触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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「学力」と「社会」を伸ばす脳教育

<BOOKS> ⑳ 
「学力」と「社会」を伸ばす脳教育 -を読んで                    
 2009.3.12

発行/講談社 2009年2月20日発行「学力」と「社会」を伸ばす脳教育

著者について

澤口俊之(さわぐち としゆき、)は日本の脳科学者。元・北海道大学教授。専門は認知神経科学、霊長類学。理学博士(京都大学、1987年)。1959年2月東京生まれ。『幼児教育と脳』以後は、一般向けの著者として人気があり、「トンデモ本」とされることも多い
・2006年、北海道大学を退職した。
・現在、人間性脳科学研究所を設立し、関連会社より持論であるHQ理論に基づいた教材ソフトを監修している。
・脳の前頭連合野の障害(発達不足)について発言することで有名になったが、…  (ウィキペディアより)

内容の紹介

はじめにー8歳までが最も重要

 育児や教育の細かいノウハウは他書に譲るとして、子どもの脳教育に関しての基幹としては、「これ1冊で十分」と言う本に。

 脳育成学の成果を踏まえれば、学力や社会力を含めた多様な能力を向上させることができる。…ADHDやLD、自閉症といったいわゆる「障害児」も、脳育成学の観点では改善可能。

HQ(人間性知能Humanity Quotient)の「土台」を幼少期できちんと育んでおけば、「学力」や「社会力」が伸び、思春期以降に多少の問題があっても、人間らしくて立派な大人になる。社会的に成功する可能性も高まる。HQは「成功知能」。

第1章 脳とニューロンの本質

 ニューロンの本質は、電気的にコントロールされた分泌を行うことにある。分泌された伝達物質の中には神経システムの「調節」をする「調節物質」がある。その中の「モノアミン系」(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)は、育児や教育の基本としての「褒めること」と「叱ること」に密接に関係。

 何か望ましい行動を定着させたり、目的を達成させたりする際にはドーパミン系の繰り返し効果を使うことがベスト。(「HQ育成サイクル」) 叱られること(罰)はネガティブな情動体験で、ノルアドレナリン系が活動。―「禁止規範の学習」に。(これは、最小限に)

第2章 臨界期とは何か

 臨界期とは、何かを学習する際に決定的に重要な期間のこと。その臨界期には、豊かな環境が必要。とりわけ、本来の環境―「進化的に予想している環境」(EEE Evolutionarity Expected Environments)に近づけることがポイント。

 ヒトの子どもは「人間社会で音声言語に囲まれて育つこと」を進化的に予想しており、そのため、音声言語のための神経回路を幼少期で発達させるような遺伝的(あるいは進化的)なプランを持っている。音声言語の臨界期は8歳。(音声言語に応じたEEEは、「幼児期に音声言語に囲まれる」という環境。)文字言語の脳機能にはEEEはない。文字言語の能力は教育が必要になってくる。(「神経回路の可塑性が高い時期」としての「学習容易期」なら何時でも習得できる。)8歳を超えると第2言語の習得能力は低下し、17歳以降では年齢にかかわらず、低いレベルの第2言語の習得能力しか持ち得ない。臨界期で第1言語を獲得しておけば、第2言語はその後の学習容易期なら比較的容易に身につけられる。(17歳頃まで)

 絶対音感の臨界期は言語と同じように8歳頃まで。

第3章 多重知能とその育成

 知能の本質

・ 知能は脳機能の能力
・ 知能は人類進化の産物で、適応的な意味を持つ。
・ 知能を伸ばすためのEEEがある。
・ 知能には臨界期がある。
・ 知能は複数ある。(多重知能)

 多重知能の種類

 言語的知能、空間的知能、論理数学的知能、音楽的知能、絵画的知能、身体運動的知能

 脳の異なった領域は異なった機能を持っており、多数の神経システムが並列している。

 多重知能は、お互いにある程度独立している。ある知能を伸ばしても他の知能は(例外はあるが)たいした影響を受けない。ある知能がさほど高くなくても、他の知能がよく発達する。

 幼少期は多重知能の基礎を形成する時期なので、「多くの知能をまんべんなく伸ばす」という方法が基本。-そのためのEEEが大切。しかし、EEEだけでは伸ばせない教育内容がある。江戸時代よりの「読み書き算盤」に加えての音楽が保育園、幼稚園で行うべき。現行の学校制度6・3・3制を6・6・3制(3~8,9~14,15~17歳)に。

第4章 人間性知能「HQ」

 前頭連合野は、限られたソースの中で多重知能や記憶を上手く操作するOSのような役割を担っている。

 前頭連合野の脳間・脳内操作系が人間性を作る。その能力のことを「人間性知能(Humanity Quotient)-HQ」。(参照ー脳を鍛えるHQ理論

 HQの要素

・ 家族と氏族社会の形成(遅くとも400万年前から)
・ 組織的な採食行動―特に狩猟-の本格化(200万年前から)

 生物の究極的(進化的)な目的は自分の遺伝子を次世代に残すことー利己主義が基本戦略。ただ、利他行動によって自分も相手も利益が得られる場合、「互恵的利他主義」という進化戦略を採用することがある。

 ヒトの場合、氏族社会を形成したせいで、この互恵的利他主義をさらに発展させて「共恵戦略」を採用。-「殺すこと」「騙すこと」などは、氏族内での禁止的な社会規範に。(氏族間では別)

 もう一つは、優れた未来志向性。ヒトの未来志向性は、突出しており、ヒトの最大の特徴の一つ。

 また、ヒトは、組織的な採取行動を進化させてきた。その典型が狩猟。採取行動には共恵戦略が重要になるし、かつ、優れた未来志向性と計画性が必須。


 共恵戦略と未来志向性が最も重要な進化的な駆動力となってHQが発達。HQの中心・最上位の機能は未来志向性にある。これと結びつく形で、HQは「未来志向性行動力」と「社会関係力」を含む。

 未来志向性行動力―企画力、問題解決能力、独創力、やる気・努力など。
 社会関係力―自己制御力・理性、心の理論(相手の立場に立ったり、相手の考えや情動を推測したりと即したりする能力)、高度な言語能力(交渉力や説得力)など。

 HQを代表する知能指数―一般知能 gF(個別的なIQの上位に立つIQ、前頭連合野で担われる前頭連合野の能力の指数)

 HQの発達程度による人物像。

-HQの主要な進化的目的は「人間的な社会内生存、婚姻、子育て、」であるし、共恵戦略と未来志向性が重要な進化的な駆動力となって発達したので、「冷酷な切れ者」「画一的な優等生」ではない。「自分の能力を最大限に活用して、自分やその家族のみならず皆の幸福のために前向きに生きる個性的な人物」といった人物像。

第5章 HQ育成法―乳児期 

 乳児期(生誕後~2歳頃):神経回路が急速に増える時期。
 幼児期(3歳頃~8歳頃):神経回路の複雑さが維持されている時期。

 乳児期では脳幹を発達させることが最優先。

 母親脳は出産直後につくられる。新生児にとってお母さんに抱かれることが最初のEEE。それよりも、新生児を抱くことは、お母さんにとって重要なEEE。女性の出産の育児は「自分の遺伝子の存続」を大きく左右する。そのため、出産に適切な年齢(おおむね20歳代)が進化的に設定されている。「出産後臨界期」に20分ほど抱くことで、お母さんの脳は「育児脳」(「母親脳」)にシフトする。その結果、お母さんは赤ちゃんへの愛情が増し、育児にも自信が深まり、育児スキルが高くなる。母乳も出やすくなる。こうした状態は短くとも2年間―子どもの脳が乳児脳の期間―続く。

 母乳と母子密着型育児(カンガルー育児-いつでも飲ませられる)の推奨。-「母乳だけで、最低6ヶ月以上育てる。」というEEEが大切。

第6章 HQ育成法―幼児期

 幼児期で最も発達させるべき脳領域は前頭連合野。前頭連合野は5歳をピークにして、8歳頃まで急速に発展する。(その理由は、人間的な社会内生存、婚姻、子育てのための基礎的な能力を習得するため) その後も発達し、20歳を過ぎても発達は続く。8歳までのADHDは、思春期でのCD(行為障害)の、そしてCDは成人でのASPD(反社会性人格障害)のそれぞれリスク要因になる。

 「痛み」の重要性

 体の痛みを感じることは、生存にとって不可欠。その痛みを「心の痛み」まで進化させてきたのがヒトの特徴の一つ。相手を攻撃したり、相手から社会的に疎外されたりする際に心の痛みを感じるのは、「互いに助け合う」という共恵戦略をヒトが採用してきたから。痛み神経回路は「心の理論」とも深く関係。同情や共感とも関係。人間は心の痛みや疎外感、心の理論を発達させる環境を進化的に予想している。-身体的に適度な痛みを伴った「ケンカ」のような社会関係は、HQ発達のEEEになっている。「仲間との社会関係力」「情動のコントロール力」には臨界期がある。幼児期ではそれなりのケンカをしておけば、その後は自ずと「相手の心や体まで傷つけるような暴力」には歯止めがきくようになる。

 社会規範と音声言語の共通性と相違 

社会関係には自ずと文法に似たルールや規則、すなわち社会規範がある。その社会規範には言語と同じように深層規範と表層規範がある。深層規範は進化的なもので、全人類に共有化されているし、それを臨界期で獲得する仕組みを脳は持っている。

深層規範―「同胞を殺してはいけない」「親や子どもを殺してはいけない」「同胞の心や体を意味も無く傷つけてはいけない」 共恵戦略と結びついて「騙してはいけない」「利益をもらったら、返さなければいけない」「自分だけで利益を独占してはいけない」さらには「自分のみならず同胞を幸福にする」も。

 こうした深層規範をベースにして、それぞれの時代や、地域、民族などに応じた表層規範が出てくる。道徳や礼儀、あるいは法律。

 しかし、音声言語と社会関係では、決定的に異なる点がある。音声言語では、音声言語自体に文法が組み込まれているが、社会関係では必ずしもそうではない。社会規範の場合も同様。年長の子どもや大人たちが示す社会規範に触れることで当該社会に適切な社会規範を獲得するが、年長の子どもや大人たちが社会規範を明示するとは限らない。まして同年輩の友人たちとの社会関係では不十分。やはり、年長の子どもや大人たちが社会規範を明示したり、きちんと教えたりすることは、HQのEEEとして、進化的にみれば言語の習得以上に重要。

 HQ育成サイクルの形成を

 幼年期にHQ育成サイクル(目的の設定→努力→目的の達成→より高いレベルの目的の設定→努力…)を充分に経験して(「成功体験」をして)おけば、脳は自ずとこのサイクルを形成するよう発達する。

HQ育成サイクルのベースには、本来、好奇心や探究心がある。好奇心や探究心は「未来志向的な報酬の予測」と結び付いたものであり、自発的なHQ育成サイクルの形成の上で非常に重要。

第7章 HQを育てる日常生活

 HQを伸ばす生活習慣

 幼児のgFにどのような生活習慣・項目がどの程度関与するのか
 gFにプラスに寄与する項目
・ 母親との接触時間が長いこと。
・ TV(とくにバラエティ番組)をよく見ること。
・ 公園などで集団遊びの頻度が高いこと。
・ 祖母と接触する頻度が高いこと。(祖母効果)
・ 魚をよく食べること。
・ 箸使いがうまいこと。
 gFにマイナスに寄与する項目
・ よく泣くこと。
・ TVゲームをよくすること。

<補足> 

祖母効果―閉経後に長生きするのはヒトだけ。たいていの哺乳類のメスは閉経頃、妊娠できなくなる頃に、死んでしまう。ヒトの祖母は自分の子どもーとくに娘―の育児を手伝い、かつ、孫の世話をする、(そのことで子孫を繁栄させるー包括適応度を増加させる)という役割を進化的に持っている。そして、ヒトの祖母は自分の娘が閉経を迎える頃に死ぬ確率が高くなる。幼児がいる家庭はなるべく祖母と一緒に暮らして、家事や,育児を手伝ってもらうべき。そうすることでボケも防げる。-二重に良いこと。(祖母は進化的役割からみれば、本来ボケないはず。祖父に関しては、未検証。科学的議論はできない。)

 魚類は人類の「進化的な食材」。―魚類が突出してgFにプラスに寄与。オメガ3脂肪酸、ビタミンB12その他にもバランスよく脳に良い栄養素ガ含まれている。それも箸を使って食べること。

第8章 ワーキングメモリの訓練

 HQの中心ワーキングメモリとは 

HQは前頭連合野の脳間・脳内操作系の能力で、その脳間・脳内操作系の中心にあるのがワーキングメモリ。
・ 行動や決断に必要な情報を一時的に保持しつつ活用して「答え」を導く働き。
・ 思考や問題解決、創造性、自己制御、企画・計画性などにおける最重要な基礎。
・ 進化的には、社会関係力の最重要な基礎。
・ 未来志向性やgFと密接に関係。

 ワーキングメモリの訓練の効果

 ワーキングメモリを毎日かなり使うことで、ワーキングメモリ用の神経システムが可塑的に変化し、その結果、ワーキングメモリの神経システムと結びついているgFが向上する。元々gFが低い幼児ほど訓練の効果が大きくgFがより向上する。ワーキングメモリ訓練がgFとワーキングメモリを向上させることは明らかだが、明確な効果を持つのは8歳頃まで。その期間なら、1日10分ほどのワーキングメモリ訓練を2ヶ月間行うだけで十分で、その結果はその後も維持されるはず。

私の感想など

 私は、かつて澤口氏の著作「あぶない脳」(2004年筑摩書房)と「したたかな脳」(2005年日本文芸社)を参考にして、図書館をもっと大きく育てる会(栗原市)の会報第7号を作成しています。タイトルは「栗原市における図書館システムの現状と課題 -図書館=脳の視点から考えるー」というものです。氏の脳やとりわけその前頭連合野についての考え方に大いに触発されました。この本は仙台の本屋でたまたま見つけたもの。まだ発行されて間もないものです。教育にはこのところいろいろかかわってきていますし、主な対象は幼児のようで孫達のことになります。

 読み終わってから記事にアップするためにネットで調べてみると、いろいろと分かってきました。氏がだいたい2005年以後のことですが、様々なトラブルを起こしていること。原因は今一つはっきりしませんが北大を辞めている(辞めさせられて?)こと。著作の評価も賛否両論でした。

 この本の視点も、私には大変興味深く思われ、参考になりました。しかし、最後に「ワーキングメモリ訓練法」として「脳力道場」というソフトが紹介されていますが、調べてみると、この対象が10歳代以上となっていました。臨界期が8歳頃なのにこれで紹介になっているのかと疑問に思いました。(別のメーカーの4~6歳対象の高価なソフトコグメド ワーキングメモリトレーニングが見つかりましたが?)

それに、本書の「はじめに」のところで「いわゆる「障害児」も、脳育成学の観点では改善可能。」としていますが、実際のところはどうなのだろうという疑問が出てきます。「可能」であり、「改善した」ではないのですから、検証が必要です。(気になったブログーひょこむ「教育」と「障がい、学校、家庭」

杉山登志郎氏の「発達障害の子どもたち」(2007年講談社)を読みましたが、その中の「発達障害の早期療育」に書かれていることとは少しズレがあるように思えます。10歳を臨界点と見ていて、何よりも「大人との関わりが大事」としています。その中で規則正しい生活をと優先順位に順に次の6つあげています。

―①、健康な生活。②養育者との信頼と愛着の形成。③遊びを通しての自己表現活動。④基本的な身辺自立。⑤コミュニケーション能力の確立。⑥集団行動における基本的なルール。―

 ⑥もあげられていますが、優先順位としては最後です。澤口氏によれば、⑥はかなり重視しなければなりません。ですから、障害児の教育に関しても確かに澤口氏の考えは参考にはなりますが、現場でのきちんとしたスリ合わせが必要になってくると思います。

その他についても同様だと思います。澤口氏の考えは面白いのですが、その適応範囲を超えると様々な問題が生じると思います。澤口氏に限らず脳学者といわれる方の弁には、この適応範囲を超えて言い過ぎる傾向があるように思われます。
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