などをたくさん飲むと、最初にRET遺伝子がやれられます。RET遺伝子が1回やられただけでは発がんせず、増殖するだけ。その後もう1個がやられると、がんになります。

 今すごく残っているのはセシウム137です。チェルノブイリでは、膀胱を調べ、尿中にセシウムが6ベクレル/㍑ぐらい出ている状態が15年ほど続いていると、みんな膀胱炎になり、がんが増えていっています。(6割増に)原発事故による放射性物質の影響が甲状腺に続いて、膀胱の組織でも見られたということを、心配しています。ぜひ今から一生懸命に除染をしなければならないと思うわけです。

 低線量の放射性物質の場合、問題は外部被曝ではなく内部被曝です。食事とか何かで入ってくるのが問題です。今回はすごい量の放射性物質が撒かれてしまっているので、いろいろなところで濃縮が起こります。雨樋の下、滑り台の下…煮詰まったように濃くなります。同じことが稲わらでも起きました。稲わらが雨水を吸っては乾いて、すごい量のセシウムが溜まってしまった。東京では最初に水道水に出て、次はコウナゴとかに出て、牛に出て、今後も、いろいろな食べ物に次々と出てきます。だから内部被曝を減らすためには、地域にある総量を減らさないと、非常に大変なことになるわけです。

危険を危険だとはっきり言うのが専門家

 危険というものに対して、専門家がどう対処するかという問題。物事には「属性」と「本質」があり、専門家がすべきなのは本質論です。専門家が本質論を言うことで、初めて専門家は信頼されるし、事態が回避される。今、人々がセシウムの危険性を知れば、その危険性を回避するのに、なんとしてでもセシウムの除去をみんなで頑張ってやろうとか、どんなに大変でも食品の検査をやっていこうとかいう風になっていく。

 健康被害の問題について、こういう可能性があるということをまずきちんと言うのが、医学の専門家の責任。「最初からこれを言ったらこっちがダメだろうから」と折り合いをつけてしまったら、専門家ではなく政治家です。

 危険あことがったら、これは本当に危険だから、苦労があっても何でもやっていこうと国民に伝えるのが専門家です。みんなが専門家に聞きたいのは、政治家みたいに折り合いをつけることではない。

 今までの原子力学会、原子力政策の失敗は、専門家が専門家の矜持を捨てたことにある。国民に本当のことを言う前に政治家に、経済人になってしまった。これの反省なくしては、東大も、日本の科学者の再生もあり得ない。

低線量セシウム被曝の危険性は国際的に認められてものなのか

 チェルノブイリの問題では、最初1991年くらいにウクライナやベラルーシの医師が低線量被曝で甲状腺がんが起こったと言い出したが、ロシアの学者などの反対でなかなか認められなかった。笹川財団がお金を出して調査しても1986年以前のデータがなく統計的に有意だといえないと指摘された。その後いろいろな経緯があって、チェルノブイリ事故から20年経って、やっと子どもの甲状腺がんがWHOで認知された。世界の学者の共通の土俵ができたのは、2005年になってからのこと。でもこのとき、最初にRET遺伝子が傷つけられた子どもたちはみんなもう発症してしまっていた。

 予測の科学には、レトロスペクティブな予測(統計学とか疫学的な予測)と、プロスペクティブな予測(コンピューターを使ったシミュレーション)があります。統計学や疫学は、過去の大量のデータをまとめて、新しいメカニズムを探すときに使われます。これに対して、今知られているメカニズムで未来を予測するときには、少ないパラメーターで厳密に計算しないといけない。これがシミュレーションの科学で、今はこの領域がものすごく進歩してきています。

閾値論もホルミシス論もおかしい

 福島昭治先生たちが500例もの症例を集めて、6つの論文になるまで調べた。その熱意と成果は、世界に非常に貴重なもの。低線量セシウム被曝の危険性についても、疫学的・統計学的に論文で検証され世界に認められたりするのは、ずっと後のことです。でもその時には、福島先生たちの研究に匹敵するだけの症例を集められる人はもういなくなってしまう。福島先生たちの研究でもう一つ大事なのは、P38遺伝子とかNF-kBというシグナル分子が、膀胱細胞などで活性化し障害を生むという」ことです。

 放射線障害で「100ミリシーベルト閾値論」が言われています。―年間被曝量100ミリシーベルトまでは、生体は放射線に反応しない、放射線の影響はないという説です。もうひとつ、ホルミシス論というのがあって、ある線量以下だと、細胞は反応するのだけど、いい影響しか出ないという説です。どちらも間違っています。

 細胞に低線量の放射線が当たると、P38のようなシグナル分子が活性化します。ホルミシス論はそれを論拠にしています。膀胱の上皮でP38が活性化されると、最初は細胞が増えたりします。それで元気になった、ホルミシス効果ではないかという研究者がいますが、増殖が長期に続けば腫瘍です。そのような増殖性病変が15年も続くと、それまでとは違った悪い変化が出てくるということを、福島先生たちは指摘されたわけです。

 一つの未来を予測するとき、メカニズムで予測しなくてはいけない。福島先生たちの20年にわたるウクライナとベラルーシの医師たちと協力して500例の症例を集めたのは、未来を予測するためのデータを私たちに示そうとされたからです。しかしこれに対して、それは関連性があるだけで因果関係ではない、まだ直接的な証明ではない、と言われるのです。医学的にはそのような議論はいくらでも続きます。しかしそれはちょっと違う。現実に、幼稚園から学校から田んぼから、至るところにセシウムが大量に散ってしまっている。でもまだ一過性の飛散で、表面にとどまっている。だったら、絶望的とか何とか言う前に、思い切ってセシウムを減らしていく。それが、今求められている。今できることをやるというのが、私たち医学者に課せられた使命です。

セシウムによる長期障害はヨウ素以上に難しい問題

 セシウムの内部被曝といっても、よく分かっていないことが多い。体の中にはいろいろ複雑な仕組みがあるので、簡単に予測していうのはなかなか難しい。セシウムの長期障害は、これから医学上の研究をして行かなくてはいけない問題です。甲状腺でも、世界中の学者が集まっても、ヨウ素の内部被曝と子どもの甲状腺がんの因果関係が認められるまでには20年もかかりました。その間に、発症はみんな終わってしまった。セシウムの場合は、成人ですからバラツキも多いし、もっと難しい問題になると思っています。

第3部 チェルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ―エビデンス探索20年の歴史と教訓

第3部の要旨 

①安易な”エビデンス論”への疑問。―アメリカ型の多数例を集めてメガスタディを行ってもエビデンスとはならず、その地域における疾患の全体を長年かけて網羅的に把握することのみがコンセンサスを得るエビデンス発見法であった。②ある原因での疾患の発症は特定の時間経過でのみ現れ、すぐ消えていくため、注意深い観察が必要。長い時間の経過が関わり、対策の求められているその瞬間には「エビデンスはない」ということがしばしばおこる。-(チェルノブイリの健康被害研究に関わった長瀧重信長崎大名誉教授)

 逆システム学の見方でいえば「統計より症例報告」という法則が重要。多数例の軽微な変化より極端なしかし端的な特徴を持つ少数例を現場でつかむことが、同時代の患者のために役立つ情報をもたらす可能性が強い。エビデンスがないということは、証明不能を語るだけで、因果関係の否定ではない。エビデンスを確立するには多数例の長い時間が必要であるため、短期においてはある地域に従来見られない特殊な患者が現れたときに即時に対応することが重要。例えばベラルーシに1991年、肺移転を伴う小児の甲状腺乳頭がんが次々見られた。その患者からRETプロトオンコジーンの変質が見つかったということが、チェルノブイリ事故と甲状腺がんをつなぐ”同時性“を持つエビデンスであり、甲状腺発がんのダイナニズムを教えてくれるサインだった。

チェルノブイリ原発事故による健康被害の実態
小児甲状腺がんの増加の原因をめぐる論争
因果関係のエビデンスが得られるのは20年後
エビデンスという名の迷路―増えたのは甲状腺がんだけなのか
極端な症例こそが最も重要な警報


第4部 “チェルノブイリ膀胱炎”―長期のセシウム137低線量被曝の危険性

第四部の要旨

 セシウム137は、核実験以前には地球上に存在しなかった。日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長は、チェルノブイリ現地の研究者と,膀胱がんの100万人当たりの発症が、86年26人から01年43人に増加していることを発表し、その前がん状態として、増殖性の“チェルノブイリ膀胱炎”が広範に引き起こされていることを報告。前立腺肥大症で手術を受けて際に切除された164人の膀胱病理像を、高いセシウム線量、中間的線量、非汚染地域の住民の3群に分けて検討して、そのメカニズムを解明し、これら3群のヒトの尿中のセシウム137は、それぞれ6.47.1.27そして0.29ベクレル/㍑で、福島県内(30㌔以遠の福島、郡山など)の母乳と同じレベルであり、長期被曝が前がん状態をつくり出すという報告は重要。

 今回のセシウム137汚染は一過性のものであり、除染でかなり減らせる。食品汚染も一過性にピークを迎える。検出体制を整備し、セシウム137で汚染された食品の摂取を避けることが緊急の課題。作業員、高汚染地区に住む住民には、セシウム137を吸着するペクチンなどの予防投与の検討が必要。

 われわれは子孫への責務を負っている。核実験による低レベル放射能を検出しアメリカでの公開実験を通じて核実験禁止の流れを生み出した、猿橋勝子博士に学ぶ必要がある。人間が生み出したものは、人間の努力で除去できないわけはない。現在の少量の高い線量の放射性物質を想定している法体系を、低線量のものが膨大に放出された福島原発事故に対応できるように変え、わが国の医学界も総力を挙げ取り組む体制を整える必要がある。また損害賠償において被害者立証はいわば不可能であり、加害者(東電、政府)による被害者全面外相が必須。

深刻化するセシウム137の汚染
1940年代以前には地球に存在しなかったセシウム137
前がん状態“チェルノブイリ膀胱炎”の発見
チェルノブイリ住民に匹敵する福島の母乳のセシウム汚染
子どもたちの接触・吸入を防ぐために今すぐ除染を
現行法では低線量・膨大な放射性物質を処理できない
被災者の立証は不可能である―東電、政府の責任
成層圏内の核実験禁止に貢献した猿橋博士の志を受け継いで


おわりに 私はなぜ国会に行ったか

委員会出席への依頼、そしてためらい

 7月19日に27日の厚生労働委員会に参考人として出席するよう依頼を受ける。(26日までに資料をと)考える時間は1週間もない。その短い時間に、国の最高機関で話す準備ができるかどうか心配だった。

大津波は本当に「想定外」だったのか

 この大津波は想定外であったと言われるが、津波についての本質を理解する専門家はそうでないと言う。専門家の仕事とは、「一見このように見えるが、実はこうだ」ということを予測するところにある。さらに専門家とは、歴史上起こった津波の大きさや、世界で起こっている津波の大きさを知っていることが求められる。普通の人が専門家に聞き、学びたいのは、「経験」の枠を超える「歴史」からの知識である。

専門家とは、歴史と世界を知り知恵を授ける人
牛肉からセシウム検出の衝撃―7月9日南相馬にて
稲わら汚染のようなセシウム濃縮はいたるところで起こりうる
事故の本質と対策を全知全能を傾けて語る決意


四つの提言―私が伝えたかったこと

 福島原発事故からの放射能汚染の本質は、広島原爆の20個分以上の膨大な放射性物質が飛散したことにある。平均的には低い濃度でも、さまざまなところで濃縮されて被害が起こる。農産物も人体も、牛も同じ。放射能汚染は、調べてみない限り、どこで何が汚染されているか分からない。そこで広範に徹底的に調べ、除染していかなくてはいけない。

①最新の技術を駆使した食品検査を
②住宅の汚染を検査する“すぐやる課”を
③自分たちで緊急的除染をするときは土ぼこりに厳重注意
④行政による長期的な除染は住民の同意のもとに

人が汚したものを人がきれいにできないわけがない

 福島原発の除染については、すべてはこれから。我々は、祖国の土壌という、先祖から預かり子どもに伝えるかけがえのない財産を汚染してしまった。しかし、人が汚したものを人がきれいにできないわけがない。そのために全力を尽くすのが我々科学者の責任。

付録 国会配布資料

<私の感想>

 私は、この間8月26日の原発・放射能問題学習会で講師をした時の反省―「放射線低線量による内部被曝の問題」を良く説明できなかった。-から、菅谷氏、鎌田氏、肥田氏といういずれも医師の書いた著書の紹介をしてきました。それぞれいろいろ学ぶところが多い著作で、かなり自分なりには核心には近づきつつあるとは思っていました。しかし、それでも今一つ何か足りない、決定打に至らないと感じていました。三人目の肥田氏の(共著ですが)「内部被曝の脅威」は、6年前に書かれて物でしたが、フクシマ以後の今日的に読み返す必要が高いものだと思いました。私自身の千葉での大気汚染公害訴訟に関わった経験もあって、そこでの私の感想「科学者・学者は、ただ専門家であるだけではだめなのです。汚染や被害の事実を具体的に押え、命を守る、被害者の立場に立つ見識を持っていなければならないのです。そうした被害者の立場に立つことができる科学者・学者なのか、人間なのかが問われてきます。また、そうした中でこそ、科学・学問も鍛えられ、人類(人間)のために発展するのだと思っています。」がそのままこの本書における児玉氏に当てはまると確信しました。7月27日の衆議院厚生労働委員会での様子は、初めは新聞報道で知りました。その後ネットでその発言を確認しました。医師としての良心に基づく大変強い責任感を感じ感動しました。

 その後も8月15日に、菅首相(当時)に児玉氏は官邸で面会し、「現在の法制度では少量の汚染しか想定しておらず、膨大な放出には対応できない」と指摘。汚染マップ、住民主導による長期的な除染計画の策定、食品検査の充実などを提言しています。それを受けて、菅首相(当時)は、「放射能による汚染問題を総合化しなくてはいけないと」語り、総合的な対策を検討する考えを示したと報じられました。

 私は、この頃から政府は、福島原発事故発生当初の初動での大きなミスからようやく放射能汚染対策の軌道修正をし始めたように思います。私は、それで、新聞広告で本書「内部被曝の真実」が出ると直ぐに注文しました。内容は、この国会でのスピーチに加え、それに対して寄せられた疑問・批判への回答や、ヨウ素被曝と子どもの甲状腺がんの発症、セシウム137による膀胱炎(前がん状態)など低線量被曝の危険性を明らかにしています。また、因果関係の立証には長い年月がかかり、科学論争よりも汚染被害の実態の測定・調査を、まず子どもと妊婦を守るために除染と食品検査の徹底とを求めています。しかし、科学的な論点に関しても、まず、汚染の全体像(量)をとらえること、因果関係にしても従来の手法とは違った新しい捉え方、プロスペクティブな予測(コンピューターを使ったシミュレーション)を用いることが、被害発症を抑えるためには現実的だと理解できました。その意味では、当面の不毛な論争に終止符を打つべき、被害者立場―人間の命と健康を守る立場に立った全体を包み込む視点を提供しています。

 国会では、これまで多くの科学者・専門家が発言してきましたが、この児玉氏の発言(その根底には南相馬市での実践がある)ほど、各方面から最も注目され、大きな共感を呼んだものはありません。ですから、私の「内部被曝の真実」を読んでーこれが決定打となると確信!なのです。これ以後、民主党政権は、この児玉氏の発言をおおいに参考にしてきていると思います。しかし、その後、児玉氏は講演で「除染法が国民にほとんど知られないまま、八月末に衆議院と参議院を通過(成立)してしまいました。除染活動について菅首相には『これまでの原子力関係の方は一歩引いていただいて、清新でベストでブライテストな人で委員会を国会の責任で作る。そして国会にすべて報告するような透明性の高い仕組みを作ってください』と申し上げました。ところが、除染法の採決直前に『原子力安全委員会が諮問する』という五六条が国会審議抜きで突然、加えられた。野田新首相には是非、五六条を直ちに変えることをお願いしたい」と言っています。このように除染に関する専門知識を持つ人が入らず、原子力安全委員会など原発推進勢力が中心となるようでは住民主体・住民主導の除染計画は立てられません。

 「原子力ムラの外郭団体(原子力機構など)を通さないと除染費用が出ない」などといった中央主導になってしまう危険性も出てきています。

 本書で児玉氏の言っていることは、確かに”決定打“となるものと私は確信しています。しかし、それが実際に実行されるかとなると、いろいろな妨害が出てきそうです。原子力ムラの守旧派もですが、他にもいろいろありそうです。しかしこれができなければフクシマ以後は最悪になってしまい、日本の将来はありません。自分たちが暮らす地方では、自治体を、地域を、これができるように多くの人たちと協力して持っていこうと思います。でも、国では、ここは、野田首相の力量が問われてきます。




(追記:9月22日加筆)

 本の紹介に思っていた以上に時間を取られてしまい、昨夜<私の感想>を大急ぎで書いてしまいました。その後、何か抜けてしまっている気がしてきて、考えていた時、「ドイツの『バイエルン国立歌劇場』の来日参加予定だった団員約400人のうち約100人が来日を拒否」というニュースを知りました。原発事故の影響を恐れるなどして、海外からのオーケストラ公演などが中止になったり、楽団員らが来日を拒んだり、といったケースが未だに止まっていないようです。

調べてみると、ドイツは、原発事故後から現在も、日本への渡航自粛勧告を出している。駐日ドイツ大使館では、一時大阪に退避したほか、9月5日には、放射能を恐れて約10のポストが空席のままだと…ドイツのほかにも、6月には、イタリアのバレエダンサーが来日を拒否して代役を立てた。7~8月には、オーストリアやフランスのダンサー数人がキャンセルするなど、こうした例はたくさんあるようです。これらの背景には、その国が渡航を制限していることもあります。しかし、それに加えて、福島原発事故当初の日本政府の初動の失敗(メルトダウンを知っていたのに隠していた疑いがあること、海への無神経な放射性物質の放出など)や海外への説明不足が、日本への信用をなくしてしまっています。こうした海外の反応に対して、日本国内での反応の多くは、「チェルノブイリ原発事故で怖い経験をしているので、放射能アレルギーがあるのだろう」とか、玄葉外相のように、「これは、すべて風評被害だ」と言って片づけてしまっているのではないでしょうか。私は、そんな甘い認識では、これからも海外の信用は得られないと思います。

話が飛んでしまったようですが、本題に入ります。本書の冒頭で、児玉氏の言っていることー「内科の医師として、東大病院の放射線の除染などに数十年関わって…3月15日東京でも0.5マイクロシーベルト/毎時…3月21日にも雨が降り0.2マイクロシーベルト/毎時…枝野官房長官が「さしあたり健康にあまり影響がない」と。私は実際にこれは大変なことになると思いました。」ーこの後、放射線汚染物の排出総量の問題も言うのですが、まず、この汚染のレベルのとらえ方が、「どうも今の私と違うかな?」と思われたのです。本書の「放射線取扱者として30年厳守してきた基準が反故にされている」という記述のところでも、児玉氏が放射線被曝について細心の注意を払っていることが分かります。

そう、「今の私」の方が鈍感なのです。この数か月間、政府発表やマスコミを通じて大量に流されてきた「安全宣伝」の影響が、まだ、私の中にも残っているように思われました。ここ栗原は、宮城県の中でも比較的放射線濃度が高いところですが、それでも私の住む地区は低濃度です。それでも毎日のように中濃度、高濃度の地区へ出かけていっています。自主測定などでは幾度もホットスポット探しを行い、測定器の赤い警告色表示も幾度も見慣れてしまいました。私の日常の生活では、同世代以上の高齢者との接触がほとんどです。そこではどうしても鈍感になってしまうようです。8月中は、娘と2人の孫(3歳と6歳)が来ていて、さすがにこの時は、環境や、食べ物に細心の注意を払っていました。この間、学習会を開いたり、この原発・放射能問題に取り組む中で若い人たちとも接する中で、いろいろな人の考え、思いを聞いて、意見交換もしてきています。繰り返しますが、タイトルのように「内部被曝の真実」を読んでーこれが決定打となると確信!―という考え方については、私は、ここでしっかりと持つことはできたと思います。しかし、感覚がまだです。それで、これから、感覚について「今の私」を固定的にとらえるのではなくもっと柔軟に、敏感にとらえられるようにしていきたいと思っています。

最初のドイツの楽団員らの来日拒否の話(400人中100人)。これは多分、その中でも比較的若い人が多いのではないかと思っています。これは、単なるアレルギーとか風評ではなく、(それも多少はあるかも知れませんが、)多くは、彼らなりの正常な感覚、防衛策なのではないでしょうか。本当に、こうした感覚を持った(私よりも正常だと思いますが…)多分若い?海外の人たちたくさんに、喜んで、この私たちの素晴らしい日本に来てもらえるよう、日本をきれいにしていかなければなりません。(これが児玉氏の言っている総量の問題と関連してきます。)




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「内部被曝の脅威」を読んで

<BOOKS> (43)         2011.9.15

「内部被曝の脅威」を読んで

出版社: 筑摩書房 (2005/6/10) 2011.7.15(第7刷)

<著者略歴> (「BOOK著者紹介情報」より)

肥田 舜太郎

1917年広島生まれ。1944年陸軍軍医学校卒。軍医少尉として広島陸軍病院に赴任。1945年広島にて被爆。被爆者救援にあたる。全日本民医連理事、埼玉民医連会長などを歴任。全日本民医連顧問、日本被団協原爆被害者中央相談所理事長

鎌仲 ひとみ

早稲田大学卒業。カナダ国立映画製作所に渡り、米国などで活躍。1995年から日本を活動拠点とし、医療、環境問題などのノンフィクション番組を制作し、ギャラクシー賞受賞。ドキュメンタリー映画「ヒバクシャ」は様々な賞を受賞。社会派ドキュメンタリーの旗手として注目されている

<内容>(「BOOK」データベースより)

 内部被曝とは、放射性物質を体内にとりこみ、長時間にわたって身体の内側から放射線を浴びることである。恒常的に被ばくすることで遺伝子が傷つけられ、癌などを誘発するといわれている。だが、このリスクを見極める研究は少なく、人体への影響をめぐっては議論百出だ。本書では、ヒロシマでの被ばく後、六十年にわたり内部被曝の研究を続けてきた医師・肥田舜太郎と、気鋭の社会派ジャーナリスト・鎌仲ひとみが、内部被曝のメカニズムを解き明かし、その脅威の実相に迫る。「劣化ウラン弾」などの大量使用により新たな様相を帯びる「核の脅威」に斬り込んだ、警世の書。

<目次>

第1章 世界に拡がる被ばくの脅威(鎌仲)
1 被ばくの論点
2 イラクの被ばく者たち)

第2章 爆心地からもういちど考える(肥田)
1 爆心地の風景
2 内部被曝で死んでゆく人々
3 被ばく者特有の症状

第3章 内部被曝のメカニズム(肥田)
1 放射線の基礎知識
2 内部被曝の危険について
3 内部被爆の症状

第4章 被ばくは私たちに何をもたらすか(鎌仲)
1 アメリカの被ばく者たち
2 劣化ウラン弾は何をもたらすか)

第5章 被ばく体験を受け継ぐ(肥田・鎌仲)

<内容からの要約メモ>

第1章 世界に拡がる被ばくの脅威(鎌仲)

「被ばく」の論点 

 国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告は、人や社会が容認できる「被ばく」の限度すなわち「現在の知識に照らして身体的または遺伝的障害の起こる確率が無視できる」線量を超えないような線量限度を勧告している。

 日本ではICRP勧告を受けて、市民が1年間に浴びても健康上の問題はないとされる放射線の被ばく量を、年間1ミリシーベルトと設定している。この1ミリシーベルトは、これだけ浴びたからといって必ず影響が出るということではなく、これ以下に抑えて方が安全であるという予防的な数値であるとしている。加えてICRPは、微量な放射線の影響が学問的にまだ明確でないことをふまえたうえで、慎重な考え方を取ることを表明している。

 ①ICRPは、「しきい値」はないとしながら許容限度を設定していること、そして、②メカニズムの違う内部被曝と外部被爆を同等に扱い内部被曝の脅威を正当に評価しないこと、この2つの矛盾がずっと横行し続けている。

イラクの被ばく者たち

 1998年はじめてイラクに入国。WHOの報告によれば、経済制裁が直接の原因で、15歳以下の子供が60万人も死んだ。すでにイラクでの小児白血病の発症率は湾岸戦争前の4倍に。

 湾岸戦争時、米軍はクウェートから撤退するイラクの戦車隊を劣化ウラン弾で壊滅させた。当時、このことと、湾岸戦争後に生まれた子供や数十キロ離れて場所に住む子供が病気になることの関係が分からなかった。

 日本に帰り、肥田 舜太郎医師に会う。肥田氏「イラクの子供たちに起きているのは被ばく。劣化ウラン弾の微粒子が体の中で放射線を放出し、細胞の遺伝子を傷つけている。これは「いつかおまえを殺す」という徴で今の医学では治すことはできない」現在進行形で内部被曝し続けているイラクの子供と、60年前のかつての子供に起きた事態は同じ。

 内部被曝のイメージを、これまでの原爆のイメージと同等に立ち上がらせることなくして、いま世界に拡がる被ばくの脅威を本当の意味で理解することはできない。

 広島への原爆投下から60年を経て、劣化ウラン弾を使用。イラク、アフガニスタン、ボスニア、コソボ、で使用。保有国は20か国を超えた。

 内部被曝の真実を知るなら、原子力産業そのものもまた汚染の源泉。ウランを掘り出した瞬間から(労働者の体内に)濃縮ウランを原発で燃やせば、微量の放射性物質が日常的に排出。その濃縮ウランを作る過程で大量に排出される劣化ウランからできる劣化ウラン弾。こうして放射性物質が環境に溶け込んで拡散し続けていく状況が新たに生み出されている。

第2章 爆心地からもういちど考える(肥田)

 肥田氏は医師で、28歳の時広島で被爆。原爆直後の惨状、被害者の診療をする中で初めて知る内部被曝の症例。その被ばく者特有の症状を診る。

 1949年、広島にアメリカはABCCを開所。被ばく者を集めて被ばくの診察、検査を行い、治療は一切行わず、死亡者は全身を解剖して全ての臓器をアメリカへ送って、放射線障害研究の資料とした。(モルモットに)京大医学部の調査研究記録はすべてを占領米軍に提供させられ、以後日本の学会の調査、研究は禁止・制約。

 2005年、生き残っている約27万人の被ばく者の多くは2つ、3つの病気を持ちながら、様々な不幸や悩みを抱えて生き続けている。ぶらぶら病の状態が続き、怠け者のレッテルを貼られたり、また、被ばくの事実を隠し続けたりして、社会の底辺で不本意な人生を歩いた被ばく者も多い。

 まず被ばく者は、占領米軍より敵視と差別を受け、続いて日本政府によって差別され続けた。政府は1957年に被ばく者援護の法律制定をするまで何一つ救済の手を打たず、多くの被ばく者が餓死に等しい状態で命を奪われるのを放置し、遺棄した。援護法を作っても①爆心地直下で被ばく、②爆発後2週間以内に入市した者など、③多数の被ばく者を治療・介護した者,④当時、被ばく者の胎内にあった者 に区分して被ばく者の中に差別を持ち込んだ。さらに社会からも差別された。

 現行の被ばく者援護法(1997年~)も、基本的に、当初からのこの内部被ばくを否定・欠落したまま引き継いできたもの。2003年以来、160余名(306名に)の被ばく者が政府と集団訴訟中。(これまで出た19回の判決すべてが内部被ばくを認定。)

 アメリカにもビキニ海域での原爆実験中に被ばくした従軍兵がいた。アメリカ公的機関は、当初、その元米兵の疾病が内部被ばくによることを否認。1991年になってようやくわずかな補償金を払う。(アメリカ国内に似たような多数の被ばく者が存在。)

 内部被ばく者が放射線被害者問題で常に蚊帳の外に置かれてきた理由は、① 現在の医学が放射線の人体に対する医学的な影響については、生理学的にも病理学的にもまだ殆ど不明のままで、治療はおろか診断さえ十分にできない状態にあること。② アメリカが、広島・長崎の被ばく者の被害を軍事機密にし、圧力をかけ、日本の医学、医療関係者には診療以外、核被害に関する調査、研究、学会活動を禁止し、大量の放射線被害者集団に対する、専門的、組織的な対応を放棄させたこと。③ アメリカのICRPがBEIR委員会(合衆国国立アカデミー・国立諮問委員会)を通して「一定しきい値以下の放射線の内部被曝は微量、故に人体に無害」という主張を流し続けたことにある。

 そもそも原爆製造のマンハッタン計画に参画したグループ内に放射線分子を体内に入れて殺傷する発想があり、プルトニウムの経口注射による人体実験を実施。(内部被曝は原爆製造の初めから意図されていた。)

 今まで闇に閉ざされていた内部被爆の実相が被ばく者の集団訴訟を通じて明らかになりはじめた。このことが、核兵器による被害者(ウラン採掘、核兵器製造、核燃料輸送、廃棄物処理など)だけでなく、無害を標榜してきた民間の核関連産業(チェルノブイリ、ハンフォード風下住民など)の実相と相俟って、人類が今後、どのように核エネルギーに対応していくべきかの道筋を選択するのに貢献するように願う。

第3章 内部被曝のメカニズム(肥田)

1 放射線の基礎知識(省)

2 内部被曝の危険について

 内部被爆による人体への悪影響を解明した「ベトカウ効果」説-長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する。→それをスターングラス教授(ピッツバーグ大・医放射線科)が発展させ、アメリカの核政策を批判。―①低線量域では生物への影響はかえって大きくなる。②低線量放射線の経口への危険度はICRPの値より大きく、乳児死亡の倍になる占領は4.5ミリシーベルト。③米・中の核爆発実験の放射性降下物によって乳児の死亡率が増加。④放射性降下物に胎児期被ばくした子供に知能低下が生じた。⑤スリーマイル事故によって放出された放射能によって胎児死亡率が増加。

 これに対してアメリカ国内では多くの反論が呈された。(組織されたというべきか?)

 原子力は、二つの間違いを見落としたまま開発・利用されてきた。①「放射線の量がある一定量以下(しきい値以下)であれば人体に全く危険はない」という考え方。②「自然に存在する放射線の核種も人工でつくり出した放射線の核種も人体に与える影響は全く同じである」という考え方。

 広島・長崎の多数の被ばく者が60年の時間の経過の中で示してきた症状、症候群は従来の医学的見地で説明できないものが非常に多い。(ぶらぶら病症候群など)また、従来、放射線の影響はないとされてきた5キロ、6キロの遠距離被ばく者の急性症状や脱毛も、残留放射線によって内部被爆から説明しえる。臨床検査で疾病の存在を証明しえない被ばく者の異様な倦怠感も、低線量放射線の内部被爆による内臓器官の疾病準備状態と捉えれば、おのずと対応が可能となる。(お手上げだった被爆者医療に貴重な足場ができた。)

 数々の被ばく者の症例と、過去12年間の多くの科学研究は、間接的な細胞膜の損傷が、自然放射線、死の灰、原発から放射される平均線量0.01~0.1グレイの最小線量でさえ、生物組織に有害であることを示してきた。

 そして、ベトカウ効果は、これまで不明であった低線量放射線による人体への影響を明らかにしつつある。①ベトカウ効果は病気に対する抵抗を担当する細胞に損傷を与えることを証明。子宮内で育ちつつある胎児の免疫組織は特に侵されやすい。②低線量放射線は、以前に予想しなかった損傷を起こしてしまう。感染症、加齢による病気も。発育する胎児への脳障害は特に深刻。③死の灰、原発放射線に起因する危険の増加を示す統計資料はあったが、ベトカウの発見以前はそれらを説明することができなかった。-統計に用いた放射線量が食物・ミルク・飲料水中に入ったセシウム137などの年間わずか0.1~1シーベルトの少量の核分裂生成物であり、微量のため人体に影響はないと考えられていたから。(ベトカウ効果で説明できうるようになってきた。)

3 内部被爆の症状

 アメリカの医師ドンネル・ボードマンー大気圏核実験に動員された被ばく米兵の診療を通じて、彼らを苦しめた主訴と症状がどの病名にも一致しない場合、低線量放射線障害とすべきとし、それを「非定型症候群」と名付けた。

 ドイツの植物学者ラルフ・グロイブは、低線量放射線の評価は、二つ以上の有力な勢力の干渉によって左右されると。それは学問的な相違よりも、危険度を算出する基準の選択に膨大な経費が関係し、強力な外界の利害関係がそれを左右する。その最もよい実例がBEIR委員会報告Ⅲで、低線量放射線による発癌の危険度の数字が大きく引き下げられた改定・修正をした。―原子力開発を進めていくために全人類が被るであろう被ばくの犠牲はこのようにして正当化された。

 1950~89年の40年間にアメリカの婦人(白人)の乳癌死亡者が2倍になったことが公表。その原因を政府は、文明の進展に伴うやむを得ない現象と説明。統計学者のJ・M・クールドは報告に使われた統計に不審を抱き、再調査。結果は明らかな地域差があると判明。原子炉から100マイル以内にある郡では乳癌死亡者が明らかに増加し、以遠にある郡では横ばいまたは減少していた。乳癌死亡者数の地域差を左右していたのは、軍用、民間用を問わず、全米に散在する多数の各種原子炉から排出される低線量線だった。

第4章 被ばくは私たちに何をもたらすか(鎌仲)

 人類史上、最大の人体実験ともいわれる広島・長崎への原爆投下があっても、内部被爆そのものに関しては長い間、言及されることはなかった。近年、ようやく内部被爆の存在が注目され、ICRPの見解とヨーロッパの科学者グループ、奥州放射線リスク委員会(ECRR)の見解がはっきりと二つに分かれるようになった。前者は内部被爆も体外被曝と同様に許容量を定め、後者は内部被爆の許容量をゼロ以外は安全ではないとしている。-(たった1粒のプルトニウムが体内に入った場合、ECRRは体内で放出されるアルファ放射線がその人間に癌を発症させる可能性は十分にある。)

 ECRRが2003年公表の報告書―1945年~89年までに放射線被ばくで亡くなった人の人数は、6160万人。ICRPの計算では117万人。ECRRは、現行のICRPが設定する一般人の許容限度、1ミリシーベルト/年を0.1ミリシーベルト/年以下に、労働者の限度も50ミリシーベルト/年から0.5ミリシーベルト/年に引き下げるべきだと主張。もし、これが実現すれば、原発労働者だけでも100倍の人員が必要に。だからこそICRPは「合理的に達成できる限り低く保つ」と許容限度を勧告する。

 確かに、いまだ世界に微量な放射性物質が体内に及ぼす影響に関しての定説はない。そこで、ICRPはこうした「全ての放射線被ばくは合理的に達成できる限り低く保つこと」という姿勢をとる一方で、「確率的影響に関してはしきい値をもうけない」(1990年勧告)と自己矛盾に。つまり、正当な社会的便益があり、なおかつ原子力産業の運営に支障がないならば、できるだけ低い放射線量の放射線被ばくを認めるというのだ。この許容限度を「容認」するのは、常に放射性物質を使う側であり、使われる側では決してなかった。

 これから、長期的被ばくについては、毎年1ミリシーベルトの被ばくにより、1万人から10万人に1人の割合で、将来のある時点で癌にかかるリスクが付加されることになる。その約束事で、原子力産業が運営された結果が、117万人。しかし、内部被爆を再評価したECRRの新たな考えに基づいた計算では、死亡者数が6160万人に跳ね上がり、そのうち子供が160万人、胎児が190万人となる。

 内部被爆に関するしきい値を死守することはアメリカにとって重要課題であった。内部被爆の人体に与える影響が明らかになれば、新たな核開発の障害になることは確実だった。そこで意図的で巧妙な隠ぺい工作が続いてきた。

 広島・長崎における原爆の影響は局所的であり、放射能汚染は問題にならない、放射線そのもので死んだ人間の数は少なく、投下後、三,四週間で死ぬべき者は全て死んだとアメリカ政府は宣伝し、放射能の長期にわたる影響を完全にそして公式に否定した。こうしたアメリカ政府の見解は、その後の東西冷戦を支える根拠となった。核弾頭を多く持てば持つほど覇権を維持でき戦争の核抑止力になるとし、それがもたらす放射能汚染に関しては全く考慮されない時代が戦後ずっと続いてきた。一般のアメリカ人に植え付けられた核のイメージは、「効果的な兵器」「平和をもたらした兵器」「第二次世界大戦を終わらせ、100万人のアメリカ兵が無駄に死ぬことを回避させてた」現代科学の素晴らしい成果として、今も人々の心に生きている。アメリカ政府による放射能汚染に関する情報操作はほとんど完璧だった。

 アメリカの被ばく者たち

 冷戦時代、アメリカはプルトニウムの量産体制に入り、ワシントン州ハンスフォード・エリアには9つの原子炉がコロンビア川のほとりに建設され,操業停止までに2万5千発の核弾道をまかなえるプルトニウムを生産。1987年、政府はハンスフォードに関する機密書類を公開。操業中に無自覚にもしくは意図的に放出した放射性物質の総量は、スリーマイル島事故の1万倍に相当していた。このハンスフォード風下地区はアメリカ有数の穀倉地帯。あらゆる作物が生産・輸出されている。そこの農民たちに起きたのは食物連鎖による微量放射性物質の生体濃縮だった。政府は行基との因果関係を否定し、裁判に。

 就任一期目にしてジョージ・ブッシュ大統領はあらゆる住民訴訟から原子力施設を守ると宣言して60億ドルの予算を計上。疫学調査「ワシントン州東部における甲状腺疾病調査」は、2千万ドルもの費用をかけ、健康への影響はなかったと結論づけた。内部被爆の被害は「全く心配ない」「問題にならない」「無視できる」あるいは『国際的に容認されている基準や限度を十分に下回っている』などと。その特定の地域の人に特有の癌が増えていても、常に大きな人口集団全体の平均線量が問題となる。集団全体が受けたリスクによれば、10万人に1人の割合でしかないという言い方だ。大きな人口集団が、定量の放射線被ばくをうけていないからその特定の地域に放射能との関連はないとすることこの矛盾に、そろそろ科学が気づくべきである。放射線汚染は決して均一の起こるわけでない。加えて、ベータ線とガンマ線を放出する放射線核種と異なり、アルファ線放出核種は人体内で放射線を出しても直接測定できない。よってその影響は不確か。不確かであるから安全とは言い切れないし、かえって予防原則的な考え方をすれば危険の方に注目すべき。

 1985年にハンスフォード核施設に監督官として赴任したケイシー・ルードの核廃棄物の管理・保存の杜撰さ、放射能漏洩を内部告発によって、プルトニウムの生産は止まった。しかし、後に残った膨大な汚染は消滅することはなかった。

 核大国アメリカは被ばく大国でもあった。大気圏内原爆実験は1200回にもおよび、放射性硬化物質による放射能汚染は広範囲に。

 十分すぎるほどのプルトニウムを生産し、圧倒的な数の核弾道を作った後、プルトニウム余剰の時代がやってきた。そして兵器から商業的な利用へと核エネルギーの用途は変貌した。2005年現在111基の原発がアメリカ国内で操業。原子炉からは日常的に微量の放射性物質が放出される。

 冷戦の置き土産として残ったのはプルトニウムだけではなかった。天然ウランから濃縮ウランを作る過程で大量の劣化ウランが出てくる。(30トンの濃縮ウランを作るのに160トンの劣化ウランが排出)世界中でこの劣化ウランが毎年6万トン近くも出ている。1950年代、アメリカエネルギー省はすでにこのたまりつづける、やっかいな劣化ウランを使って新しい兵器を作ることを思いついた。開発はニュー・メキシコ州ソコロの軍事研究施設で。その周辺での射撃実験によって、風下の町では様々な健康被害が続出した。

 ウラン鉱山、様々な核施設、大気圏原爆実験、そして劣化ウランの製造・試験過程でもアメリカは放射能汚染を受けてきた。湾岸戦争に従軍した60万人のうち、実際の戦闘で死亡したのは300人足らず、帰還してからこれまで1万人が死亡し、20万人近くが湾岸戦争症候群を病んでいるという。いまや劣化ウラン弾を製造、研究、試射、貯蔵、廃棄等をする施設は全米55に及び、近隣の住民にも放射能汚染の被害をもたらしている。

 劣化ウラン弾はなにをもたらすか

 劣化ウラン弾は1991年の湾岸戦争ではじめて実際の戦闘に使用された。最強を誇ったイラクの戦車隊は瞬く間に壊滅した。この湾岸戦争後、二、三年経つとイラクの子供たちの間に白血病や癌が増えはじめた。おびただしい数の障害児の出産、白血病、癌の増加はサダム・フセインの使った化学兵器が原因ではないかとアメリカは言いはじめた。

 湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾は300~900トンだといわれ、イラク戦争ではおよそ2000トン使われ、しかもバクダッドなど人口密集地でも大量の劣化ウラン弾の痕跡が発見されている。破壊された戦車があちこちに放置され、その付近で遊ぶ子供たち、劣化ウラン弾の不発弾を玩具代わりに遊んでいる子供もいる。

 既にアメリカのミサイル全体の20%以上に劣化ウランが含有されているという。劣化ウラン弾が高熱を発して燃えて、エアロゾルと呼ばれる気体になった時、煙草の煙の微粒子よりも小さくなる。ウラン238が出すアルファ線は40ミクロンしか届かない。この放射線が体内に入って組織の中に沈着した場合は条件が全く違うことにとなる。放射性汚染と重金属毒性を合わせて持つウラン238が、複数の内蔵に高い濃度で沈着した結果が湾岸戦争症候群(めまい、吐き気、出血、短期間の記憶力低下、震え、性的不全を起こす)となる。

 アメリカ国防省は、劣化ウラン弾による被害について、その毒性に関しては「劣化ウランの放射線は、自然放射線と大きな違いはない。劣化ウランの放射性は弱い。…劣化ウランは核兵器ではない」としている。いまや劣化ウランを含有したミサイルや弾丸は多種にわたっている。アメリカのみならず、イギリス、ロシア、トルコ、フランス、サウジアラビア、タイ、イスラエルがアメリカの技術を用いて劣化ウラン弾を自国の軍隊システムに開発導入し、世界の武器マーケットで販売している。

 劣化ウラン弾の安全性を巡る論争の根底にあるものは、この60年以上続いてきた微量の放射性物質による内部被爆の影響をどう評価するかに尽きる。ICRP、WHOも劣化ウラン弾の危険性を公式に認めていない。これに異議を唱えることをためらわせている壁はイラクでの医療調査(疫学調査)が行われていないことである。(長い時間と莫大な費用がかかる)イラクの医師たちは明らかに異常なことが起きていると現場で感じている。それぞれの病院で小児白血病が4倍になったり、成人の癌発症率が18倍になっていることを報告している。しかし、それらは科学的に有意なデータとは認めてもれえないのだ。

 劣化ウラン弾の被害を訴え、その使用禁止と被害者の救済を求めるイラクの医師たち、そしてヨーロッパの科学者や世界中の市民は年々増え続けている。

 WHOはチェルノブイリ事故の後、ベラルーシで増加した小児白血病に関しても数年間もチェルノブイリ事故が原因だと認めなかった。ちなみにチェルノブイリ事故後、ギリシャでは160%ドイツでは48%イギリスでは200%以上も小児白血病が増加している。このWHOの主席研究員だったケイス・ベイパーストック博士が、劣化ウラン弾は「放射能と化学毒性を持つ劣化ウランを含むチリを吸い込むと、子どもも大人も癌にかかる可能性がある」と警告した報告書をWHOに差し止められた。と語っています。(WHOの公衆衛生と放射線の関係にかかわる計画をことごとく妨害してきたIAEAの仕業か)この報告書が重要なのは、国際的権威のある組織に所属していた科学者が、①バイスタンダード効果―低線量の放射線を受けた時に従来考えられているよりも大きな損傷を生み出す細胞のメカニズム があること。②カクテル効果―放射性毒性と化学毒性が一緒になると相乗効果を生み出す。があること。を明らかにしたことです。

第5章 被ばく体験を受け継ぐ(肥田・鎌仲)

被ばく者の歴史的な意義

鎌仲:原爆がどういう影響を及ぼしたのかが日本人に伝わっていない。世界に伝わらないのも当然。アメリカの戦略は大成功。

肥田:今のところ成功。核が人体に及ぼす被害については、まだ純粋の学問としては科学的な根拠が証明されていないから。人間は愚かな生き物ですから、科学的な裏付けがなされない限りは、たとえ危険性が指摘されていたとしても、安全であると信じたがる。特に権力は必ずそういう考えに立つから、反対する人は必ず権力に歯向かうことになる。その結果、反対運動を担う人が週数になりがちに。核の脅威について、60年にわたって私が言葉を重ねてきても同業種の医者ですらその脅威を具体的には実感していない。

鎌仲:広島の被ばく者は人類史上はじめて「被ばく者をつくらない」というメッセージを獲得した。でも、そのメッセージが伝わらない。

肥田:自覚の仕方が浅いから。体験上被ばく者は「核を用いた戦争を二度と起こしてはならない」と分かっていても、「なぜいけないのか」ということを知的にまとめて、自分の認識にすることができていない。
鎌仲:たとえ核兵器を使用しなくとも、核兵器を作ろうとしたその瞬間から、被ばくというものは生まれています。原爆が投下される以前に被ばく者は存在したという事実を、60年が経った今でも「新しい事実」として受け止められているとは…

肥田:原水協の代表のメンバーすらも、そのことをどれだけ…

原爆を語る「言葉」

肥田:「核兵器が人間に与えた被害とは何か?」という問いに対する「解」を明らかにすること。議論を重ねれば重ねるほどなかなか一つに収束しない。一言でまとめること自体が無意味で、どこから見てもどう考えても核兵器はあってはならないことを明らかにすることが答えなのでしょう。
ホロコーストとの違い

鎌仲:第二次大戦の悲劇として歴史に記憶されているものに、原爆のほかにはホロコーストがあります。同じ大量虐殺ですが、ホロコーストのことは非常によく世界に伝わっています。しかし、原爆は…

肥田:原爆の本当の被害が目に見えないからだと思います。放射能に侵されても、何となく生きていくことが可能ですが、じわじわと生命が蝕まれ、いつかぞろぞろと殺される。放射能は目に見えない暴力なんです。

鎌仲:放射能汚染による被害を表現する言葉を私たちは持ち得なかったし、いまだに探しています。
被ばく国としての責務とは

鎌仲:「放射能が被爆者をつくる」という単純な事実を理解すること。その情報を伝える人の数が少な過ぎた。

肥田:その原因の一端は、被ばくの問題を、人間の生命との関わり合いのなかで捉えていかないから。
 生命というものと対決している医療関係者は、原爆という問題を積極的に取り上げようとしないのです。私の話に対して、たくさんの人が反応してくれるけど、私と同じように考える医者は少ない。威力の大きな爆弾としての原爆の被害は理解するけど、内部被爆がゆっくり人を殺すことを確信できる医師はほとんどいません。彼らの尺度は現在の医学であり、それが内部被爆の脅威を認めない限り、彼らはその線を離れられないのです。被ばくについて無関心な医者が多いのは私の責任でもあるのです。

次の一歩を踏み出すために

鎌仲:現在は、放射能についての情報がたくさんあります。だから、誰だってその気になれば、独力で放射能被害について知ることができます。ある程度の知識を得れば「低線量放射線は安全だ」と高唱するICRPのような団体の信憑性を判断することもできる。チェルノブイリ以降、低線量の内部被爆は、やっぱりよくないんだという認識が深く広く行き渡ってきています。ドイツの脱原発宣言は、チェルノブイリ事故が起きて彼らの生活の中に死の灰が降ってきた体験をしたことが大きな影響を与えている。

 原発と核兵器は関係がないかといえば、決してそんなことはなくて、きわめて密接に関連している。プルトニウム製造工場があるハンフォードは使用済み核燃料の再処理工場なのです。フランスの再処理工場もイギリスの再処理工場も、周囲はものすごく放射能汚染されているにもかかわらず、その施設の責任者たちは「安全だ」と言い続けている。周辺の市民は不安があってもノーと言えない、生活の場が侵されてしまって後戻りができなくなっている。「放射能汚染は目に見えないから、存在しないことにしよう」という選択になっている。その選択を予防的に回避することができるかできないかが、今の日本に突きつけられて課題になっている。

劣化ウラン弾が新しい局面をもたらした

鎌仲:劣化ウラン弾は核廃棄物から製造され、ウランが使用されているミサイルだった。「原子力エネルギーのゴミ」だったのです。今こそもう一度、核兵器と放射能汚染というものを見直すべきタイミングです。放射性物質が体内に入ったら、たとえ微量であったとしても危険であることが常識になっていく時代は、意外と早く来るのではないかと思います。放射線の安全許容量に関しては、この60年間死守されてきたけれども、今、まさしくそれが壊されようとしていると…

肥田:全く同感です。人間は当面する危険に敏感に反応しますが、その状況をつくりだす核脅迫を背景にした国際政治を一つに意識できるような日本国民に一日も早くなりたい。
日本人は核をどう捉えてきたか

肥田:1954年ビキニ環礁での水爆実験で第5福竜丸が被ばくしたことから日本の原水爆禁止運動ははじまったが、「私がやってきた運動は、果たして本当に核と向き合った運動だったのか?」と自ら問い直せば、常識的には「YES」だが、もっと突っ込んで考えると疑問に思うことも…核と向き合った運動であったくせに、核についてどれくらい理解していたかというと、あまりよく理解していなかった。劣化ウラン弾のような具体的な核問題が浮上し、実際に戦争で用いられた核兵器が目に見えるようになってきた。

鎌仲:劣化ウラン弾による内部被爆の影響が、科学的に証明されたわけでないのです。でも、予防医学的な見地から考えると、どんな微量な放射性物質であっても危険はあるのですから、生命を守るという観点からすれば、劣化ウラン弾の使用を制限すべきだというのは誰だって分かるでしょう。
 だけど、今まではそれが自分の身近な脅威になるという想像力がなかった。ところが、世界中で普通に生活しているだけで多くの人々が被ばくしている事実が判明してくると、「明日は我が身」ということが分かったのです。

<私の感想>

 この間、菅谷氏、鎌田氏それにこの本書で肥田氏とすべて医師が書いたもの(それもチェルノブイリの被害者や被ばく者の集団訴訟に寄り添ってきた医師。)を紹介してきました。私は、この間、8月26日の学習会で原発・放射能問題で講師をしてみて、野口氏の著作「放射能からママと子どもを守る本」をテキストにしましたが、皆さんによく説明できませんでした。特に「放射線低線量の内部被ばくの問題」がよく説明できませんでした。そのこともあって、連続して3冊も医師が書いたものの紹介をしています。(本書の紹介は、はまだ途中ですが…)その中で、私自身に少しは変化が出てきたようです。それは、9月14日の栗原市の講演会で、石井慶造氏の話を聞いていて、それをすべてチェックできたからです。しかしそれでも、まだこの問題―「放射線低線量の内部被ばくの問題」が今一つ実感?確信?にまでなりきっていません。それは多分、本書にも書かれているこの問題の特殊性もあるでしょうし、私自身が被曝者・被害者と直接、接していないということがあるのでしょう。

 かつて私は、しばらくの間、千葉市において川鉄公害問題にかかわっていました。被害者の救済、大気汚染などの調査、汚染源の追及、最後は被害認定と新たな発生源の差し止めを求めた訴訟を支援する活動をしていました。私自身も、その中で原告被害者である多くの公害病患者さんたちと直接、接してきました。また、この訴訟を準備する中で、訴訟に協力したり、証言に立ってくれた科学者・学者たちとも接したり、被害者たちとの橋渡しを手伝ってきました。また逆に法廷では、被告・川鉄側に立つ科学者・学者も見てきました。そうした中で、法廷内外で、原・被告の間で激しい論争を繰り広げてきました。様々な学説、科学論文、各種調査などどう見るのか。また被害の実態や、それと大気汚染との因果関係をどう見るのか。果てしない論戦をしましたが、その準備のための弁護団会議に幾度も出席しました。そこには原告被害者や原告側の科学者・学者も出席する場合も多かったのです。

 そこで、はっきりしたのです。科学者・学者は、ただ専門家であるだけではだめなのです。汚染や被害の事実を具体的に押え、命を守る、被害者の立場に立つ見識を持っていなければならないのです。そうした被害者の立場に立つことができる科学者・学者なのか、人間なのかが問われてきました。また、そうした中でこそ、科学・学問も鍛えられ、人類(人間)のために発展するのだと思いました。

 本書を読む少し前に、月刊誌世界の9月号で、肥田氏へのインタビュー「放射能との共存時代を前向きに生きる」を読みました。そこでアメリカが広島・長崎への原爆投下以後、内部被ばくを隠してきたこと。そのアメリカの影響下での日本の放射線学・学会がつくられてきたことを知りました。それと関連してくるのが、産・学・政にわたる強固な原子力村が形成されていったこと。そしてそれによって、日本における原子力発電が強力に推進されてきて、今回の福島の原発事故に至ったと認識しました。だからこそ、私が千葉の公害訴訟で実感した確信―被害者に寄り添う科学者・学者こそ、本物であり、信頼できる。-から、肥田氏など(この後にその著作を読んでいく、矢ヶ崎克馬氏なども)の言っていることを、もっとよく理解しようと思ったのです。

 とりわけ、このフクシマ以後においては、今、まさにこの「放射線低線量の内部被ばくの問題」をどう見るかが一つの大きな争点になってきています。広島・長崎での被曝(それは今も続いていますが)の時とは異なる状況が、現在はあります。本書は、6年前に書かれたものではありますが、この問題を考えるにはどうしても、今、読まなければならないと思いました。

 読んでみて、何かすべてがつながっていくように思われてきました。それは、核(兵器)を作ろうとしたその瞬間から、被曝というものは生まれること。そのため、本当は、世界中で普通に生活しているだけで多くの人々が被曝しているのだということ。こうして、広島・長崎の被曝者、チェルノブイリ事故による被害者、イラクなどの劣化ウラン弾による被害者、核(製造)にかかわる産業(兵器・原子力など)での被害者など、それと今回の福島原発事故による被害者。これらすべての被曝者・被害者が、一つに結びついてくるのです。2005年に本書が出された時にも、そうした方向が見えてきていたとは思いますが、今、現在、フクシマ以後では、より明確になってきたと思います。それを一言でいえば、―人類が、今、「核のない世界」へ確実に踏み出さないといけない。人類と核(核兵器・原発)は共存できない。―ということです。今、「核廃絶+脱原発」を地球規模で行なっていかなければならないのです。エネルギー政策をどうするか?世界経済はどうなるのか?、私は、こうしたことは、二の次でいいのだと思うのです。まず最優先で、人類の生存がある。次世代の子どもたちが、この地球上で、安心して暮らしていけるようにすること。そのためのエネルギー政策であり、世界経済・財政政策のはずです。科学・学問だって、そのミッションは、それに寄与するためなのではないでしょうか。

 本書が、今のこのフクシマ以後の時点で、多くの方に読まれるよう望みます。

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第3回放射能自主測定

<原発・環境・エネルギー問題>             2011.9.14

明日の栗原市小学校陸上大会を前に、第3回放射能自主測定を実施しました。                                                                              ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会 
     連絡先 鈴木 健三 TEL.FAX 0228-47-2932
     放射能自主測定スタッフ 連絡先 :佐藤 0228-22-7412

今回の自主測定を行った経緯

 9月13日の「ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会」第13回役員会で、鈴木代表の方から、「明後日(9月15日)に「栗原市小学校陸上大会」が、サン・スポーツランド 栗駒で開催される。」「7月の栗原市小学校陸上競技交流大会(ジュニア陸上)」では、その2~3日前に栗原市はそこのグランドと芝生で測定し、1マイクロシーベルト/毎時という高濃度だったと言っていた。それでも大会を実施した。」「今回も、またそこで陸上大会を行おうとしている。」と報告がありました。参加した役員より「まさか、そんな高濃度の放射線のもとで実施したのだろうか?」「そんな状態で、また、明後日もするのか?」という声が多数出ました。代表に「もう一度、正確に確認を」お願いしつつ、実際に自分たちでも測ってみようということになりました。こうして、久しぶりに第3回放射能自主測定を実施することになったのです。

 築館地区にある大きな陸上競技場が震災被害でいまだに使えないため、確かにこの「サン・スポーツランド 栗駒」という栗駒地区のグランドを使わざるを得ないという事情は分かります。築館の陸上競技場は、放射能が低濃度汚染です。しかし、このサン・スポーツランド 栗駒 は、明らかに高濃度汚染地区にあり、そのすぐ近くにある鳥矢崎小学校は、局所的に5マイクロシーベルト/毎時以上のホットスポットがいくつも出た(現在は処理済み)ところです。そこの校庭中央では、いまだに0.4マイクロシーベルト/毎時以上を出し続けているという放射能汚染の高止まりのところです。ですから、そこの近くのサン・スポーツランド 栗駒 で、1マイクロシーベルト/毎時だと言われて、まさかと思いつつ、もしかしてあるのではと思ってしまいそうな地域なのです。

 実際には、鈴木代表の「聞き違い」で7月の大会実施前の測定では、グランド、芝生で0.5マイクロシーベルト/毎時ほどだったそうです。そのことが当日、自主測定参加者に分かったのは、午前10時に集合してからでした。いつもは、3~4人なのに、今回は6人もの参加になりました。

陸上大会々場(サン・スポーツランド栗駒)にホットスポットあり、また、全体が放射線濃度の高止まりの場所です。

 第3回放射能自主測定値一覧を見ていただければわかりますが、NO.7とNO.9の2カ所がホットスポットです。この土盛りは、5月の中旬に管理者がグランドの表面に生えてきたコケを取り除くため、土を均した時に出たものだそうです。(当日の聞き取りから判明しました。)これらは、明日の朝に大会が始まる前に処理(取り除くか、少なくともビニールカバーを被せるなど)する必要があります。処理する基準の1マイクロシーベルト/毎時に近い、NO.6は少しですので、取り除くこと。NO.8も何とか対処してほしい所です。NO.7は、ほとんど子どもは近づかないけれど、NO.9は、砂場近くで、子どもの出入りも多く大変危険です。砂場自体はそれほど高くはありません。

 これらの場所は、放射線を放出している場所がはっきりしており、そこから遠ざかれば濃度が下がります。それを処理すれば問題は解決します。しかし、厄介なのは、この場所、サン・スポーツランド栗駒の全体が、放射線濃度の高止まりの場所なのです。明日は、天気も良く、グランド内で子どもたちは砂埃を立て、汗まみれで競技にがんばるでしょう。まわりの芝生、テントを張る場所、本部席でも、どこでも高濃度なのです。高さによって濃度が下がるということもなく、低いところなどどこにもありませんでした。

 今日(9月14日)午後1時半よりは、この近くのみちのく伝創館で、防災講演会が大々的に開催されました。講師の石井慶造東北大教授は、例の山下俊一氏と同じ「100(200)ミリシーベルトまで大丈夫だ」という安全論の宣伝に終始する御用学者でした。その放射能の健康への影響について、あまりにも楽観的な言動は、会場でも失笑があちこちで起きていました。このことは、9月1日に栗原市危機管理室に追加の要望書を栗原市に提出した時に、「安心宣伝をするような専門家・科学者の言動は、今、役人の言動とともに市民には信頼されていない」、とクギをさしおいたのに、その通りになってしまいました。しかし、講演を聞いていて、この先生、除染技術に関しては、丸森町の実践は評価できると思いました。それを栗原でも、まず0.3~0.4マイクロシーベルト/毎時以上の校庭等の除染に生かせないかと思いました。そう、鳥矢崎小学校や、ここサン・スポーツランド栗駒も対象にすべきです。講演後の質問時間のトップに、この私たちの午前中の行動とその結果を報告しました。それとともに、「0.3~0.4マイクロシーベルト/毎時以上の校庭等が、ここ栗原市には、13カ所もあり、先生の技術を使って、そこで子どもたちが運動しているという現状を何とかしてもらえないか」とお願いしました。この質問・要望に対しての先生は、正確な理解ができないか、それとも意図的に答えないか、その言動はピントはずれのものでした。この講演会の始まる直前に、栗原市の危機管理室には、原データのコピーと問題箇所の地図を渡し、早急に対処するよう申し入れました。またこの質問によって、明日の陸上大会がどんな状況で開かれるか、200~300人もいたかと思われる参加したすべての市民の皆さんに、明らかにすることができました。




第3回放射能自主測定値一覧(H23.9.14)

    ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会自主測定スタッフ
                                        
                             (単位:マイクロシーベルト毎時)

測定場所 : サン・スポーツランド 栗駒  

当日の天気 小雨 

時間 午前10時15分~11時35分

5回計測しその平均値と(MAX)

NO.1 駐車場北側側溝
   10:20   5㎝ 0.49(0.54) 50㎝ 0.58(0.71) 1m 0.51(0.66)
NO.2 駐車場上、土手枯草
   10:25   5㎝ 0.53(0.67) 50㎝ 0.55(0.73) 1m 0.55(0.60)
NO.3 芝生(サーッカーゴールうしろ)
   10:32   5㎝ 0.50(0.72) 50㎝ 0.52(0.67) 1m 0.51(0.61)     
NO.4 グランド中央
   10:40   5㎝ 0.54(0.76) 50㎝ 0.47(0.56) 1m 0.50(0.63)
NO.5 グランド外周(東中央)
   10:48   5㎝ 0.52(0.60) 50㎝ 0.49(0.57) 1m 0.51(0.64)
NO.6 南端池の傍(落ち葉)
   10:56   5㎝ 0.68(0.86) 50㎝ 0.61(0.75) 1m 0.44(0.57)
NO.7 南端プレハブ横(土盛り)
   11:04   5㎝ 1.90(2.19) 50㎝ 1.21(1.37) 1m 0.66(0.92)
NO.8 芝生(南西隅)
   11:12   5㎝ 0.80(0.87) 50㎝ 0.53(0.63) 1m 0.49(0.68)      
NO.9 南西砂場横(土盛り)
   11:20   5㎝ 3.42(3.89) 50㎝ 1.53(1.91) 1m 1.09(1.25)
NO.10 グランド外周(管理棟前)
   11:32   5㎝ 0.54(0.63) 50㎝ 0.47(0.58) 1m 0.43(0.57)

NO.7とNO.9の土盛りは、5月の中旬に管理者がグランドの表面に生えてきたコケを取り除くため、土を均した時に出たもの。
NO.7は、ほとんど子どもは近づかないが、NO.9は、砂場近くで、子どもの出入りも多く大変危険。砂場自体はそれほど高くはない。
NO.5は、学校テントが張られる場所。NO.10は、大会の本部が設置される場所。

<測定器について>

SOEKS-01M 最新型ガイガーカウンター放射能・放射線測定器。2011年5月末新発売の最新モデル ロシア製。ロシア政府公認。CEマーク付き。普及版の安価なものなので、測定した数値は相対的な意味しか持ちません。(少し高めに出るようです。)従って、栗原市の測定する正規のものとの整合性をみるには、5㎝では、×0.91 50㎝と1mの高さでは、×0.77という捕集係数を乗ずる必要があります。

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「チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない」

<BOOKS>(42)               2011.9.9

チェルノブイリ・フクシマ なさけないけどあきらめない

出版社: 朝日新聞出版 (2011/7/30)

<内容紹介>

医師であり、チェルノブイリに何度も通って医療支援を続けてきた著者が、被災地に入って見聞きした現状を紹介し、福島第一原発の事故直後から書きためてきたノートも公開する。放射線医療の第一人者やエコロジストなどとの対談も収録。

<著者略歴など>

鎌田 實

1948年、東京都生まれ。諏訪中央病院名誉院長。91年に日本チェルノブイリ連帯基金を設立し、ベラルーシに20年間で医師団を94回派遣し、約14億円の医薬品や医療機器を支援してきた。著書に「がんばらない」「あきらめない」「なげださない」など。鎌田 實ホームページ / 公式ブログ「八ヶ岳山麓日記」

<目次>

第1章 マルに近いサンカクを探る
第2章 カマタ・フクシマノート
3月
4月
5月
第3章 三人と意見をぶつけ合ってみる
山下俊一・長崎大学教授―チェルノブイリと福島原発 同じ病巣と相違点
住田健二・大阪大学名誉教授―組織も監視も情報公開も原子力は未成熟だった
田中優・エコロジスト―すぐに原発廃止しても節電と自然エネルギーで対応できる

<内容からの要約メモ・感想>

第2章「カマタ・フクシマノート」

3月11日から始まるこの第2章は、ほぼリアルタイムで著者自身が綴ってきた鎌田氏の公式ブログ「八ヶ岳山麓日記」からのピックアップです。他の章はその後に書かれたものの(あるいはその途中で)ようですので、まずここから。

これは、震災当日の夜の文章で、文中で、「ぼくは、反省している。」からはじまり、「20年間、チェルノブイリ原発事故で健康被害に遭った人たちとかかわり、原発の恐ろしさをよく知っているのにもかかわらず、原発をすぐに止めろとは言わなかった。原発はもうつくらないほうがいい。そう思っていた。危険な原発から時間をかけて廃炉にしていけばいいと思っていた。ぼくは反原発でも脱原発でもなく「超原発」派。原発をのりこえるエネルギーシステムをつくること。多様な再生可能エネルギーを効率よく引き出すシステムを開発して、これを、いずれ輸出の柱にする。内向きの思想や清貧の思想や断捨離ではなく、若者の雇用を拡充するため、経済をよくするエネルギー革命を起こすべきだ。そのために原発にかけていた莫大なお金をシフトすればいいと思っていた。原発をすぐに止めろと言わなかったのは、経済が悪くなると勝手に思い込んだからだ。経済が悪くなったら、若者の雇用はもっとシビアになり、この国はめちゃめちゃになると思っていた。原発に真っ向から反対しなかった。自己批判しないといけない。そう思っている。」としています。

(ここに鎌田氏のすべてが正直に出ていると思われました。そして、その反省からの行動が現在も続いているのだと。)

3月21日―「科学的」ってなんだろう。胃の検査0・5回分のホウレンソウは多分、何の病気も起こさないと思う。でも本当に体の中でどんなことが起きているか全てを科学的に証明できるだろうか。命には科学を超えるものがある。すべてを科学で説明できるとは思わない。…「納得」「信頼」「安心」が大切。なおかつ、放射線による健康被害を出さないことが大事。このくらいは多分大丈夫という数値よりも、飲み水や牛乳や野菜に関しては厳しく取り扱うことが、風評被害も出さないことになる。

3月23日―東京の水道水からも1?当たり210ベクレルが検出。雨により,空中に漂っている放射性物質が地上に落とされたため。乳児の基準値100ベクレルを超えたため、飲まないほうがいいと指示。…チェルノブイリとは放射線量の桁が違うが、わずかでも体内被曝を起こす可能性を考えて、避けられるものは避けた方がいい。40歳以上では、放射性ヨウ素と甲状腺がんの因果関係はほとんどないとされる。

4月2日―IAEAの考え方と日本の考え方に差が。多くの外国人が日本を去っている。IAEAに文句を言わせないためには、大気や水、土壌のモニタリングポストを強化すること。情報の収集と分析を徹底し、きちんとオープンにすること。御用学者や「原子力村」の学者の言葉は話半分に聞いた方がいい。でも、まともな学者でも、テレビの手法では、国民を納得させるのはむずかしい。「大丈夫」の根拠を述べさせなければ、「大丈夫」という言葉は不信、不安、不満を広げるだけ。

4月5日―低レベルの汚染水を海に捨てた。原子力学会の異常事象解説チームの一人が海で拡散するから大したことはないと説明。30?も離れたところで基準の2倍は高濃度。もっと近い海は、かなり汚れている。食物連鎖が怖い。…日本では、「安全神話」による過信で原発事故を起こしてしまった。批判的な意見は無視してきた。結果としてシビア・アクシデントが起きた。でも、「大したことはない」という学者がいっぱいいるこの国は、本当に原発事故の再発を防げるのだろうか。…医師としては、余計な放射線は受けるべきでないと思っている。子どもと妊娠の可能性のある女性には特に注意をしてきた。結局「大丈夫」というのは、妥協の産物なのである。

4月9日―政府が魚介類の放射性ヨウ素の暫定基準を1?当たり2千ベクレルとした。農産物と一緒にしたという。「科学的」なのだろうか。原子力を推進してきた政府や学者、電力会社は常に「科学的」という言葉を使いながら、原発に対する不安を封じ込めてきた。「科学的」という言葉が、我が物顔でのっしのっしと歩き回ってきた。低レベルだからといって、海に汚染物質を流していいのだろうか。海が少し汚れても大丈夫。魚が汚染されても基準以下なら心配ないという。これが「科学的」という言葉の正体だ。…この国の「科学的」というのは、単なるご都合主義のように聞こえてならない。

4月10日-チェルノブイリの子どもたちの医療支援に20年間関わって思うのは、余計な放射能は浴びるべきでないということだ。少しだから大丈夫とは、言いたくない。…健康被害を起こさせないためのシステムをしっかりつくるしかない。食の安全性を確保することは、内部被曝を防ぐという意味で重要だ。

4月12日―ICRPは、緊急時でも年間20~100ミリシーベルトの放射線量を浴びる場合は対策が必要と勧告。避難範囲を決めるのに今回の判断は20ミリシーベルト。5ミリシーベルトでは避難者が大集団に。平時の基準値1ミリシーベルトにすると福島県の多くの人が移住せざるを得なくなる。悔しいけど20ミリシーベルト以上を計画的避難にしたのは仕方ないと思う。ただし、子どものリスクは出来るだけ減らすべきだ。

 対象の市町村に、納得してもらう説明があったかどうか。コンセンサスを得るムードをつくるのが、実に下手な政府だと思う。困難の中を生き抜くためには「納得」「信頼」「発想の転換」「雇用」「絆」の5つが大事。

4月26日―地震学者・石橋克彦氏は「大地動乱の時代」と呼んで大地震を予想していた。「想定内」なのだ。「科学的」という切り札的な言葉で、日本の原発は「安全」と言いくるめてきた。現在使っているGE製原子炉格納容器の意外なもろさは、すでに1975年に指摘されている。これも「想定内」。「想定内」のことを「科学的」という言葉のもとに、結局コストのために無視してきたのだ。

4月30日―フィルムバッジは、1年間の放射線の蓄積被曝量をはかることができる。…線量計を持ったり、フィルムバッジをつけたりして外部被曝量を測る。ホールボディーカウンターで内部被曝を測る。多種多様のデータで被災者を守る必要がある。フィルムバッジは、1つ1年間で1万8千円の契約料がかかる。

5月1日―年間1ミリシーベルトでも不安に思う親もいるだろう。それは十分に納得できる。情報をできるだけオープンにしよう。その情報の中で親が自己決定をすればいい。政府は根拠のない緩い基準値を作って、うわべだけの安心をさせるだけではダメだ。どれだけの改善をしていくかが問われている。…子どもたちの健康や命を守るためには、外部被曝だけでなく、内部被曝を考慮しなければいけない。粉じん中のホットパティークルを吸い込んだり、放射性物質を含んだ食べ物を食べたりしてしまう可能性がある。これを測定するためには、内部被曝量を体外から測るホールボディーカウンティングの機械が必要である。

5月6日―東電は、福島第1原発から15~20?離れた海底の土砂から、通常の100~1千倍の放射性物質が検出されたと発表。低濃度汚染水の海洋放出は、世界の目が、それまでの震災をこうむった日本への同情から、批判へと変わった分岐点となった。…呪文のように「絶対、大丈夫」と言ってつづけた東電。「科学的に心配ない」と言い続けた科学者たち。みんな口を閉ざし始めた。

5月9日―今の土俵際の日本を救うためには発想を変えなければならない。これからも「原発を作り続ける」日本は救われないと思い始めている。学会でも、政界でも、マスコミでも、国民のためにどうすることがいいのか、ニュートラルに議論できるようになるといい。民主主義が成熟してないから、水俣病も起きるし、薬害エイズも起きるし、沖縄の基地問題も起きる。国民が議論してきちんと決めることが大事である。

5月31日―放射能汚染は広範囲に広がっている。」自分の所は大丈夫だと思わないほうがいい。測定範囲を広げ、しっかりモニターしていく必要がある。各地の牧草にも放射能の影響が微量だが出始めている。牧草や原乳の放射線量をきちんと調べ、汚染されたものは、市場に出さないことを徹底すべきだ。子どもたちには、余分な放射能を含んだ野菜やミルクを与えないようにしたい。恐れすぎないようにしながら、しっかり恐れる。これくらいでいいと思ってはいけない。それぞれが放射線被曝を少なくしながら、日本を壊さないためにどうしたらいいか真剣に考えていく必要がある。

第1章「マルに近いサンカクを探る」

 ここまで先に、第2章―日記の部分の紹介をしました。そこで、第1章に戻ります。鎌田氏は、物事をマルとバツに分けるのではなく、できるだけマルに近いサンカクを見つけるのがいい。「100ミリシーベルトまで大丈夫」と「1ミリシーベルトでも危ない」の間の激しい闘いに対して「発想の転換」が必要と言っています。私は、これは少し違うのではないかと思うのです。100ミリ(あるいは20ミリシーベルト)を強調するのは、緊急時であって、しかも避難するかどうかの基準が関連した場合です。それに対して1ミリ(以下)が妥当かどうかといった場合は、内部被曝を含む、主に子どもなどの健康にとっての基準を考える場合だと思うのです。私は、一緒にすべきではないと思います。この章でも鎌田氏は、「20ミリシーベルトという(根拠のない)基準を国はいい加減に決めている。」と言っています。この章と第2章を読んでも、鎌田氏はそのどこでも、バツを良しとしていないし、サンカクでいいともしていません。結果としてのサンカクも有りなら分かりますが。少し揺らぎながらも、彼のマルは、しっかりと見て取れました。それは 「だいじょうぶ」は改善を止めてしまう にもよく表れています。

―「だいじょうぶ」と学者が言う。政治家も「だいじょうぶ」と言う。…食べ物もだいじょうぶ。グランドもだいじょうぶ。だいじょうぶと言う言葉は改善を止めてしまう。本当の安心が出来るように行動すべきだ。口だけではダメ。放射能はほんの少しもよけいに浴びないほうがいいんだという原点に立って、やれることをやる。―

 そして、P14 あたりですが、確かに鎌田氏が福島に入り「命と健康を守るという原点に」としつつも、それだけでは行動を決められない人たちが多いという現実に、自主避難を現地で被災者にすすめても反応がうすかったと言っています。計画的避難区域の決定の根拠が20ミリシーベルトだというのは、苦渋の選択(サンカク)。大人も子どもも20ミリシーベルトまでいいとは思わず、1ミリシーベルトをめざす。(マル)「ICRPは平時でも、一時的に5ミリシーベルトまで可としている。1ミリシーベルトを目標にしながら、この1年は、一般の人はこれを目標にすることをすすめる。」と言っています。やはり、子どもなどに関しては、どんな場所でも、あくまで原点(マル)の1ミリシーベルト以下をめざすこと。それに近づけること。そこを譲ってはいけない。しかし、大人に関しては、当面はサンカクも有りといったところではないでしょうか。それも「信頼」と「納得」があった上でのことですが。

第3章 三人と意見をぶつけ合ってみる

「チェルノブイリと福島原発 同じ病巣と相違点」― 長崎大学教授で被曝医療の専門家である山下俊一氏との対談 

 山下氏は100ミリシーベルト以下では健康影響はないと断言するなど、低線量被曝の影響を過小にみる立場にあります。対談でも「チェルノブイリで唯一起きた低線量被曝による病気は、子どもの甲状腺がんのみ」という考えを表明しています。山下氏は、福島県の健康リスク管理アドバイザーでもあり、講演会などでは、「「国の指針が出た段階では、国の指針に従うのが国民の義務だ。」とも発言し、リコール運動が起きた人物です。チェルノブイリに深く関わったという共通点はあるものの、鎌田氏とはどう考えても合わない方です。

 朝日新聞などは、9月1日付ですが、「朝日がん大賞を受ける」と「ひと」欄で紹介し持ち上げています。同紙は、この間、紙面にも幾度も専門家談話(6月16日など)で山下氏を登場させています。それは7月19日の紙面審議会で、内田樹委員の「低線量被曝の危険性についての警鐘が紙面から見えてこない。」という指摘に対して、朝日新聞の杉浦編成局長が「低線量被曝の危険性については、政府や学会同様、朝日新聞としても評価が定まってない。」と言っていることから頷けます。もともと3.11震災・福島原発事故後に「脱原発」へ、急に方向転換した新聞ですので限界があります。当初は、学会の考えも四氏と様々取り上げていましたが、このところは、最も厳しい見方をしている甲斐倫明氏の登場が多くなっています。山下氏とは長年の関係で評価し続けているのでしょう。

 「対談を終えて」で、鎌田氏は「山下さんと反対の立場の専門家ががんがんとやりあって、国民が納得できる基準をつくってほしい。」と言っています。

「組織も監視も情報公開も原子力は未成熟だった」―原発行政への「遺言」を書いた住田健二氏との対談

 住田氏は98年4月~00年3月の原子力安全委員長代理。JCO臨界事故では現地で収束の指揮をとった方です。核融合の専門家で原子力は必要だという立場で、太陽光発電や風力発電で原子力をカバーできるものでないという立場。そのために最優先で取り組まねばならないのが、安全性の確保だとして、経済産業省の中にある、原子力の推進と規制の機能を分離すべきだということを提言(遺言のように)していました。原子力村の一員なのですが、原子力はまだまだ未成熟とし、4月1日には、16人の科学者が出した緊急提言書で国民に詫びています。

 対談の中では、放射性物質の拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」のデータの公開の遅れが住民に余分な被曝をさせたこと。原子力専門の人たちは結局、経済に負けている。などで両氏が共通の認識を持っていると思いました。

 住田氏は、毎日新聞のインタビュー(7月14日付)でも、「チェルノブイリもスリーマイル島も原発1基の事故だった。福島のように4基もいっぺんにだめになるのは例がない。地元が受け入れるからといって、同じ地域にたくさんの原発を安易に造るのは控えるべきだろう。自然災害のリスクを分散できない上、同じ場所で複数の原発が事故を起こすと現場に近づきにくくなり、収束の作業が難しくなるからだ。今後の原発新設は、増設でなく、安全性の高い新鋭機への置き換えを中心にすべきだ。」と言っています。それなりに説得力はありますが、それでも私は、鎌田氏と同様に、地球に核はいらないし、原発もいらないのです。

「すぐに原発廃止しても節電と自然エネルギーで対応できる」-脱原発の理論家である田中優・エコロジストとの対談

 原発に頼らない社会の実現を主にエネルギー問題から取り上げている方が、田中氏です。原子力発電の推進をやめる。メディアを支配する広告宣伝費を取り上げる。賠償に代えて送電網を公共財にする。などを提唱しています。対談でも、日本のエネルギー資源輸入額23兆円を自給の自然エネルギーに変えていき、「地域経済の活性化」をさせていく、「エネルギー自給率を上げて雇用をつくり出す」としています。世界中で最大に投資されているスマートグリッド(次世代送電網)の根幹技術は、家電など省エネ製品、自然エネルギー、バッテリー、電気自動車、IT技術など、どれも日本が先頭を走っている。それが、そうしてものにシフトしていけば可能だとしています。

 「対談を終えて」で、鎌田氏は、田中氏の講演会の熱気のすごさを伝えています。私自身もこうしたエネルギー問題や、その根幹となる技術の問題には大いに関心があります。田中氏の著書「原発に頼らない社会へ」も、だいぶ前に購入しています。しかしまだ読んでいません。それほど難しそうでもないのですが…
「ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会」の役員会でも10月末の総会後の記念講演のテーマに「エネルギー問題」をという声が多く出されました。しかし、私は、確かにその問題はこれから重要になってくるけど、その前にどうしても「放射能と健康」の問題、とりわけ「放射線低線量での内部被曝の危険性-子どもたちを放射能から守るために」の問題を、と説得しました。勿論、脱原発へと向かうのですが、まずそこを、しっかりとおさえた上で(それを大前提として)、原発をどうするのか、日本のエネルギー問題をどうするかを考えるべきだと譲りませんでした。もうしばらくの間、この田中氏の本は、私の机の上に、積読になっていることでしょう。

<最後に少し、+感想を>

 本書は、たまたま図書館の新刊書のコーナーで見つけたものです。これまで、鎌田氏の書いた文は読んでいても、本は読んでいませんでした。本書を読んで、行動的で、悩みながらも極めて誠実で、良心的なお医者さんだな、とても好感を持ちました。情報量も多く、内容も豊富で、結局、読むのにも時間がかかり購入しました。とても参考になりました。鎌田氏は、私と同世代ですが、そのエネルギッシュな活動には敬服します。私自身、福島原発事故が起きるまでは、チェルノブイリのことも、原発のことも、少し関心が薄かったと反省しています。

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「子どもたちを放射能から守るために」

<BOOKS> (41)              2011.9.7

「子どもたちを放射能から守るために」

出版社: 亜紀書房 (2011/6/8)

<著者について>

菅谷 昭

1943年長野県生まれ。信州大学医学部卒業後、甲状腺疾患の専門医として活躍。1996年に信州大学を辞めて、チェルノブイリ原発事故被災地の医療支援活動のため、ベラルーシ共和国に渡る。首都ミンスクの国立甲状腺がんセンター、高度汚染地域のゴメリの州立がんセンター等で、小児甲状腺がんの外科治療を中心に、5年半の医療支援活動を行った。帰国後、2004年に長野県松本市の市長に就任。チェルノブイリ原発事故の現状を踏まえながら、NPO法人「チェルノブイリ医療基金」の活動とともに、さまざまな提言を松本から発している。著書に『チェルノブイリ診療記』『チェルノブイリいのちの記録』(以上、晶文社)、『ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間』(ポプラ社)、『真っ当な生き方のススメ』(岳陽舎)などがある。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)

 水道のお水は飲ませてもいいですか? 野菜や魚は安全ですか? 放射能を浴びたら、どんな健康被害がでるのですか? 日本で起きてしまったレベル7の原発事故を前に、親たちの心配は限りがありません。大切な子どもたちを放射能から守るために、何をしたらいいのか。 チェルノブイリ原発事故の医療支援をした医師であり、現松本市長が、「放射線を正しく知り、放射能から正しく身を守る」方法を語ります。

<目次>

1章 放射線を浴びたら、どんな健康被害がでるのですか?
2章 水や野菜や魚、ふつうに摂ってもだいじょうぶですか?
3章 25年目のチェルノブイリ

<いくつかの内容からの要約メモ>

はじめに

 福島原発の事故は、チェルノブイリと同じ「レベル7」。チェルノブイリの教訓はほとんど生かされず、政府の対応は後手後手に。原発の危機管理ができていない。核の災害は、最悪の事態を予測して先へ先へと手を打っていくことが大切。最終的に予測より悪くならなければ、「ごめんなさい、でもよかったね」と喜び合えばよい。研究者の中には「チェルノブイリ事故と福島の事故は、規模も内容も全く異なる」という人も。ですが、医師の立場でいえば、いったん放射性物質が体内に取り込まれれば、少量であろうがなんらかの影響を与えることには変わりはない。しかも、福島では、まだ放射性物質の放出が止まっていない。甘く見てはいけない。

放射能には、どんな危険性が?

 放射能の危険については、まだすべてが分かっているわけではない。とくに放射性物質が体の中に入ってしまった場合の健康被害については、基礎的にも臨床的にも十分解明がされていません。
 ICRP(国際放射線防護委員会)は、放射線防護に関する専門家の国際組織で、その基準は世界各国の放射線障害防止に関する法令の基礎になっている。しかしICRPの見解には大切なことが抜け落ちています。「内部被ばくが原因で起こる影響」についての視点です。原発事故では、とりわけ長期にわたり問題となるのは「低線量での内部被ばく」です。これは、チェルノブイリ原発事故でしか経験していないもの。そして、その健康被害は現在進行中のため、まだメカニズムがはっきりと分かっていません。

妊娠している女性はなにに気を付ければ?

 妊娠している女性は、胎盤を通して放射性物質が胎児に向かいます。チェルノブイリ被災地では、事故からしばらくして妊産婦の貧血が増え、体力の低下などのため帝王切開や低出生体重児が多くなり、奇形児も増えたといいます。

 人の体は放射性物質を取り込んだとしても、排せつする機能を持っていますが、すべてを排泄するわけではありません。傷ついた細胞を修復する機能もありますが、100%修復されるわけではありません。少量でも内部被ばくをすると、がんになる可能性があるのはそのためです。

 外部被ばくと比べて、内部被ばくは分からないことが多い。分かっているのは、チェルノブイリ被災地にあるデータだけ。子どもの甲状腺がんが激増したという事実です。

 よく分かっていないものは体内に取り込まないほうがいい。とくに乳幼児やこどもや妊娠している女性は、汚染された水や食べものをできるだけ口にしないほうがいい。

甲状腺がんは、死亡率の低いがんと聞きますが?

 確かにたちのよいがんです。手術をして腫瘍を取り除けば、元気で生きていくことができます。ただ、チェルノブイリの小児の場合、6人に1人が肺に転移しています。「甲状腺がんは生存率が90%で、がんの中でもたちのよいがんです。大したことはありませんよ」という方がいます。確かにたちのよいがんですが、だからといってがんになっても大丈夫だというのはおかしい。5歳や10歳の子どもががんの手術をするのです。現場を知らない人はこうしたことを平気でいいます。数字でおおきくとらえてしまうのです。がんは、一人ひとりの命の問題なのに。

「内部被ばく」をしないために、どうすれば?

 事故後、内閣府の食品安全委員会に参考人として呼ばれました。驚いたのは、もともと日本には核災害での食品汚染の基準値がなかったことです。今回のことであわてて暫定基準値が設けられました。基準は厳しいほうがよい、理想をいえば子どもは、汚染されたものを食べないほうがよい。たとえば水道水の場合、乳幼児のセシウム134,137の基準値100ベクレル/kgですが、110ならダメで95ならよい、というものではないから、少量でも体内に入れば、そこから放射線が出て細胞を傷つけることになるのです。

 守らなければならないのは、大人よりも放射線の影響を受けやすい子どもたち。乳幼児だけでなく、15歳未満までの子どもを守ってほしい。妊娠中や妊娠の可能性がある若い女性も注意が必要です。

ヨウ素剤を飲めば、放射能被害を防げるのか?

 安定ヨウ素剤は、数時間以内に服用することで甲状腺をヨウ素で満たし、とくに放射性ヨウ素を甲状腺内に寄りこまない環境をつくる。(タイミングが重要)

 チェルノブイリ事故直後、ベラルーシの西隣にあるポーランドでは、政府が、翌日(4月27日)夜、非常事態体制を発動。4日目には、全ての病院、保健所、学校、幼稚園にヨウ素を配布。人口の9割を超える1000万人以上の子どもに薬を投与した。5月15日までは、乳牛に新鮮な牧草を与えることを禁止。汚染されたミルクを子どもが飲むことも禁止して、4歳以下の子どもには粉ミルクを配った。政府の迅速な対応が功を奏し、ポーランドでは子どもの甲状腺がんの発症を避けられた。

 今回の事故後、福島県が政府にいわれてヨウ素剤を70万人分用意したが、その後「飲め」という指示がないので待っている?という事態に。(結局、飲まずに無駄に。)

残留放射能濃度はどうなっているのか?

 事故の直後から、食品や水の残留放射能濃度が大きな問題に。食品安全員会によって懺定的な基準値が定められ、それを超える値が検出された場合には、出荷制限が行われています。しかし、乳幼児や14歳までの子ども、および妊娠中や、授乳中の女性については、基準値以下であっても汚染されている可能性があるものは、口にしないほうがいい。

 放射能のついた食べものや水をとることで、内部被ばくが起こります。少量であっても体内に入った放射性物質は、核種によって特定の臓器や筋肉や骨に集まります。そこからの放射線が出て細胞が傷つけられる可能性があります。放射線の影響は、細胞が分裂する時がもっとも受けやすいため、代謝の活発な小さな子どもほど注意すべき。

魚は安全ですか?

 チェルノブイリ原発のあるウクライナや、高度に汚染されたベラルーシは内陸部で、淡水の魚についての汚染データがあっても、海の魚のデータがほとんどない。海にこれほど高濃度の放射性物質が大量に垂れ流されたのは、かつてないこと。食物連鎖が予想される。どこで、どんなふうに汚染が広がっていくかわかりません。しかも、いまなお福島では、汚染された水の放出が止まっていない。
 学者によっては「大したことない」と。しかし、その机上の統計だけを見ているから甘い判断に。油断やおごりが、事態を悪化させていく。放射能はまだ分からないことが多いのです。解らないからだいじょうぶ、ではなく、分からないから怖い。

「安全」という政府の言葉を信じてよいのか?

 核の事故の安全対策は、どんなにやってもやり過ぎということがありません。甘く見積もって対策を講じないまま取り返しがつかなくなるより、行き過ぎたくらい心配したほうがいいのです。

 すべてをオープンにしないまま「安全だ」と言ったり『念のために』と言うのでは、かえって人は不安にさせられます。

これから、国にできることは?

 半減期の長いセシウム137を中心に、土壌の放射性物質の量を測定し、汚染地図をつくること。食品の放射能測定をあらゆる分野で行い、長期にわたり調査を続けていくこと。

 食品の放射能測定については、できるかぎり細やかに行っていくべき。あらゆる食品の測定を細かく行っていくことは政府が主導してやった方がいい。安全が確認されたものだけを市場に並べるようにすれば、風評被害を出さずに安心して食べることができます。

 ポーランドのように日本政府にも、原発事故の早期消息と合わせて、健康被害をどう食い止めるかを本気で考えてほしい。

いま、チェルノブイリ被災地では… 
 
 チェルノブイリの汚染地域では、この25年間にさまざまな病気が問題になってきました。小児甲状腺がんとは違って「事故によるもの」とは認められていませんが、風邪をひきやすかったり、疲れやすかったり、貧血があったりと、免疫機能にかかわる体調の悪さを訴える人が多くいます。また、白血病や肺がん、さまざまな先天性障害(奇形児など)も増加したといわれます。事故当時赤ちゃんだった世代が大人になり、結婚や出産をする年齢にさしかかっています。早産や未熟児など、異常分娩が増えています。事故後、ベラルーシでは健康診断や疫学調査を、国をあげて行うようになりました。土壌調査もかなり細かく実施され、汚染地図がつくられました。

 日本でも、今後は健康診断や疫学調査の体制を整えるべきです。土壌調査、汚染地図、そのデータが避難や移住の計画を立てる根拠となります。

<私の感想>

 このところの私の関心事は、講演会のタイトル(案)に出しているー「放射線低線量での内部被ばくの危険性」とくに子ども・妊婦の健康への影響は、食生活など生活上の注意点は、―ということです。そこでいろいろアマゾンなどで参考になるような本を探しました。いくつかピックアップした中の一つが本書です。菅谷 昭氏の発言は、時々目にしていたと思いますが、まとまったものは初めてです。アマゾンでのカスタマーレビューでの評判が大変よく取り寄せて読んでみようと思いました。大変わかりやすく読みやすい。ものの1時間少しで読めてしまいました。それでいて、要約メモにしましたが、結構、参考に使わせていただけるような文章がたくさんありました。

 <BOOKS>(書評)に書こうと思っていた時、週刊東洋経済(9/10)にインタビュー記事が出ていました。「線量測定、給食など最低限の対策は可能」というタイトルです。タイトル通り自治体のトップとしてやるべきことをする。それが市長就任以来「健康づくり」「子育て支援」「危機管理」を訴え、学校給食に対する施策(食材の放射線の影響を考量しての選択)も市民を守るという施策の延長線上にあるものだ。ということでした。また、ヨウ素剤の備蓄も計画しているそうです。このヨウ素剤については、8月27日放射線医療研究会で原子力安全委員会の助言メンバーが「福島で当時の周辺住民の外部被ばくの検査結果から、少なくとも4割が安定ヨウ素剤を飲む基準を超えていた恐れがある」と指摘した。ということです。今後の追跡の健康診断などが重要になってきます。インタビューでも菅谷氏が言っているようにーこうした「行政側の無知が遅れのすべて」になってしまうのです。

 また、本書を読んで、学校給食・食品に対する取り組みをもっと強化しなければいけないなと思いました。「子どもたちへの内部被ばくを極力避けるのを原則にする」このことでの合意の取り付けが重要になってきます。給食食材も自治体でできることはすべてするという方向に持っていく必要があります。

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追加の要望書を栗原市に提出しました

<原発・環境・エネルギー問題>          2011年9月1日

追加の要望書を栗原市に提出しました。

 本日(9月1日)午前10時に、栗原市長宛の「栗原市に8月4日提出した『放射能対策を求める要望書』の追加の要望」を栗原市危機管理室へ提出に行ってきました。参加したのは、私と鈴木代表、それに岩谷副代表の3人です。相手は、危機管理室長と災害対策係長の2人。約40分ほど、要望とその説明。意見交換と懇談をしてきました。

 文部科学省の「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について」と国の原子力災害対策本部の「除染に関する緊急実施基本方針について」は、承知しているが、8月27日は、県レベルの説明会でまだ市には説明がない。何れにしても市が計画を作成しなければならず、そのための資料集めも多い。しばらく時間がかかってしまうと思う、とのことでした。従って、要望 1 については、具体的な検討に入るということでした。

 要望 2 については、「今、250万円ほどの機械を発注しているが、納期が遅れている。」とのこと。また、「それが来ても当面は集荷する農産物の検査を行い、学校給食はまだ、…」というので、もっと効率の良い最新の測定装置をと要望してきました。

 要望 3 については、8月4日に市長の方から言明があったことですが、ホールボディーカウンターの確保はかなり難しい(納期が年度末でも?)とのことで、その他の対策を要望してきました。

 また、現在行われている市内10カ所での「市民向けの放射能講座」について、地域によって、その周知徹底に差があり不十分なところも多いと指摘しました。それでも各会場で多くの市民の参加があり、熱心な質問、要望が数多く寄せられています。日程は明日(9月2日)までですが、その後も要望があればどこでも出かけるそうです。(すでにいくつか入っていました。)しかし、より専門的なことも知っていたたくため9月14日に東北大の石井慶造教授を招いて「市民放射能講演会」を開催するそうです。私たちは、それに対して注文をしました。

 それは、例えば8月26日に行われた登米市での放射能の講演会では、広島大の遠藤暁准教授が最後に「年間20ミリシーベルト以下では健康への影響を示すデータがない」ことを強調して安心宣伝をしているように、「この種の専門家・科学者の言動は、今、役人の言動とともに市民には信頼されていない」とクギをさし、そのようにならないように申し入れました。同じ東北大で、そこの名誉教授の山田省吾氏の寄稿文(これは、昨日の記事の中で取り上げた 資料⑥ まなびの杜(東北大学)No.56震災特別号「放射線の人体への影響」山田省吾 )も示して「こうした方の言動は、福島原発事故後の現在では受け入れられない」と言ってきました。

 最後に、この今回の追加の要望と、先に8月4日に提出した12項目の「栗原市における放射能対策を求める要望書」についても2週間後の9月16日までに文書回答するように要望し、「要望 1 なども間に合わなくてもその途中の経過を示してほしい」とお願いしてきました。反応は、何とか努力はしそうな感じでした。




                                 2011年9月1日
栗原市長 佐藤 勇様
                      ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会
                                  代表 鈴木 健三
                        栗原市栗駒文字葛峰37-3 電話 0228-47-2932
                      栗 原 母 親 連 絡 会  代表 佐藤 澄子
                        栗原市築館黒瀬後畑15 電話 0228-22-7412 

栗原市に8月4日に提出した「放射能対策を求める要望書」の追加の要望。

 8月26日、文部科学省は、「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について」を発表しました。この中で、校庭・園庭の使用目安を1マイクロシーベルト/時とすることを福島県等に通知し、3.8マイクロシーベルト/時(年20ミリシーベルト)は正式に廃止されることになりました。また、それと関連して、同日、国の原子力災害対策本部において「除染に関する緊急実施基本方針について」が決定されました。そして、それを「翌27日には関係各市町村に説明」という報道もありました。「除染に向けた基本的考え方」では、「推定年間被ばく量を1ミリシーベルトに近づくことを目指す」とし、特に「子どもの生活圏での除染を優先し、子どもの推定年間被ばく量が一日も早く1ミリシーベルトに近づき、さらそれを下回るように」としています。

 文部科学省が校庭等の使用基準3.8マイクロシーベルト/時(年20ミリシーベルトより算出)としたとき以来、この非常に高い基準については、各方面から批判が相次ぎ、その撤回を求める動きも強まる中での今回の方向転換になったものです。

 しかし、この新たな「目安」にも大きな問題があります。放射線管理区域は、基準が毎時0.6マイクロシーベルトであり、新「目安」の毎時1マイクロシーベルトは依然としてそれをはるかに超える値です。これを「目安」とする場合、年約9ミリシーベルトにもなります。また、学校外の被ばくを除外してしまっています。子どもたちが学校で過ごす6.5時間だけを対象にして、通学時の被ばくなどは含まれません。そして、「内部被ばく」を考慮の対象としていますが、給食の放射能測定はしないというものです。これでは内部被ばくを考慮したことにはなりません。既に、福島の子どもたちの尿から放射能が検出され、内部被ばくに対する不安が高まっています。実際に食材の放射能測定を行わず、計算だけで内部被ばくを考慮しても、子どもたちを守ることはできません。さらに、「目安」を超えても、野外活動を制限することもしないというのでは、単なる「目安」に過ぎず、子どもたちを放射能から守る実行力ある措置を伴わないものです。これでは子どもたちは守れません。

 文部科学省は、すでに5月27日に「当面の考え方」、7月20日にその解説「学校におけて『年間1ミリシーベルト以下』を目指すことについて」を出しています。そもそも、公衆の線量限度は、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」などで年間1 ミリシーベルトと定められていたものであり、ようやく正常に戻したにすぎません。現在の法定基準ー年間1ミリシーベルト以下を順守することが各方面に求められることなのです。さらに、それを内部被ばくも含めた事故直後からのトータルな線量を含めて実際の空間線量(外部被爆)の限度を設定すべきです。また、食品の暫定規制値に関しても、この年間1 ミリシーベルトが可能な値とするよう早急に見直しが行われるべきです。

 しかも、国の「除染に関する緊急実施基本方針について」では、2年後までに50%減とか、自然要因もいれてとか、あいまいな表現が目立ち、さらに、「推定年間被ばく線量の推移」という表では、年間1ミリシーベルト以下の実現を10年超の長期的な目標にまで矮小化して見せてしまっています。

 子どもたちの健康と命を守り、市民の安全を確保するには、栗原市は、独自に、安全基準を示して、それに基づく放射線対策を早急に実施しなければなりません。国や宮城県指示通りにしていても事態は打開されていきません。

 栗原市が、より積極的な対策をとられるよう、以下のことを8月4日に提出した「栗原市における放射能対策を求める要望書」に追加して要望いたします。

                          記

1 8月4日の要望書の第1に挙げた「1、国が、明確な安全基準を示すまでの間、栗原市独自の信頼できる暫定的な安全基準を早急に定めること。」は、具体的な達成すべき安全基準の数値を、現在の法定基準「年間1ミリシーベルト以下」にすること。それに基づいてまず、汚染が高止まりしている0.4マイクロシーベルト超毎時~0.3マイクロシーベルト毎時以上の所から土、砂などの除染を要望します。

2 8月4日の要望の4番目に出した 「学校給食の食材などについても検査と結果の公表をし、子どもの健康を守るための適切な対応を図ること。」について、具体的には、少なくとも各給食センターに、食の安全を支えるために、最新の測定装置を使って流れ作業で検知するといった「食品放射能測定システム」を配置することを要望します。食品の暫定規制値の問題は、暫定規制値の見直し、独自に食材に関する子どもの摂取基準値を設定することを求めます。

3 子どもの健康調査については、8月4日の要望にはありませんでしたが、図らずも、市長の方から言明がありました。内部被ばくの検査が必要になってきます。ホールボディーカウンターなど特別の設備や医師の配置などが必要です。その前にまず、早期発見を目的として、健康調査項目に放射線関係を入れることから始めるべきです。そして、被ばくの低減と健康被害の最小化のため、低線量被ばくによる影響を重視し、尿検査やホールボディカウンターの検出限界値を下げ、被ばくを避けるための予防措置がとれるようにすること。被ばくによる影響を甲状腺がんに限定せず、起こりうるあらゆる疾患について対処できるよう、検査項目や健康診断の項目を見直すこと。などを求めます。

 この今回の追加の要望と、先に8月4日に提出した12項目の「栗原市における放射能対策を求める要望書」についても(ダブリはありますが)9月16日までに文書にて回答いただきますようお願いいたします。




<追記>   (9月5日AM加筆)

9月 1日、危機管理室に行ってきて、ようやく一段落しました。「要望 2 について、突込みが不足していたな」と今、反省しています。 9月 2日には、築館地区の市民講座があったのですが、私は一休みしました。結構、各地区でみなさん出ていて、反応を聞いています。栗原市ホームページでの最新の測定値の解説を見ても、おおもとのところでまだ市は軌道修正をできていません。(国が形だけしてきた)そこで、もう少し、様子を見る必要があります。14日の講師については、これから調べてみるつもりです。(そちらに参加予定。)
 少し先ですが、10月30日にまた講演会(栗原教育市民の会の総会の後に)を予定していて、鈴木代表が今、講師予定者(医師)に接触しています。タイトル(案)は―「放射線低線量での内部被ばくの危険性」とくに子ども・妊婦の健康への影響は、食生活など生活上の注意点は、―というものです。また、この低線量被ばくや食品の暫定基準についての私の勉強はこれからです。 
                           
                                      



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