触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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絵本「RAPUNZEL」

<BOOKS> ②
   絵本「RAPUNZEL   ポール・ゼリンスキー文・

inr
 
  この絵本を取り上げるまでの経過

  BOOKSの第2弾が絵本になります。私は、今でも地元の図書館で読み聞かせボランティアのグループに参加しているため、絵本は一年間にかなりの量を読んでいます。そんな中で最初に取り上げるのがこの絵本④。まだ翻訳もされていないこの絵本をなぜ取り上げるのかから説明をします。昨年末、図書館での恒例の「冬のあったかおはなし会」の打ち合わせでのことです。プログラムの選定で最後に残った一冊。深みのある昔話などで何か無いかとなかなか決まらず、選定を当日たまたま欠席していたメンバーでもう一人の男性(語りの実力はメンバー随一)に任せることにしてしまいました。(私は、安野光雅の「おおきなもののすきなおうさま」担当)
 準備も押し迫った一週間前、もうリハーサルという段階で彼はグリム童話からバーナデット・ワッツの「ラプンツエル」②を選び、これを実演しました。これに疑問を持っていた図書館司書はプログラムに同じく図書館にあるフェリック・ホフマンの「ながいかみのラプンツェル」①も紹介すると言う。この後、私が「②はグリムのその精神を崩している、①の方が妥当だ。」と主張し、ちょとした論争になってしまいました。そして結局は急いで別のものを準備してもらおうということになりました。当日のおはなし会の参加年齢層が少し低かったこともあり、変更してもらった「なんげえはなしっこしかへがな」が好評でしたので、結果としてはこれで良かったということになりました。
 しかし、私の意見に賛同者は多かったものの強引に押し切ってしまったこと、経過からして彼に何の落ち度もなくむしろ私がルール違反をしたこと、それに私もフェリック・ホフマンの①が絶対に良いと言い切れないこと、などから自省の念にかられました。そこで「冬のあったかおはなし会」の打ち上げ兼忘年会で、彼に全面的に謝罪しました。
 こうした経過から①②の他になにか良いグリム童話絵本「ラプンツェル」はないかと探し始めました。

 この絵本を取り寄せて

 そこで見つけたのが絵本ならべ「Rapunzel]の詳細④でした。さっそく図書館でリクエストしたところ、「この絵本はまだ翻訳されておらず、県内でも全国でもヒットしません。アマゾンでは扱っていたけれど…」と言われました。英文の専門図書館とか国会図書館(国際子ども図書館)まで範囲を広げればあると思いますが、ネットワークの有無は確認していません。時間もかかりそうなので結局、アマゾンでネット購入することにしました。そして、新年早々、届きました。

 この絵本の内容

 グリム童話の「ラプンツェル」の紹介とあらすじはラプンツェルーWikipediaをご覧ください。しかし、この絵本「RAPUNZEL」は前述の「絵本ならべ」を見ていただければ分かりますが、ドイツのグリム童話ではなく、そのもとのフランス、さらに前のイタリアと三国のそれぞれの中でも最もふさわしい内容を統合して再話しているとのことです。(私自身がこの英文を全部訳せないものですみません。作者自身がこの絵本の最後の3ページを使って A NOTE ABOUT ”RAPUNZEL” とかなリ詳しい解説をしています。)グリムの初版本と同じですが王子との逢い引きが発覚するのは dress tight 「お腹が大きくなったから」としています。「魔女」については sorceress  「魔法使いの女≒魔女?」ドイツ語の Frau Gothel はここでは Stepmother (まま母)になっています。(多くの作品が採用しているドイツ語からの「ゴーテルばあさん」という訳は間違いと思われます。⑤で野村氏は「Gotel」というドイツ語は固有名詞ではなくて、「女の名づけ親」を示す普通名詞だとしています。そして彼は「名ずけ親のおばあさん」と訳しています。)

 この絵本の絵について

 さて、ようやく本題の絵について述べます。この作品は1998年度のコールデコット賞を受賞しているようにかなり完成度の高いものです。イタリア・ルネッサンスの絵画を見ているような素晴らしいものです。背景、動植物、建物、家具・備品、そして登場人物の表情、それに衣装、実に丁寧いに描きこまれています。王子の衣装は、場面に合わせ実に5回も変わります。(その一部はネット上で絵本ならべ「Rpunzuel」…→アマゾンで詳細確認→なか見検索で見ることが出来ます。)絵はその人の好み、嗜好がどうしても入ってきます。私はこのポール・ゼリンスキーの絵は大変好きです。

 その他の絵本について

 まず最初に①ホフマンの作品について。(オークション ホフマン絵で見ることが出来ます。)私自身、ホフマンの作品は「ねむり姫」「おおかみと七ひきのこやぎ」「つむぎのひげの王さま」など大変好きな作品が数多くあります。しかし、全ての作品が良いわけではありません。松岡享子さんが「昔話絵本を考える」(日本エディタースクール)の中で仲間と合宿をしてホフマン絵本「七わのからす」の批判・検討をした経験を語っています。この作品も今後、集団的に意見の交換と検討をしたいと思いますが、まずは私の感想を述べます。表紙から最後のまで王子は王冠のプリント?(実際には刺繍だと思います)の入った上から下まで真っ赤の衣装をまとっています。ホフマンのことですからそれ自体に何か意味がある筈ですが、私には理解できませんし、好きではありません。魔女が赤ちゃんを連れ去る画面、その赤ちゃんがグロテスクで大きすぎます。そして、最後の場面、魔女の体がしぼみ、大きな鳥にえさとして運ばれる絵。これは他のどの作品にも無いもので、ホフマンがグリムのどの版を作品にしたのか不明です。この場面はやはり無い方がスッキリします。翻訳された文、瀬田貞二氏のここでの「いんがおうほう」(因果応報)という表現も、子どもたちには理解し難いものです。

 次に②バーナデットの作品について。(アマゾン バーナデットで見ることが出来ます。)彼の作品に登場する人物すべてが優しい可愛いい顔に描きすぎています。彼の作品は、「赤ずきん」「白雪姫」「こびとのくつや」など図書館にも数多く置いてあります。私はこのどの作品もそれぞれ別の作者で彼のより良い、優れていると思う作品があります。バーナデットの原文の確認はしていませんが、福本さん訳のこの作品では「魔女」「魔法使いの女」でも「魔法使いのばあさん」でもなく「まほうつかいのおばあさん」となっています。それと対応して絵の「おばあさん」も表紙から殆んど最後まで極めて優しい顔の「おばあさん」が描かれています。さすがにラプンツェルの髪を切る場面のだけは少し怖い表情になっています。グリム童話の主な舞台となるドイツの深い森は、魔女やオオカミの住む底知れない不気味な場所の筈です。やはりこの作品は全体的にグリムのその精神を崩しているといわざるを得ません。

 最後に③ハイマンの作品について。」この作品を大変高く評価しているブログ「ラプンツェル」かきかたノートを見てしまい気になってこの絵本も入手しました。確かに「グリムの森」にふさわしい、全体的に独特の仄暗い絵です。翻訳の文も「上品で美しい日本語」(前述のブログの評価)とは思いませんが、他の作品とかなり違った感じの歯切れの良いテンポのものとなっています。ただ私は好きではありません。文もですが登場人物の顔が少し現代的過ぎると思います。このあたりになると、やはりもう「好みの問題」としか言いようが無いのかもしれません。

 昔話を絵本化する問題 

 その他の絵本についての方が少し長くなりました。小澤俊夫氏が「昔ばなしとは何か」(大和書房)の中で次のように言っています。「本来、口で伝えられてきた昔ばなし、従って時間的文芸である昔ばなしを、絵という視覚的手段によって子どもたちに与えるには、昔ばなしの本質を知ったうえでの、さまざまな工夫がなされなければならない…」(同P64)と。こうしたことからグリム童話を絵本化することはとても大変なことだと分かります。そうした意味で①~③は到底グリム童話絵本「ラプンツェル」の決定版といえません。
 私が今回取り上げた④絵本「RAPUNZEL」は、グリムを取った「ラプンツェル」絵本の決定版だと思います。是非、どなたかこれを日本語に翻訳して、どこかの出版社から出していただけないでしょうか。
  こうしたことに加え、翻訳ということからも外国の本を日本語に置き換えること自体にも最初から困難を抱えます。すでにここまで述べてきた中でも「魔女」≒「魔法使いの女」、「まほうつかいのばあさん」≒「まほうつかいのおばあさん」、ここでは出しませんでしたが初版からとったとしている小学館文庫では「妖精」となっているとのことです。それぞれ日本語の意味が少しずつ違います。どれが良いか今の私には分かりません。(今後の課題とします。)

 最後の最後に⑤シュペクター画について。一枚絵とは古くからある庶民のための絵入り新聞のようなものです。ミュンヘン一枚絵は、子どものために当時の名高い画家が製作したものです。シュぺクター画による「Rapunzel」はオークション一枚絵で不鮮明ですが見ることが出来ます。一枚絵のスペースをひとつのまとまった空間として用い、巧みな構図で話全体をひとつの調和した絵の中に再現しています。この画は極めて芸術性が高いと評価されています。シュぺクター画は勿論、絵本ではありません。しかし、グリム童話絵本①~③の絵と比較した時、これらを遥かに超えていると思わざるを得ません。逆に言うと、1857年のシュぺクター画「Rapunzel」を超えるグリム童話絵本「ラプンツェル」の出現が待ち望まれます。

 <取り上げた絵本・画>

①「ながいかみのラプンツェル」グリム童話、フェリックス・ホフマン絵、瀬田貞二訳、福音館書店、1970年
②「ラプンツェル」グリム原作、バーナデット・ワッツ文・絵、福本友美子訳、BL出版、2006年
③「ラプンツェル」グリム童話より、バーバラ・ロガスキー再話、トリナ・シャート・ハイマン絵、大庭みな子訳、ぽるぷ出版、1982年
④「RAPUNZUEL]ポール・ゼリンスキー文・絵、Dutton Chidrens Books、1997年
⑤「Rapunzel]オットー・シュペクター画、1857年のミュンヘン一枚絵、「目で見るグリム童話」野村 ひろし著、筑摩書房、1994年より
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