触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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新自由主義か 新福祉国家か

<BOOKS> (31)                                 2009.12.31
新自由主義か 新福祉国家か
<民主党政権下の日本の行方>


著者/渡辺 治 二宮厚美 岡田知弘 後藤道夫

出版社: 旬報社; 初版 (2009/12/25)

<著者紹介>

渡辺 治(わたなべ・おさむ)
一橋大学大学院社会学研究科教授。専攻は政治学、日本政治史。1947年生まれ。
主な著書・編著に『日本国憲法「改正」史』(日本評論社)、『憲法9条と25条・その力と可能性』(かもがわ出版)、『構造改革政治の時代』(花伝社)、『政治改革と憲法改正』(青木書店)、『講座現代日本1現代日本の帝国主義化』(大月書店)、『日本の大国化とネオ・ナショナリズム』(桜井書店)、『「豊かな社会」日本の構造』、『憲法「改正」』、『安倍政権論』(旬報社)など。

二宮 厚美(にのみや・あつみ)
神戸大学発達科学部数授。専攻は経済学、社会環境論。1947年生まれ。
主な著書『日本経済と危機管理論』、『現代資本主義と新自由主義の暴走』、『日本経済の危機と新福祉国家への道』、『新自由主義の破局と決着』(新日本出版社)、『自治体の公共性と民間委託』(自治体研究社)、『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店)、『憲法25条+9条の新福祉国家』(かもがわ出版)、『格差社会の克服さらば新自由主義』(山吹書店)など。

岡田知弘(おかだ・ともひろ)
京都大学大学院経済学研究科教授。専攻は、地域経済論、現代日本経済史。1954年生まれ。
主な著書・編著に『地域づくりの経済学入門』(自治体研究社)、『日本資本主義と農村開発』(法律文化社)、『国際化時代の地域経済学』(有斐閣)、『自立をめざす村』、『道州制で日本の未来はひらけるか』『幻想の道州制』(自治体研究社)、『現代自治体再編論』(日本評論社)、『一人ひとりが輝く地域再生』(新日本出版社)など。

後藤道夫(ごとう・みちお)
都留文科大学教授。専門は社会哲学、現代社会論。1947年生まれ。
主な著書・編著に『収縮する日本型〈大衆社会〉―経済グローバリズムと国民の分裂』、『戦後思想ヘゲモニーの終焉と新福祉国家構想』(旬報社)、『反「構造改革」』、『格差社会とたたかう』、『平等主義が福祉をすくう』(青木書店)、『講座現代日本2現代帝国主義と世界秩序の再編』(大月書店)、『日本の時代史28 岐路に立つ日本』(吉川弘文館)など。

<目次>

はしがき
第1章 政権交代と民主党政権の行方 (渡辺 治) 
はじめに=政権交代・その歴史的意味
1 総選挙の結果は何を示すか
2 民主党の地滑り的勝利をもたらした二つの力
3 民主党とはどんな政党か
4 民主党政権下での構造改革の行方・・・構造改革をめぐる三つの焦点
5 民主党政権下で改憲、軍事大国化はどう変化するのか
小括 新しい福祉国家への闘いをどう切りひらくか
第2章 世界同時不況と新自由主義の転換 (二宮厚美)
はじめに=本章の課題と見通し
1 自ら墓穴を掘った新自由主義の「政治的転換」
2 21世紀グローバル恐慌の基本構造
3 新自由主義的蓄積の帰結としてのアメリカ発金融恐慌
4 新自由主義のもとでの日本の過剰生産恐慌
5 政権交代後の新福祉国家の課題
第3章 構造改革による地域の衰退と新しい福祉国家の地域づくり (岡田知弘)
1 構造改革と地域の疲弊
2 市町村合併・「三位一体の改革」と地域
3 構造改革への対抗軸の形成と住民自治に基づく地域づくりの広がり
4 新しい福祉国家の下で、持続可能な地域、日本をつくりだすために
第4章 構造改革が生んだ貧困と新しい福祉国家の構想 (後藤道夫)
1 貧困・生活困難の拡大とその背景・・・日本型雇用破壊・構造改革と開発主義国家体制の特質
2 新たな福祉国家の形成にむけて

<内容紹介>

「はしがき」より

 2009年8月30日の総選挙で民主党が大勝し政権交代が実現、民主党政権が誕生した。新しい政治への第一歩が踏み出された。政治においても暮らしにおいても、大きな変化の歩みが始まった。
当然のことながら、この政権交代、民主党政権成立をめぐって、さまざまな論評がなされている。そこでは、今回の政権交代が、戦後日本の文脈でのみならず維新以来の近代日本史の、さらには世界史の文脈において意義をもつと論ずるものまで現われている。しかしながら、これら数少なくない論評や分析においても、まったく論じられていないあるいは過小評価されている点がある。

 第一は、ほかでもなく、今度の政治変革が一体何を動因として起こったかについての立ち入った検討がなされていない点である。多くの論評は、今度の政権交代が明治以来の官僚主導国家の崩壊、自民党の開発主義型国家の崩壊の結果であると論じている。自民党の崩壊も長きにわたる政権の座で制度疲労を起こしたためというとらえ方が少なくない。しかし、これでは、なぜいま、自公政権が倒れたか、自公政権を押し流した濁流がなぜいま起こったのか、その最大の要因を理解できない。すなわち、今度の政権交代が、日本では「構造改革」と呼ばれている新自由主義改革がもたらした社会の矛
盾に対する国民の怒りと運動を主たる力にして引き起こされたという点が、決定的に過小評価されているのである。今回の政権交代が、長年にわたる自民党の利益誘導型政治の困難に加えて、それをすら大企業の競争力強化のためにはじゃまだとして右から改変した「構造改革」政治が生みだした貧困と格差、地方の破壊に対する国民の怒りと、「構造改革」を止めてほしいという声によるものであることがあいまいにされているのである。

 もう一つは、民主党政権とは一体いかなる政権でありどちらの方向へ向かうのかという肝心要の点が、解明されていないことである。多くの論評は、民主党政権が、明治以来続いてきた「官僚主導の政治」を打破し、民主主義と地域主権の政治を実現するとして手放しで期待をするが、それでは、安保問題、構造改革問題での民主党政権の矛盾に満ちたジグザグが一体どうして起こっているのかについて、説明することはできない。また、民主党政権の今後を考えるうえで、民主党の構造を分析したものも少ない。とくに象徴的なのは、民主党政権を歴史的偉業として高く評価する論稿が例外なく小
沢問題を避けている点である。もちろん民主党を小沢独裁と捉え、その危険性を指摘した論稿も少なくない。ところが、小沢の権力を問題にする論評は、今度は逆に、政権交代の歴史的意義をまったく過小評価する誤りに陥っている。いずれにしても、民主党政権の性格と今後の方向は納得のいくかたちで解明されてはいない。

 本書は、こうした政権交代、民主党政権の成立をめぐって生ずる切実な問いに答え、民主党政権の成立をもたらした力と政権の向かう今後の方向を、新自由主義問題を基軸にして解明する。そして、よってもたらされたとともに、民主党が新自由主義と対米追随の軍事大国化に代わる明確な政治の構想をもちえていない点にあるという視点から、新自由主義・構造改革に代わる新しい福祉国家の構想を提示することを目指している。
(ここまで、旬報社のホームページからの転載)

第1章 政権交代と民主党政権の行方

新しい福祉国家への闘いをどう切り開くか

民主党政権と二つの力

 民主党の大勝、民主政権を招いたのは、① 反構造改革の国民の声と ② 大都市層を中心とした構造改革の継続を求める声 の合流した結果。二つの相反する期待の受け皿に民主党はなるような構造を持っている。

 また、民主党は三つの構成部分からなる。執行部を握る新自由主義派(頭部)、自民党利益誘導型政治をしようとする開発政治派(胴体)、中堅議員からなる福祉政治追求派(手足) 頭部を強力に支持し圧力をかけているのが財界さらにアメリカ、胴体は党の執行権力を一手に握り地方の広範な地場産業層の期待を集めている。手足は、国民の期待の受け皿となっている。民主党政権がこれからどのような方向をとるかは、これらの三つの構成部分のどこがヘゲモニーを握るかで、この方向を決めるうえで、頭も、手足もいずれも、開発型政治、新自由主義型政治以外の国家構想を持ち得ておらず、三者の攻防で政治を反構造改革、反軍事大国に転換させていくうえで大きな弱点となっている。

急速に変貌する力関係

 民主党政権成立以来、政権を自公政治以来の構造改革、日米同盟の枠内で継続させようとする圧力が急速に強化された。財界が財源問題で、それに頭部が全面降伏し、手足は沈黙した。行政刷新会議の「事業仕分け」がその最たるもので、一律削減方式で、小沢の後ろ盾もアメリカの圧力もない福祉や文教が狙い撃ちに。マスコミも第二臨調以来のムダ切り大キャンペーンで応援。-福祉国家構想に基づく政策序列、財源論の欠如の悲惨な結果に他ならない。行政刷新会議の「努力」は、次の消費税率アップの正当化でもある。これをやって次の総選挙には必ず消費税を出す、というのが戦略。

福祉国家型の対抗構想と政策的対案を

① 構造改革をめぐる闘いも一段高いレベルの闘いを汲む必要。
緊急性を帯びて必要な課題は、構造改革の停止と福祉構想の実現を巡る個々の領域で…後期高齢者医療制度の即時廃止、障害者自立支援法の廃止、保育所の認可基準の緩和反対、保育の新自由主義的改革反対、子ども手当ての実現、医療の充実のための診療報酬の引き上げ等。
② 新しい福祉国家の構想を具体的に提示すること。それを踏まえた政策的対案を対置すること。民主党の三つの構成部分で国家構想を持っている頭部は、新自由主義といっても無自覚の新自由主義。彼らの念頭である開発型国家構想の破壊の意図ははっきりしていても、それに代わる国家・政治体制構想はほぼ全面的に、新自由所義の見地から反開発型国家を批判してきた財界や学者の提言等の受け売り。
雇用・社会保障運動の大連携を
③ 構造改革を止める運動の政治への規制力を高めるために、現在の構造改革に反対する諸運動の大連携をつくること。構造改革に対抗する政治のあり方を構想しつつ、社会保障の運動が全体として、力を集中して、政治を変える圧力を加えることが求められている。反構造改革の、雇用と社会保障の諸運動の連携は、憲法25条の実現、回復を旗印にした広範なネットワークになるのでは。

第2章 世界同時不況と新自由主義の転換

政権交代後の新福祉国家の課題

 鳩山新政権のもとでの日本は、①新自由主義の「経済的破綻」の解決に向かっていない ②「経済的破綻」による「社会的破局」はますます深刻化しつつある。失業率の高まり、ワーキングプア層の増加、生活保護受給者の増大等 ③「経済的破綻」が「財制危機」を深刻化しつつある。しかし、鳩山・民主党政権はパッチワーク型の政策を掲げるにとどまり、新自由主義の修正・延命派と新福祉国家派の間の中間的位置=第三の道の諸潮流のなかで揺れ動いている。

(1)新たな福祉国家の三本柱

① 現金給付型の所得保障。生活扶助、年金、児童手当、最低賃金等によって貨幣所得のナショナル・ミニマムを保障すること。その底上げを図ること。
② 現物給付による社会サービス保障。保育・教育・介護・医療・看護等の社会サービス分野の公的保障を図ること。鳩山政権は、ここでは大きな弱点がある。現物給付原則の社会サービス保障を現金給付型に置き換えようとする傾向、保育・福祉・教育・医療等の重要社会サービス分野の市場化路線=新自由主義路線に妥協的で公的保障を曖昧にする傾向、社会サービス保障に対する財源保障よりも効率化を優先する傾向等。
③ 生存権保障のための公的規制・基準・ルール。「ルールある市場経済、ルールある資本主義」づくりの課題。新自由主義派が巻き返しを図る際に用いる有力手段が規制緩和・撤廃。鳩山政権は、「地方分権改革」の名の規制緩和、「脱官僚依存」の名の公的規制の見直し、「グローバル化」の名の自由化に加担するという規制緩和・撤廃路線に妥協的態度をとっている。

(2)福祉国家型内需拡大による経済的破綻の打開

 「内需依存・消費主導型成長」となる。先端技術を生かした環境保全型の消費=情報化・サービス化の方向を生かした内需・消費の充実に。そうすると、家計に軸足を置いた生活・消費主導の内需拡大という場合に、その領域が教育・保育・医療・介護・福祉・環境等のサービス、さらに文化・スポーツ・芸術等の情報・サービス消費で構成されることに。グリーン(環境)+ホワイト(医療・福祉)+レッド(労働者)の三色旗型のニューディールに。-こうした社会サービスの拡充を基点にした内需拡大策は、国民経済のバランスのとれた発展のためにも不可欠。

(3)福祉国家型財政への転換による財政危機の克服

 鳩山政権は、歳入面では、相当な税収減、歳入欠陥が不可避となる。歳出面では、景気対策、内需喚起、社会保障・福祉充実、地域経済振興等のために、財政支出の増大が不可避となる。歳入減・歳出増の両面から財政危機の大難問を抱えることに。このとき、鳩山民主党政権の下半身部分=新自由主義部分が露わになると、二つの路線が登場する。①歳入手当てとして、消費税を社会目的税化して引き上げる路線(消費税増税)。②歳出面の手当てとして、「分権化」の名前で、国民生活・福祉分野の財政負担を自治体に転嫁する路線(分権国家論)。この二つの道は、小泉構造改革の延長線上のもの、つまり新自由主義修正・延命派のもの。

 いま福祉国家型財政構造に転換することが「経済破綻」と「財政危機」を整合的に打開する道でもある。
① 量出制入の原則に立ち返ること。(公的に求められる社会保障等の支出をまず計測し、その後で歳入の確保をはかる)現代では憲法を指針にした福祉国家型の視点を貫くということ。
② 歳入面での税収確保には、憲法に基づく租税民主主義の観点を徹底すること。「必要充足・応能負担原則」。必要充足とは、生存権保障に不可欠なものは現金支給であれ、現物給付であれ、憲法上のナショナル・ミニマム保障(国民生活の最低限保障)にそって、どんな事情があろうとも、財政上の制約抜きに無条件に保障されるということ。応能負担原則を生存権保障に結びつけると、「最低生活費非課税の原則」が導き出される。憲法27条の労働権の保障と 「義務」を結びつけると、勤労国民の所得への課税は軽くし、金融・不動産等の資産の課税は重くするという「勤労所得軽課、不労所得重課原則」が導かれる。

ヨーロッパをはじめとして世界では、高所得層の税率引き上げや、不労所得、金融所得、キャピタル・ゲイン等への課税強化、富裕税の導入といった動きが起こっている。要するに、フロー(所得)とストック(資産)の両面から、応能負担原則を強めていくことが、これからの福祉国家に求められる財源調達上の原則。

(4)財政支出の優先順位の見直し

 財政の主要機能は、四つ。①権力機能維持(軍隊、警察、外交) ②産業基盤整備 ③生活基盤整備 ④金融機能(財投、外為管理)福祉国家財政とは、支出面での優先順位を③を、国民生活・福祉インフラの整備・充実を第一のプライオリティにおいて、財政支出を見直していくことを意味する。①②④は、洗いざらい見直しが必要となる。「憲法9条+25条」の視点から見直すということに。-課題は「公共性の再建」にある。

 新福祉国家構想では、ヨーロッパの経験等に学び、社会保障に対する企業の負担・拠出義務をいっそう明確に。それは、企業に対する 応益・応能両負担原則を理論化する課題である。

おわりに

 新自由主義にケリをツケ、新福祉国家構想に転換する突破口は、どこに求められるか。-「垂直的所得再分配の再構築」。=賃金・報酬・利子の第一次所得分配をタテ型の再分配を通じて是正すること、つまり上層から吸い上げた所得を下層にまわして格差是正をはかること。そのために最も有力な手段が税・社会保障制度の改革、つまり社会福祉国家構想になる。
① 垂直的所得再分配は貧困・格差問題に解決の見通しを与えて、「社会的破局」の進行に歯止めをかける。失業・貧困・病苦・多重債務・住宅難等の社会問題の解決には、何より社会保障の拡充に向けた垂直的所得再配分の再構築が不可欠。
② 垂直的所得再分配は国民的消費を中心とした内需を活性化し、景気の「二重底」を防止する。同時に従来の「外需依存・投資主導型成長」を「内需依存・消費主導型成長」に切り替え、国民経済の発展構造を改める意義を持つ。その中身は、環境保全型の消費、モノの私的消費よりもサービスの社会的消費、「貧困ビジネス」「富裕ビジネス 」の根絶の視点も。「コンクリートから人へ」という人間を大事にする政治とは、この視点からのものでなくてはならないはず。
③ 垂直的所得再分配の徹底は財政危機打開の方向でもある。垂直的所得再分配の徹底による財政運営は、憲法の要請する「必要充足・応能負担」の財政原則にそって財政再建をはかる道だったから。したがって、現代日本で求められる緊急の課題は、福祉国家のそもそもの原点であった垂直的所得再分配の視点を。社会・経済・財政等の領域に貫くことである。

第3章 構造改革による地域の衰退と新しい福祉国家の地域づくり

3(4)民主党政権の「地域主権国家」論とその限界  

民主党は自公政権下における地方分権の基本方向を踏襲を明確化しつつある。一方で、国と地方の関係を「上下・主従の関係」から真の「対等・協力の関係」へと改めるといいながら、自公政権下での地方分権改革の議論枠組みと同様、国と地方自治体との「役割分担」論に基づいて、例えば米軍基地問題など国の役割分担分野において、地方自治体が「対等」に意見を申し述べる権限が侵される危険性が増している。ナショナル・ミニマムが実質的に底割れしている現状から見るならば、「地方の自由度を高めるため、法令による義務付け・枠付けを大幅に見直」すことと、「最低限の水準確保」との間が、どのように設定されるかという点が大いに問題となる。
 民主党のいう「霞ヶ関解体」と、自公政権が進めてきた道州制導入論、さらにその中核となる広域ブロックごとの大規模公共投資の決定システムとは、敵対関係というよりも、限りなく親和的な関係にあるといえる。開発主義的な政策志向との共存がなされている。…地方自治や地域づくりの視点から見る限り、構造改革を抜本的に改める政策方向ではなく、むしろ市町村合併にしろ、国の出先機関の廃止と広域連合への移管にしろ、むしろこれまでの自公政権の路線の継承、あるいは拡大強化の側面が強いことに充分な注意を払うことが必要。

4 新しい福祉国家の下で、持続可能な地域、日本をつくりだすために

① 新しい福祉国家の下では、何よりも、日本列島のどこにおいても、住民誰もが、「一人ひとり輝く」ことができる社会を実現する必要がある。単純二層制度の道州制やその足がかりとなる広域連合と大規模基礎自治体を基本にした地方制度改革を進めてはならない。小規模自治体を基礎細胞にしながら、多重構造の地方自治制度を構築し、単独自治体ではできない行政サービスを共同あるいは上位の自治体が補完する、柔軟な地方自治制度の構築が不可欠。…住民のナショナル・ミニマムを保障する地方交付税交付金制度の維持が基本。
② 農山村の荒廃山林や遊休農地を活用して、自然エネルギーや農産物の生産を奨励し、国策としてエネルギー自給率、食料自給率を高める努力を行いながら、原油市場や穀物市場への投機ファンドの流入を帰省する金融主権も確立する。
③ 国や地方自治体の政策対象を、一部の多国籍企業や巨大企業におくのではなく、日本経済や地方経済において圧倒的な比重を占め、かつ地域社会や文化の担い手ともなっている中小企業を第一にした経済政策へと根本的に転換する。
④ 自治体自らが格差と貧困をなくす役割を果たすこと。-Ex「公契約条例」毎年多額の公共調達を行っている地方自治体が、労働者の最低賃金や経営者の再生産費を一定以上に維持し、かつ地域貢献度や環境貢献度が高い事業者と公契約を結ぶようになれば、ワーキングプア問題を地方自治体自身が率先して解決していけることに。 

第4章 構造改革が生んだ貧困と新しい福祉国家の構想

新たな福祉国家形成の諸課題―その考え方

(1) あるべき労働市場の諸要素雇用基準・労動基準の再建

()「フルタイムで期限の定めのない直接雇用」を雇用の標準とし、有期雇用・間接雇用を例外として十分な規制と保障の下におく。
()フルタイムで働けば単身生計費を超える最低賃金額を早急に実現するとともに、中長期的には、通常時の賃金の数十%であることが多い、傷病時・失業時の社会保険給付が単身生計費を超えるだけの最低賃金額とする。
()ILO1号条約を批准し、一日8時間労働の原則を本格的に実現するとともに、超過労働時間の割増率を上げる。労働基準監督体制を抜本的に強化する。

失業時の生活保障の再建と失業扶助制度

()雇用保険制度の抜本改正を行い、失業時の生活保障のための制度であることを再確認するとともに、失業者の基本給付の給付率を少なくとも5割以上に戻すための措置をとる。
()失業期間の長期化に伴い、通常の雇用保険給付ではカバーしきれないケースが増える。公的な職業訓練制度を抜本的に拡充して、訓練期間中は保険給付を延長する措置をとることに加え、雇用保険制度とは別の何らかの失業扶助制度が必要。
()失業時の保険給付あるいは失業扶助が、失業世帯の生計費に届かない場合、世帯補足給付の制度が必要。
企業横断的労働市場の整備と性別差別撤廃のための施策
()均等待遇、同一労働同一賃金、同一価値労働同一賃金の原則を労働基準法、労働契約法等に明記し、雇用形態、労働時間、企業規模による賃金差別解消をはかる。
()職業能力開発促進法を改正し、公的職業訓練について、日本型雇用を前提とした企業内訓練の補完から職業訓練全体の中心へと、その位置づけを高める。
()若年雇用促進法を制定し、若年の正規雇用比率を改善する施策を講ずる。

労働組合運動の対等な交渉力の獲得

(2)選択の余地のない基礎的社会サービスの公的供給・利用料の無料化と費用全体の応能負担

 …小中高の学校教育は、選択の余地のない基礎的な社会サービスと考えるべきもの。

「所得制限による減免、援助」の問題点

① 自治体ごとに給付の収入基準や給付内容も違うなど制度が複雑であることが多く、制度内容を周知することは容易ではない。
② 所得制限が厳しいことが多く、本来そうした援助が必要な世帯が受けられないことが少なくない。
③ こうしたタイプの援助制度は所得制限を越える世帯にとって、制度を維持・発展させる動機を持ちにくい。中間層が関心を持ち維持・発展させようとするためには普遍主義的な制度設計が重要。
④ 膨大な事務量が必要。

普遍主義的な無償給付へ

 公立高校に授業料には大きな改善が見られそうだが、就学援助制度については、当面、この制度の大幅な改善と高校への拡大が急務。本来は無償とすべきものに対して費用徴収をしていること自体を改めるべき。
 選択の余地のないサービスとしては、ほかに医療、高齢者介護、障害者への各種福祉サービス等。これらについては、利用は無償とし、その財源は、応能負担の税によるものとすべき。

医療における現物給付原則の重要性

 従来、医療における被用者保険本人についての費用負担と医療サービス提供のあり方は、普遍主義的な利用料無償の必要サービス給付という、あるべき姿に近いものであった。保険料は賃金額に応じて応能負担で徴収され、提供されるのは医師が必要と判断した医療サービス(現物給付)であり、本人の窓口負担は無料であった。…

 さしあたり、窓口負担の引き下げ、および、18歳未満の子どもについて、窓口負担を国の制度として無償化する「子ども医療制度」が急がれる。

 保育の領域は本格的な新自由主義改革が、コラからおこなわれる危険性がある。…自公政権は、保育サービスの供給についての公的責任を怠ることで、各種の認可外保育所を増やし、介護保険型への改編=基礎的社会サービスの市場化、準市場化への道を準備した。民主党政権は今のところ、この改編に前向きである。

教育の機会均等と受益者負担

 選択の余地のない小中高のみでなく、高等教育をふくめ、一般に、学校教育費用は親ではなく社会が負担すべき。

(3) 重層的な所得保障のあり方

世帯ごとの最低生活費用の公的算定とそれに達するための重層的所得保障 

()単身生計費以上の最賃フルタイム稼得額
 最賃フルタイム稼得額が、そのように算定された単身世帯の最低生活費に直接税、社会保険料、勤労必要経費を上乗せした額を超えること。
()子育て費用の普遍主義的給付
 …給付は、18歳までとすべきである。
()社会保険による所得保障に最低保障額を
 社会保険による傷病時・出産時等の所得保障、失業時の所得保障は、就労時の所得の一定割合に限定されているが、これが同時に、単身者の最低生活費を超える額となるよう、最低保障額を設けるべき。
()賃金あるいは社会保障による所得補償額が、児童手当等を加えても、なお、その世帯の最低生活費に足りない場合のために、世帯補足給付の制度が必要。
()国民健康保険加入の低所得世帯の場合、国民健康保険料は世帯の最低生活費を超える部分について課せられるべき。

生活保護制度を改正し、保護受給人口を数倍程度に

 生活保護制度の制度改革、および運用の抜本的改革が必要。資産要件と能力活用義務の緩和、扶養義務範囲を夫婦間・未成年の子の扶養に限定すること。申請の権利の保障、自治体が制度を周知徹底させる義務、などの改正が急務。

(4) 福祉国家の財源を企業が大きく負担すべき理由(省)

おわりに

 今後は、より大きな集団研究で、福祉国家日本の構想と政策課題を議論し、つくり揚げていく必要が。研究者がそれぞれの領域の運動体、実務家、行政の担当者などと密接に協力してこの政策を形成していくと同時に、それぞれの領域を越えた全体的な構想を議論しあう場が要求されている。新自由主義改革への対抗構想として、経済グローバリゼーションと多国籍資本の歴史団塊における福祉国家とその連合体を考え、「新たな福祉国家」と呼んでから10年以上になる。その構想と政策体系を本格的に議論する時期が来た。

<私の感想>

何故この本を選んだのか

 この間、10月21日の「学力テスト体制とは何か」、10月30日「新自由主義の破局と決着」、11月16日「学力と新自由主義」と記事にしてきました。今、私の関係している「ゆきとどいた教育をすすめる栗原市民の会」(栗原教育市民の会)が直面している課題、栗原市での学校統廃合問題で一地区での小中一貫校の動きが急ピッ手に進められているのに対する対応策が迫られています。そのために、私が、会に議論を進めるための資料提供をしているのです。

先日の会の第1回学習会(11月20日)で「小中一貫校について」をテーマに報告と議論がされました。そこで私は、最後の方で論点を整理して、今、私たちに必要としていることを三点提示しました。①、小中一貫校をはじめ新自由主義教育改革の現状と問題点について(特に小中一貫校、大規模校、学校統廃合によるデメリットが一般的に保護者・市民に伝わっていない。)②、新自由主義的学力観の克服とそれに対する対抗軸の提示の必要性について(まだまだ新自由主義的イデオロギーとその学力観が行政は勿論だが、保護者・市民にも大きな影響を持っている。)③、地域の課題の方向性を出していく必要性について(地域経済と地域コミュニティの再生の問題と教育の課題は密接に結びついている。)

自分の提示したことに沿って、色々と資料等を提供しているという訳です。①と②はこれまでの3冊で何とかカバーできているのですが、③の課題については、二宮氏の「新自由主義の破局と決着」が経済・政治にわたる大きな視点から整理されていて参考になりましたが、地域経済となるともう少し詳しく必要になりました。そこで、小田切徳美氏の「農山村再生」と岡田智弘氏の「一人ひとりが輝く地域再生」(いずれもまだ記事にしていません)を読破、チェックしました。そうしているうちに、アマゾンで本書の予告を見つけました。12月25日初版発行となっていますが、その一週間前(12月18日)にはどうやら出たようです。前述の2冊を読み終わって12月20日にネットで見るとアマゾンでは品切れになっていました。そこで急いで楽天の方で注文しました。22日には入手し、23日までに読破しました。25日には次の会の 役員会でしたが、それまでにはとても記事は無理。そこで、「著者、目次、はしがき」部分は24日までにまとめ、残りは本から少しコピーしたものを提供しました。当日の日中は、「学力テスト体制とは何か」の著者の山本由美氏が、来年2月のここ、栗原市での講演を前に事前調査に来ていただいていました。栗原市教育委員会への聞き取り、統廃合対象地区視察の後、会の役員会まで出席いただきました。先生もまだ読まれていませんでしたし、会の役員もまだでした。皆さんから一様に「凄い本が出た。」との反応を得ました。
       
これまで疑問だったことが解明されて

 「学力テスト体制とは何か」でも、何となく新自由主義の考え方が民主党政権の中にもあるようだと分かってきましたが、「新自由主義の破局と決着」でこの政権の誕生の背景も分かってきました。そこで、この本を「民主党政権誕生後、今後の方向を切り出す上で重要」としました。しかし、そこで、「民主党は、市民的反新自由主義に近いか、イギリスのブレア政権期の「第三の道」に近い立場にたつのではないかと思われます。」としたのは、どうやら修正しなければなりません。二宮氏自身も前著は、2月で総選挙前、本著は12月でその後の最新です。政治学の渡辺氏と二宮氏では多少、表現の違いはあっても民主党政権の分析は同じ。前著よりより詳しく分かりやすい分析になっています。現在の民主党政権をめぐるゴタゴタも本書を踏まえればはっきりとその原因が分かります。本書によって、会の運動あるいは、私のライフワークの図書館づくり運動との関連ですと、教育分野、地方自治・地方分権問題においても、民主党政権誕生後に色々これまで疑問だったことが、はっきり解明していける糸口がつかめたように思いました。

今後、本書を生かしていくには、…

 第4章の「おわりに」で後藤氏は、「研究者がそれぞれの領域の運動体、実務家、行政の担当者などと密接に協力してこの政策を形成していくと同時に、それぞれの領域を越えた全体的な構想を議論しあう場が要求されている。」と述べています。また第1章の最後でも、渡辺氏は、「雇用・社会保障運動の大連携を」と呼びかけています。これに関しては、ここ栗原市では、昨年の6月22日に開催された「地域格差を考えるシンポジウム」の成功という大きな取り組みがありました。この「栗原教育市民の会」の前身の「栗原の教育を考える会」も中心となって取り組んだものです。内容は、教育・医療・暮らし全般で、宮城県全域から約70名の参加がありました。この会自体も、教育問題に限定するのではなく、子ども・青年に関すること全般や、それが地方自治体や地域経済の諸問題にも大きくかかわらなければ「すべての子どもにゆきとどいた教育を」ということも前進しないと認識しています。新たな福祉国家形成に向けて、政策面でも、運動面でも、全国のレベルだけでなく、それぞれの地域からも(全国的にはネットワークを組み)、本書をベースとするような取り組みが必要だと思いました。

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