触媒生活

セカンドライフに入っての日常生活を文章、日記などで表現します。「触媒」のような役割を果したいというのが私のモットーです。コメント等をブログでも受けますが、連絡はメールでfa43725@yb3.so-net.ne.jp まで。

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成熟日本への進路

<BOOKS> (38)                         2010.12.12
若い人たちのためのブックガイド
<その1 現在を把握するー②>                                                  
 成熟日本への進路   ―「成長論」から「分配論」へ

発行/筑摩書房(ちくま新書)2010.6.10発行

内容紹介(「BOOK」データベースより)

 日本はこれからどの方向に進んでいくのか。政治は迷走し、国民は困惑している。既に成熟フェーズに入った日本は必然的に国家ヴィジョンを差し替えなければならない。そして、経済政策や政治の仕組みを再構築しなければ、社会は一層暗く沈滞していくだけである。国民が「自分は幸せだ」と思える社会の姿と、そうした社会を目指す政策、およびその政策を実行するための戦略と新しい社会のしくみを明快に示す。

著者 波頭 亮

1957年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業。マッキンゼーを経て、88年(株)XEEDを設立し独立。戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方で、明快で斬新なヴィジョンを提議するソシオエコノミストとしても注目される。

目次

まえがき

Ⅰ 21世紀日本の国家ヴィジョン

1)国家ヴィジョンの不在
ヴィジョンがないからダッチロールする/ヴィジョンを転換できずに衰亡した清国と共産主義国/橋本、小泉、鳩山内閣に共通するもの

2) 日本が成熟フェーズに入ったことの意味
成長フェーズが終わったという事実がスタートライン/日本が成熟フェーズに入ったことの検証((1)GDPの成熟、(2)成長因子の消失)

3) 新しい国家ヴィジョン「誰もが医・食・住を保障される国づくり」
成熟フェーズであるのなら一直線に決まるヴィジョン/「悪くなっていく」と予想し、「不安を感じている」と答える人々が増え続けている/社会保障が一位、高齢化対策が二位/格差は小さいが、貧困者が多い日本/医・食・住を保障するという社会インフラ/5.4兆円あれば、医療・介護はタダになる/10兆円あれば、すべての貧困者の生活を保障することが可能/「不信と敵意に満ちた社会」を作らないために/追加コストは「たったの24兆円」である/財源確保の具体策(?消費税、?金融資産課税、?相続税の大幅アップ)/イギリス並みで充分、余裕をみてもフランス以下/国民の心の準備と覚悟はできている

Ⅱ 経済政策の転換

1) 成長戦略は要らない
「失われた10年」を「失われた20年」にした景気対策/主軸は産業構造のシフト:福祉産業と輸出産業/公共事業の三つの効果/「二本目の高速道路」と「僻地の高速道路」は効果無し/乗数効果は今や1.0以下!?/お金を直接渡す方が合目的的/公共事業をカットしたら経済は成長した

2) 成長論から分配論へ
最初は成長論が国民全体に恩恵をもたらす/「規制緩和」政策への転換と副作用/同じGDPでも所得の再配分で社会はより豊かになれる/増税から逃げてきた政治の怠慢と経済の歪み/増税は全ての政策を健全化する/間接給付ではなく直接給付を/1.ベイシックインカム──国家による生生存権の絶対保障/2.マイナスの所得税──共生・調和型社会の福祉税制/セーフティネットはこれからの時代の"公共財"

3) 産業構造をシフトする2つのテーマ
(1)医療・介護サービスの拡充(先進国の中でもかなり低水準な日本の社会保障/「年金・生活保護」と「医療・介護」の性質の違い/医療・介護は大きなGDPと雇用を生むこれからの主力産業)/(2)医療・介護サービスを拡充するための二つの政策(1.規制緩和、2.労働条件の改善策)/(3)外貨を稼ぐ産業の育成(石油代と食糧代で27兆円の外貨が必要/内需型産業の拡大ばかりを叫ぶのは危険/ハイテク型環境関連が本命/産業構造シフトに向けての対照的な二つの政策方針)

4) この国のかたち「社会保障と市場メカニズムの両立」
/成熟国家に適した"経済活力の確保"とは/国民負担率70%でも「幸せ度No.1」のデンマーク/アメリカとデンマークの二つの共通点(1.教育への投資が世界トップ水準/2.労働者を解雇しやすい)/高福祉だからこそ自由経済/企業の自由度を上げることが国民経済のパイを大きくする/高福祉と雇用保護のセットは危険な組合わせ/現代の教育への投資は産業インフラの整備である/「ゆとり教育の失敗」から立ち直ったアメリカの前例

Ⅲ しくみの改革

戦略の実行には「組織・制度」こそ重要である/しくみをセットで取り替える必要がある

1) 行政主導政治のしくみ
①.官僚機構の二つの本能──「変化の排除」と「自己増殖の追求」(歴代の行革は官僚によって骨抜きにされてきた/平成の大合併でも公務員の数はほとんど減っていない)/②三権分立の頂点に立った官僚(「大臣に従わない」という方法)/なぜ大臣は従わない官僚をクビにできないのか/「行政裁量に対する司法の敬譲」の絶大な威力

2) 官僚機構を構築している4つのファクター
官僚はベストアンドブライテスト/?.行政裁量権とデータの独占による「実質的な政策決定権」(行政裁量と委任立法で政策を自由にコントロール/自在にデータを操って政策の根拠をコントロール)/①.人事自治権と共同体ルールによる「組織的結束力」(軍隊以上に強力な強固かつ柔軟な官僚組織/組織論的テクニックの集積/一般的テクニックを超えた緻密な仕掛け/465万人の利権と世論の圧力)/②.ブラックボックス化した特別会計による「莫大な資金力」(特別会計は"官僚のサイフ"/一般会計の4~5倍にも及ぶ莫大な金額/会計監査院ですら解明できない/自由自在に使う目的は天下り先の確保)/③.メディアの掌握による「プロパガンダ機能」("官僚のポチ"という呼称が意味するもの/官僚機構の思惑をプロパガンダする"第4の権力"の不見識)

3) 官僚機構の改革戦略
官僚機構改革の二つの戦略ポイント(①.人事権の掌握/②.特別会計の解消/予算規模を207兆円としたスコープは正しかった/二つの予算制度を統合する/ガラス張りになれば、10兆円がういて来る)/メディアへの期待(ベルリンの壁崩壊の立役者は衛星放送/日本のメディアは部数は多いが、内容は横並び/メディアのジャーナリスト魂に期待するのみ)

4) 国民が変わらなければならないこと 
「日本は世界で最も弱者に厳しい国」というアンケート結果(「働かざる者、食うべからず」か?/かつて共産主義体制がうまくいかなかった理由/主権者としての責任意識と報酬

あとがき

内容の解説

 まえがき は、「自分は幸せだ」と思う人の比率が世界一のデンマーク(税金が所得の7割以上)「自分で生活できない人を国が助けてあげる必要はない」と思う人の比率が世界一の日本。この二つの国の対比から始まります。

 日本以外の国で「自力で生活できない人を国が助けてあげる必要はない」と答える人の割合が10%を超えている国はアメリカ以外にはなく、それも28%。日本の38%と比べるとかなり低い。アメリカは自由と自己責任の国なので社会の勝負は弱肉強食ではあるが、寄付の金額は世界一。アメリカ人は世界一少ない日本人の40倍も寄付をしている。日本は、貧困による自殺者の数も世界一。寄付はしない。弱者を救う必要はない。未だに「大事なのは経済成長だ。」だと思っている日本。こんなことで日本は本当に大丈夫か。と本書は問います。

 しかし、それは、「弱者に厳しいのではなくて、「国」を信用していないだけなのかもしれない。」としています。「日本という国は国民が求める社会の方向へ進んで行けそうにない。国民が幸せだと思える社会の姿を考え、そうした社会を目指すための政策を検討し、その政策を実行するための社会のしくみを示す」のが本書の目的だとしています。

Ⅰ章 21世紀日本の国家ヴィジョン

 1) 国家ヴィジョンの不在 では、今の日本の置かれている状況を
① 日本が成長フェーズから成熟フェーズに移ったために、従来型の国家ヴィジョンと実現のための方法論は無効化した。
② 現在、新しい国家ヴィジョンが示されていないが故に、政策はダッチロールし、国民は将来に向けての見通しが立たず、不安ばかりが増大している。
③ 今の日本が最も必要としているのは、成熟フェーズにあって国民が豊かで幸せな生活を送ることができるような社会のしくみと運営のあり方を示す国家ビジョンである。

 2)  日本が成熟フェーズに入ったことの意味 では、以下データや歴史的事実による検証を行っています。そして、それに基づいて 

 3)  新しい国家ヴィジョン:誰もが医・食・住を保障される国づくり で財政的に十分可能であるとする具体的な政策が示されています。その最後に、「国民の心の準備と覚悟はできている」とし、特に二十代、三十代の人達は,…既に成熟化社会の理念とライフスタイルを先取りしている…この新しい国家ヴィジョンは、「新たな国民負担を引き受けてでも、喜んで推進していきたいという国民的コンセンサスの得られる」としています。

Ⅱ章 経済政策の転換 では、Ⅰ章を受けて、その国家ヴィジョンを実現するための方法論、主に経済政策の解説が述べられています。

 1) 成長戦略は要らない では、従来型の経済政策は無効であることを示し、今後取るべき経済政策の核心を「産業構造のシフト」としています。

 2) 成長論から分配論へ では、どのようにして新しいヴィジョンを実現したら良いかという政策テーマ 「どう分配するか」→「生み出されたGDPをどの国民にどう分配すれば、生活の保障を公平・公正に提供できるのかを計画すること」を示しています。この政策テーマは、次の三点でこれまでの政策と大きく異なるとしています。? 政策の目的 経済成長を達成すること→国民に生活の安心を保障すること ? 政策の対象 産業及び企業→消費者であり、労働者である国民 ? 政策の方法 (産業・企業に対する)指導と管理→国民に対して直接サービスを提供する 

 3) 産業構造をシフトする2つのテーマ では、「産業構造のシフト」は、新しい国家ヴィジョンを実現するために必要な“成長戦略”も“内需拡大”も満たし得る統括的産業政策、としています。そのための2つのテーマとして、① 成熟型福祉社会における公共財としての医療・介護サービスを担う内需型主力産業として拡充。② 石油や食糧の輸入代金を稼ぐための国際競争力のある高付加価値型輸出産業の育成。を挙げています。

 4) この国のかたち「社会保障と市場メカニズムの両立」 ここまでの政策を行うことによって日本がどのような経済構造を作り上げるべきなのか、どのようなしくみとメカニズムによって運営していくべきなのかは、「社会保障と市場メカニズムの両立」としています。そのためには、高福祉を賄うための高負担(増税)のみならず、成熟した日本社会を継続的に支えるための経済活力を確保する必要がある。としています。それは、即ち経済効率を上げること、規制緩和、企業に自由な活動を保証する市場メカニズムの尊重だ。としています。そこで、再びデンマークが登場してきます。デンマークの自由経済では、労働者を解雇しやすく、流動性が高く、企業の自由度を上げることで、国民経済のパイを大きくでき、高福祉が実現できている。としています。そして、フランスやドイツのように、高福祉と雇用保護のセットは危険な組み合わせになる。としています。

Ⅲ章 しくみの改革 では、国家ヴィジョンの実現、経済政策の遂行のために必要なしくみの改革が述べられています。

 1) 行政主導政治のしくみ で、「官僚と官僚機構は国民の意志と政治のしくみから超越したポジションに陣取って自分達の組織の増殖と自分達が敷いた路線の踏襲のみをやり続けている」とし、その改革の必要性を述べています。

 2) 官僚機構を構築している4つのファクター では、官僚制度をこれほどまで強固にしている構造的ファクターを整理しています。

 3) 官僚機構の改革戦略 ここでは、官僚機構改革の戦略ポイントを述べ、最後には、官僚機構の思惑をプロパガンダしてきている第4の権力、メディアに対し、官僚機構との関係を主体的に変えていくよう、その見識とジャーナリスト魂に期待しています。

 4) 国民が変わらなければならないこと ビジョン(Ⅰ章)を実現するために戦略(Ⅱ章)が必要で、その戦略を実行するためには適切な組織(Ⅲ章)が整えられなければならない。そして、そのためには、ビジョンが国民の価値観や精神風土と合致していなければならない。つまり国民の意識が変わっていかなければならない。としています。そして、ここで まえがき のところの「日本は世界で最も弱者に厳しい国」というアンケート結果にもどります。これは、国家ビジョン「誰もが医・食・住を保障される国づくり」を目指す上で大きな障害になります。

 それには、デンマークのように主権者としての責任意識を持つこと。国民の一人一人が社会作りに対する責任感を持って、政治のしくみや政府の仕事について考え、税金の使い方に目を光らせて、きちんと声を上げるという姿勢(民主主義社会の大原則)を意識として持つこと。としています。そうすれば、国民はその報酬として経済成長以上の貴重なものー国民の誰もが「自分は幸せだと思う」と答えられる生活と社会を得ることができる。としています。

あとがき では、著者がこの19年の間に「個人主義的リベラリストから穏健な社会論主義者へと変身していた。」と価値観の転向を告白。4~5年前から、市場主義的経済政策を強力に推進したとしても、世の中はハッピーにならないと思うようになった。という。そして、これは、社会の成長フェーズが終わって成熟フェーズに入ってしまったという事実が全ての要因。としています。

私の感想

 著者は、国家ビジョン「国民の誰もが医・食・住が保障される国づくり、国民が幸せといえる国づくり」を提唱しています。そのこと自体は大いに共感を持ちます。現状認識については藻谷浩介氏「デフレの正体」でも論じられていたこととほぼ共通認識でしょう。全ての国民に,医・食・住を保障するための追加的コストは、たったの約24兆円だ。としています。日本の国民負担率を現状の41%(先進国でアメリカの35%に次いで低い)をイギリス並み(48%)で、32兆円増、からフランス並み(61%)で、75兆円増にすれば良いとしています。「増税は不可避」ということも、支出のムダを無くした上でならこれも同意します。現在の国債だのみ〔借金〕では、責任が曖昧になり、税で徴収されれば、国民は使い道に敏感になります。増大する高齢者への負担は、その時々の税で賄われるように軌道修正しなければなりません。特別会計が国家の予算プロセスとは別の、官僚主導の予算となっているのも特別会計と一般会計の一本化“統合会計予算”に一刻も早くすべきでしょう。

 このように国家ビジョンやザックリとした「配分論」には概ね同意しますが、個々の戦略にあたるところが問題です。「社会保障と市場メカニズムの両立」として、「経済効率を上げること」、「規制緩和」、「企業に自由な活動を保証する市場メカニズムの徹底的な尊重」をいっています。デンマークを手本?としているようで、「高福祉だからこそ自由経済」という考えでしょう。しかし、これは市場の失敗・限界を是正するため、市場メカニズム・自由経済そのものを安定させるための社会保障(福祉国家)になりかねません。デンマークのように、「労働者は従業員として企業に守られるべきなのではなくて、国民として国家に守られるべきなのである。」というのも日本ではとてもそこまでのハードルが高いです。

 著者は「成長を追い求めるのではなく、分配を重視すべきだ」としていますが、一方では「石油や食糧の輸入代金を稼ぐための国際競争力のある高付加価値型輸出産業の育成」ともいっています。確かに日本はある程度、貿易で稼がなければ、食べて行けない国になっており、その点では著者がいっていること理解できます。しかし、この国際競争力というのもクセモノです。

 「社会保障と市場メカニズムの両立」ということは、両者のバランスを取る、ということでしょう。しかし、あくまで、それも国家ビジョン「国民の誰もが医・食・住が保障される国づくり、国民が幸せといえる国づくり」というミッション実現のためのものであるはずです。現在の日本の企業・産業のあり方を考えると、結局、国際競争力のみに突っ走って国民・労働者を犠牲にしてしまうことはこれまでの歴史を見れば明らかです。経団連をはじめ日本の企業・産業が自覚的に変わらなければどうしようもありません。しかし、それはあまり期待できず、国や自治体が変わるように規制・強制せざるをえないでしょう。

 デンマークと違って、日本では、あまりにも労働者の権利が守られていません。労働者の力が、労働組合が弱すぎます。労働者という以前の国民の生存権(憲法25条など)も守られていません。その点では、著者が否定するフランス、ドイツからデンマークには無いようなことで、日本が学ばねばならないことがあると思います。

 本書は、若い人たちのためのブックガイド「その1 現在を把握する」の2冊目です。本書は、「現在の把握する」以上のことが書かれています。著者自身が「個人主義的リベラリストから穏健な社会論主義者へと変身していた。」といっているように、このところこうした方が増えています。それは大いに歓迎し、その国家ビジョンなどにも共感しますが、具体的な政策やしくみ作りは、まだまだ隔たりがあるようです。それは、この後の「その2、現状を打開するには?(仮称)」で引き続きブックガイドをする中で、再度検討していくことになるでしょう。

 ですから、ここでは、著者がいう
①「社会の成長フェーズが終わって成熟フェーズに入ってしまった」ということ。
②「成長論」から「分配論」へ議論をしていくことが必要だということ。
③「国民の誰もが医・食・住が保障される国づくり、国民が幸せといえる国づくり」を国家ビジョンすることを、国民的な合意・確認を得る必要があること。さらに、今回、まだ詳しく吟味できていませんが、
それには、「国民〔の意識〕が変わらなければならないこと」があるということ。を確認できれば良いのではないかと思います。

 さらに、もう一つ、私が付け加えるならば、
⑤企業・産業もそうした国家ビジョンに従うよう(国家ビジョンを共有するよう)国と自治体、それに市民が強制しなければならない。ということもあると思います。もっとも、企業・産業が国民の一員だという自覚を持っていただければ強制など必要なく、共生ができるわけです。〔理想論ですが…〕
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